第32話 仕事

 突然、眠夢様が僕の部屋へやってきた。



「失礼するわ。中村くん、昼に仕事があるの。12時に私の部屋に来てくれる?」



 いきなりの言葉に僕は「あ、はい」と答えた。一体何があるというのだ。

 そもそも寝ること以外に仕事があるなんて聞いてない。

 なんて、心では反抗しながら時間を気にしながらゲームをしていた。

 そして時間になる時、僕は眠夢様の部屋に向かったのだ──。







「失礼します」



 軽くノックして入った部屋に、僕は深深とお辞儀をした。



「中村くんいらっしゃい。

 説明するわ。ここに座って」



 眠夢様はそう言って僕に手招きをした。椅子にストンと座ると眠夢様はタブレットに女の子の姿を写して僕に見せた。



「この子、覚えてる?」



 黒髪のショートカットで真っ白な服の少女……。確かに見覚えのある子。でも生前僕は基本的に女子と喋らなかったし、ここに来てから眠夢様以外、男の人しか関わってない。でも、何故かその子が喉に引っかかる。



「見たことある気が──」


「そうなの。この子、中村くんが継承した子よ」



 そう言われてピンと来た。あの時と同じような髪、白色に包まれた少女。びっくりするほど何も変わってない。



「この子、矢澤やざわ 莉望りのという子なんだけど、昨日の夜1時に亡くなったの。そして12時間後の、今日の13時に目覚めることになってるのよ。

 それでね、中村くんに仕事説明をしてもらう事になったわ」



 仕事ってそれか、なるほどな……。



「すみません、僕──」


「これは決定事項なんだけど、お願いできるわね?」



 言葉を遮られ、僕はハッとなる。

 意思に反して「はい」と言う言葉が口から出ていた。

 そうだ。この人ここの最高責任者で何でも思いどおりになるんだった。


 そして僕の頭の中は“どうしよう”で埋まった。女子との話し方がわからないことも不安だが、そもそも彼女は僕に継承されたことを恨んでいるかもしれない。

 そう考えると、僕はとんでもないことを頼まれてしまったのかもしれない。



「じゃあ13時に彼女の部屋に向かってね。


 あなた、部屋の案内だけお願い」


「かしこまりました」



 こうして僕は黒い服を着た人、夢送り師と一緒に彼女の部屋に行くことになったのだ──。



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