第6話ㅤ想像

 生きているような感覚を感じながら、僕は1つ疑問をが浮かべた。

 堀部さんが最初の部屋とは反対側に歩いていくのだ。



「どうしてそっちなんですか?」


「お前の部屋がこっちにあるからだ」


「じゃあ最初の部屋は──?」


「説明を受けるまでの待合室のようなものだ」


「なるほど……」



 話しながら歩いていると、堀部さんは急に足を止めた。そしてドアノブを開けながらこう言った。



「ここがお前の部屋だ」



 僕は中を見て驚かずにはいられなかった。



「なんっにもない……!」



 部屋にはベッドしか置いていなかった。これじゃあ待合室も何も変わらない。



「あぁ、そうだ。ここは夢遊界だからな。自分の夢の中で部屋作りをするんだ」


「夢の中ってどういうことですか?」


「夢の中で想像すると、起きたらその部屋になってるんだよ」



 想像すると、ってどういう事だ……? 堀部さんの言葉がよくわからなくて僕は思わずフリーズした。



「具体的には後で説明するからとりあえずこっち来てみろ」



 そう言って堀部さんはくるっと後ろを向き、スタスタと歩いていってしまう。今度はどこに行くのだろう……と疑問を持つ時間もなく、堀部さんはまた足を止めた。

 そこは僕の部屋から2つ隣の部屋だった。

 ドアノブに手をかけた堀部さんは「ここが俺の部屋だ」と言いながらゆっくりドアを開けた。



「凄い……!」



 僕は思わず目を見開いた。

 そこには暗い空間に電子機器の明かりだけがピカー! と照らす、夜のゲーセンを思い出させる趣味全開の部屋が広がっていた。



「俺は生前プロゲーマーだったんだ。このパソコンやゲーム機は夢作った数によって要求できるシステムだから、夢の中で部屋を模様替えしながら自分好みにカスタムしたんだよ」


「そんなことが出来るんですね……!」


「おう、案外いい生活ができる。

 どうだ、これやってみねぇか?」



 堀部さんがコントローラーを差し出しながら僕にそう言った。それも今までとは違う生き生きとした笑顔で。

 これでなら仲良くなれるかもしれない。そう思った僕は、彼からコントローラーを受け取ったのだ――。



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