第7話ㅤゲーム

「なんのゲームなんですか?」


「これは俺が作ったゲームだ。条件付きシューティングゲームって俺は呼んでる」



 堀部さんは説明しながら画面の準備をしている。僕は始まるワクワク感と初プレイのゲームへの期待感に会話を続けた。



「その、どういう条件があるんですか?」


「3回当てろとかの王道もあれば、形を作ったり、弾に限りがあったりいろいろだ。まあすぐ慣れるさ」



 そう言いながら堀部さんは僕の隣に座る。



「分かりました。せっかくやるので罰ゲームありでやりませんか?」



 僕の提案に余程びっくりしたのか堀部さんが歯を見せて笑う。



「おいおい、俺に勝つ気かよ」



 まるで製作者に勝てるわけないだろ、と言わんばかりの言葉に、僕は「やってみないと分からないですよ」と冷静に返す。



「まあいいぜ。罰ゲーム……。そうだな。言うことを聞く、でいいか?」


「はい。全力でやらせてもらいますね」


「おうよ」



 お互いにコントローラーを握ったのを確認して、Aボタンを押して準備画面からゲーム画面へと切り替わる。



『3・2・1・START』



 画面の文字が消えて始まったゲーム。撃つものは的で本当にシンプルなゲームだ。的は自由自在に動くけど、これぐらいなら対処できる。

 制限時間3分の間に何個ミッションを消化できるか、というゲーム内容で僕は困ることなく連射していた。

 弾数の制限は1500発。50発でリロード、弾を入れる作業が入る。1秒間に10発が限界で3分撃ち続ければ1800発だ。

 問題はない。的の消化は効率のいいものを選びながら数をこなしていく。

 幸い、行動に変な設定もなければ邪魔者も居ない。やりやすすぎる。

 こっちは空間の把握に自信がある。全ての弾を打ち切る頃、ちょうどよく終了のブザー音が鳴った。



『FINISH』



 そして結果発表に画面が切り替わる。







 僕が217枚。堀部さんが194枚で僕が勝った。



「すっげぇな……!」


「堀部さんがプロゲーマーだって聞いて、その、つい本気出しちゃいまして……」



 まさか本当に勝てるなんて僕は思いもしなかったし、勝って堀部さんに怒られないかひやひやとする。

 そんな僕に堀部さんは質問を浴びせる。



「同業者か? それともなんかやってたのか?」


「さ、サバゲーを、やってました」


「通りで躊躇ちゅうちょないわけだ」



 たじたじと答える僕に、ハハッと歯を見せて笑いながら堀部さんは続けてこう言った。



「もう少し遊ばねぇか?ㅤ他にも作ったもんがある。それよりなんか飲むか、何がいい?」



 何かを取りに席を外す堀部さんの姿に僕は嬉しくなった。正直、僕が勝ったことによって、帰れと言われたらどうしようかと思っていた。

 それに楽しそうに遊ぶ堀部さんに安心もした。彼の本性が見えてきたし、仲良くなれるかもしれない。

 1人で生活するのはつまらないからなのか、もしくはゲームを対戦する仲間がいないからなのか、きっと普段の生活に無愛想になってしまう理由でもあるのだろう。

 そう思いながら僕は「お酒以外ならなんでも大丈夫です」と返事をしたのだった――。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る