第45話 願い事

 莉望は僕の説明、夢のでき方や機械の事、願いが叶う力までの話をうんうん、と頷いては「なんで?」とか「どうして?」とかたくさん聞き返してくる。まるで目に見えた箱を全部開けるような勢いであった。

 もちろん、僕が堀部さんに教えてもらったみたいに、莉望にも願いを叶えてもらう。



「莉望は何か願いたいことはある?」


「ん~、髪の毛を伸ばしてみたいかな。ずっと短かったから」


「そっか。じゃあ、心の中でゆっくりそう願ってみて?」



 莉望はうん、と返事をして目をつむった。みるみるうちに髪は伸び、莉望はあっという間に腰まで伸びたロングヘアーになった。一気に雰囲気も大人っぽさが増す。



「ほんとに長くなった! すごい!」



 髪に指を通して莉望は見て見て~、と髪を落とした。つややかな髪はサラッとなびく。



「もうちょっと短くしてみようかな」



 莉望はまた目をつむって、元に戻るように髪が上って行った。

 今度は肩下のセミロングだ。莉望は今度は頭をぶんぶん振った。

 ――それが僕の過去に触れる。なんとなく莉望のその姿を、僕はどこかで見たことある気がした。



「……ん? 景さん?」


「あ、どうした?」


「ううん、なんか景さんが動かなくなったから大丈夫かなって思って」


「あぁ、ちょっと考え事をしてたんだ。大したことじゃないよ」



 僕の返答に莉望はほんのり笑って「ならいいけどね」と言った。

 そしてちょうどピピッと機械の音がした。



「もうすぐノンレム睡眠の時間だ。布団に入って体を休めてね。僕は部屋に戻るよ」


「は~い」



 僕は莉望が布団を入ったのを確認して、「おやすみ」の言葉とともに自分の部屋に戻った。

 そして僕も次のレム睡眠まで眠ったのであった。






――――――







 目が覚めた。そして僕は莉望の部屋に向かう。



「おはよう」


「おはよ!」


「莉望、これ見て?」



 僕は莉望の部屋の壁をぐいっと押した。あの日、僕の初めてのレム睡眠時同様、滑るように動く。



「え!?」



 口を半開きにしている莉望は目をぱちくりとさせている。



「レム睡眠中は基本、僕らしか重量を持たなくなるんだ。もちろん、願えば別だけどね。

 だからレム睡眠中に部屋を模様替えするんだ」


「そうなんだ。いきなりだったからびっくりしちゃった」


「ごめんごめん。やってみた方がわかるし、急に壁が動いたらそれこそ困っちゃうかなって思って。

 それこそ僕は入居のその日に壁が動いちゃってうろたえたからさ」


「想像しただけでもワタワタしちゃう」



 僕が過去にやらかしたことで莉望がくすくす笑ってくれるのが何となくうれしかった。莉望は比較的よく笑うけど、その分、本当に笑ってるのか不安になるというか、莉望の話の中にあった“作り笑い”に僕は不安を抱いていた。心から笑えるようになってほしい、そう願っていた──。



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