15話 賢者の帰還
時間は遡りアビスが屋敷に向かった直後
「住民の方はこちらへ!こちらは避難を」
霊夜と椿は「神々のお社」地帯の住民たちを冥界結界への避難を進めていた。
「椿さんよ、俺たちはこれからどうなっちまうんだ。これまでのとは規模が違うぜ」
「そうね、規模が違う。避難が済んだら私も元凶の屋敷へ向かいます。皆さんは安心してこの中で待っていてください」
霊夜が屋敷の方角を眺める。それは禍々しいあんこくが広がっている。
「アビス…無事なのか」
瞬間、2つの大きな魔力が降ってくるのを感じ取る
「椿さんっ!何か来ます!」
「えぇ!避難は済んで結界も閉じてある…大丈夫よ」
だがその魔力の正体は
「久しぶりに戻ってみれば、これまた悲惨なことに」
「私の地帯もめちゃくちゃだわ…あ、椿!久しぶり〜」
「け、賢者様…?」
霊夜が目を疑う。飛来したのは敵ではなく賢者のセシルとレイだった。
「状況の説明を、椿」
「はい、あちらに見える屋敷から膨大な魔力を感じます。そして時間を見れば分かりますが今は朝です。あの屋敷で何かが行われているのは確か」
セシルは落ち着いた様子で状況を把握する。
椿はこの時でさえもセシルの圧倒的な魔力量に慄いていた。
「わかった、じゃあここは貴女に任せるわ。レイ、行くわよ」
「なんで私までぇ!?私は帰って休みたいんだけど…まぁ、そうも言ってられないか〜」
そう言うと2人は屋敷向かって飛び立つのだった
「椿さん、大丈夫ですか?」
「えぇ…やっぱり、敵わないかわね」
そして時間は戻り屋敷前
門番は賢者2人を前に苦渋の笑みを浮かべる
「いけるかよ…これ」
「手早く済ませたいけど、そうは言ってくれないわよね。レイ、アビスの治療を」
「はいはい〜」
空気が一変する。この勝負はさっきよりも一瞬でつく
「骨砕きっ!」
門番は一瞬でセシルの間合いを積める
だがセシルは微動だにしない
そして門番を睨み付ける
「なっ…!?」
門番は力が入らなくなりその場に崩れ落ちる
自慢の筋肉は力が抜け、まるでただの抜け殻のように。
「てめぇ…何した…!?」
目の前の現実を受け入れつつ、彼はこんな力があるのかと目の前の賢者を睨み、笑みを浮かべる
「門番相手にそんな力使ってよかったの?」
レイは問う
セシルが使った術、それは賢者が持つ世界の創造主から託された力の一端
「夢幻眼の術の一つ。対象の相手の筋力を抜かせ立つかとすらままならない。レイ、行くわよ」
セシルは憤怒していた。レイが治療したアビスの身体は、骨という骨が砕け、誓いの刀は折れてしまっている。彼女はアビスの選択を尊重していた。だがその選択がこのような結末を産んでしまったことに責任を感じ、その傷を与えた相手に憎悪を抱いている。
「ここで貴方を殺したいくらいだけど、まずはあんたの主人を止めるわ。じゃあね」
そうしてセシルは屋敷の中へ進んでいった。
「レイも、アビスの治療が終わり次第中へ来て」
「分かったわよ…はぁ…とはいってもこの傷はかなり…手がかかるわね」
治せないはずの傷を治療するレイ。倒れ込む門番はそれを見て「反則だ」そう感じる
あれほど与えたダメージをこうも簡単に治される。
「あんたも賢者なんだろ。その治療の力も患者の力ってわけか。あんたら、何者なんだよ」
「賢者はこの世界の秩序を正す者。貴方達より一際飛び抜けた力があったっておかしくないでしょう」
「はっ…その秩序ってなんだよ。その力が何を救うのかは知らねぇが、俺たちの主人は必ず全てを救済してくれる。痛みも、悲しみも全て」
「マモノに人を襲わせることにどこの秩序があるの!」
「俺たちを守らなかったセかいナんて、壊れちまえばイいんダよ…」
門番の表情は狂気に満ちていた。
何が彼をそこまで奮い立たせるのか、それはレイにも分からない。
「何が…貴方達を」
門番は気を失っている
賢者が守る秩序とは。彼らに何があったのかを問い正したかったが今やるべきことはこの事件を止めること
「アビス、貴方の努力は無駄にはしないわ」
アビスを安全な場所へ転移させ、レイは屋敷へと足を踏み入れる
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