9話 決戦 冥界の巫女 椿

「廻天っ!!!」


彼女の放った全身全霊の一撃はアビスの剣へと集まり、吸収していく。


「なっ……!!??」


その光景に彼女は驚きを隠せなかった。

彼がこれほどの力を持っているのかと、使いこなせるのかと。


否、使いこなすことはできない。

彼は命を使ってこの技を使っている。


「がっ…あっ…!」


全身へほとばしる痛み。骨が全て砕かれるような痛み。皮膚が全て剥がされるような苦しみ。染みる苦痛がアビスの全身を蝕んでいく


「あっ…はっ…」


意識が遠のく。ここまでとは思わなかった。

巫女の全力の力を受け入れる。

自分でもできると思っていた。

ここまで ここ  

        前が

     

       見えない。   

 

      なにも かんじ   ナい


剣を放せ。離さないと死ぬぞ

自分の中で命令を出してくる

全神経が、この”行動”を否定する


何故?


もう何も見えない。これ以上はもう



懐かしい景色が見える。

それは、遠い、遠い記憶。


「アビス、見て。すごい!満開だ!」


空を見上げる。そこに見えたのは青い空、ではなく咲き誇った桜の木の数々。


誰かが言う。


「俺、ここがすごい好きだ!また来年も一緒に行こう!」


2人で走り出す。桜の中へ。

幼い頃の記憶。あの少年と共に駆けた懐かしい景色。


君は、誰


「はっ…!!」


意識を取り戻す。

絶え間ない苦痛を感じる。


けれど


大事な景色、大切なもの。

それを手放そうとしているものが目の前にある。


守り続けたものも、積み上げてきたものを


させない。させたくない


守れるチャンスがあるなら、守れ。


剣を強く握る

限界ならとうに超えてる


「ぐぅっ……!!!」


だが、この全身を蝕む痛みが消えるわけではない。


だがそれを超えてこそ彼の「廻天」は技として成される。


「どうしてっ!どうして私の技が通じない!死ね!死ねっ!もう、私の前から消えてっ!!」


無我夢中に椿は魔弾を放ち続ける


通じているさ。あなたの力は。

強さも、痛みも


剣を振り上げる


剣圧が椿の魔弾を打ち消す。


「なっ…!?」


「これで目、覚ましてくださいよ。俺の本気はこの一瞬だけ、貴女を超えますよ!」


廻天は成された。アビスによる本気の一撃は、椿のすべてを凌駕する。


椿はなす術なくその強大な力をただ眺めている。


そして俺は、その剣を強く振り下ろした。


魔力が解放される。そしてその対象である椿は魔力に巻き込まれていく。


決着 勝者 アビス

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