4話 その名はシン

 ノートを拾ってから二ヵ月後。

 時は既に6月になっている。

ノートを拾ってから充実のライフを送っていたが、そんな俺の前に突如として変化が訪れた。


「やっほー、元気にしてるー?」

「うわっ、誰だ!」


 普通に楽しくしていたら突如として目の前に美少女が現れた。

だが空を飛んでいるし、何より壁をすり抜けていきなり現れたのでそれが人間じゃないのはすぐに分かった。


「誰だお前はっ!?」


 俺は驚きながらも何となく想像は付いていた。

あのノートを拾って二ヵ月か。来るのは遅すぎるくらいだ。


「私? 私はエリザだよ。 君にノートを渡したそのノートの本来の持ち主。所謂お漏らし神だね」

「お漏らし神? 何だよそれ?」

「名前の通り可愛い子にお漏らしをさせる神だよ。 普段は神だけで目当ての子の名前を書いて楽しむんだけど、人間に渡したらどうなるかって実験でね。 君なら面白そうだから渡したんだよ」

「そうなんだ」

「でもね。 凄いよね。まさか二ヵ月でこんなことになるなんて……」


 エリザは俺のノートを見て感嘆の声を挙げる。

そう、俺のノートにはびっちりと名前が書かれていた。


「これ自分の周りは極一部だよね。他は確か……」

「そうさ。 アイドルや美人タレント、美人女優だよ。 生放送を見ては片っ端から名前を書いた。 やっぱり芸能人は格別だね。 凄く可愛いだけに漏らした後の反応も格別だ」


 そう。俺のノートにはアイドル達の名前がビッチリと書かれている。

最初は視聴者も戸惑いの声が多かったし、漏らしたアイドルは芸能生命が終わりみたいに深刻に受け入れられていたが、生放送の度に様々なアイドル達を漏らさせることでそれは一つの娯楽となった。

 今では漏らすのが前提で美少女アイドルを大量に起用した生番組、生配信が多く作られている。

 その全てが高視聴率や高い再生数を記録しているのでネットではアイドル達を漏らさせる存在を失禁王(しっきんおう)から略してシンと呼び崇めている存在まであるほどだ。

 シンという呼び名はどうかとも思うが悪い気はしない。


「まさかここまでするとはねえ。 最初はいじめっ子だけだったんでしょ」

「そうだよ。でもさ。あの三人も最初は面白かったんだが、2週間ほど毎日漏らさせたらクラスももう『やっちゃう子』って認識になって面白くなくなったんだよ。それで他のクラスの女子も漏らさせてみたけどやっぱ毎日のように起きる事件じゃイマイチ面白くないんだ。それで最初の漏らさせた女子アナがちょっとだけ人気になったのを見てアイドルを漏らさせたらまあハマったわけだよ。実際テレビでかっこつけてる気取った美少女が漏らすのは凄い快感だよ」

「へえ、でも面白いね。今後もやっぱ活動は続けるの?」

「当たり前さ。 今日もアイドルの生放送があるからね。早速漏らさせるよ」

「楽しみ」


 エリザも楽しそうだ。

お漏らし神に期待されるならドンドンやっていかないとな。

 そんな使命感のようなものも感じるのだった。

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