第3話ㅤ夢遊界
「
堀部さんは綺麗な女性に向かって深深と頭を下げる。
「あら、お仕事ご苦労様」
綺麗な女性はやんわりと微笑みながら続けてこう言った。
「あなたが中村 景くんね、初めまして。気分はどうかしら」
正直、困惑していて気分がどうだとか考えれず「普通です」と、とりあえずの返事だけを述べる。
「そう。なら良かったわ。いきなりこんな所でびっくりするでしょう?ㅤ説明するわね」
そう言ってその女の人はスクリーンを照らした。
「ここは生と死の狭間、
私はこの製造所の管理者及び最高責任者をやってる眠夢と言うの、どうぞよろしくね」
僕は、どうも、と頭を下げながら、この人が1番位の高い人なんだと驚いていた。
その人の丁寧で寄り添ってくれるような話し方と柔らかな表情が、僕の中に収まる第一印象を“綺麗で優しそうな人”となったため、ここの統制が取れているのか心配になったのだ。
「そんなにかしこまらないで。リラックスして大丈夫よ。
でも仕方ないわよね。いきなり夢製造所と言われても困惑してしまうだろうし……。
そうね、あなた達製造者は寝るだけでいいの。寝ることが仕事よ」
そう説明しながらスクリーンを切り替えていく。
「そして出来た夢を現実世界に届ける。それがこの製造所一帯のお仕事。中村くんは夢を作ってくれればいいの」
夢を作る……? 僕は意味の分からない言葉に思わず焦った。
「ちょっと待ってください、僕にそんなこと……」
「そう混乱しないで、中村くんは夢作りの能力を持っているから」
「夢作りの能力……?」
何を言っているんだ、この人は。よく分からない能力に僕は疑問が隠せない。
「えぇ、生前ずっと正夢を見てきたでしょう?ㅤあれはここで作られたものではなくて、中村くん自身が作って見ていたのよ。これを見て」
そう言って彼女はスクリーンを変えた。そのスクリーンに映った姿に僕は息を飲んだ。
寝ている僕の姿が映っているのだから。
「普通の人は夢製造所から夢を送られて夢を見るわ。だけど夢作りの能力を持った人は夢製造所から送った夢を受け取らないの。だからあなたのことを知っていた。それにあなたの場合、継承された能力者だから知らない訳にはいかないのよ」
「け、継承……?」
「ここに来て最初の仕事は現実世界の誰かに夢作りの能力を継承すること。あなたに夢作りの能力を継承したのはあなた祖父よ。そしてこれをあなたに預かったの」
そう言いながら、シワの1つも付いていない便箋を僕に差し出した。
「手紙、ですか?」
「ええ、天国へ行く前にここに残して行ったのよ」
「そう、ですか……」
会ったことのないおじいちゃんを、おばあちゃんの大切な人を僕は心の上に置いた。何とも言えない複雑さに口の中に苦みを帯びる。
「だからそれはあなたに残した最後のメッセージになるわね。ゆっくりでいいから読んでちょうだい」
「はい」
受け取った手紙の封を切って僕は、じんわりと
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