春から…

〈コウ視点〉









コウ「笑実ちゃんは?」





カオル「沙優ちゃんの所に遊びに行ってるよ」






卒業用の課題を

カオルの部屋にやりに来ると

笑実ちゃんの姿が見えず

問いかけるとそう返ってきて

「夕飯までには帰ってくる?」と

相変わらず笑実ちゃんを家政婦がわりにする

ヒョウに呆れた視線を送った





カオル「夕飯なら作って行ってるよ…笑」




ヒョウ「作り置きって事はカレー?」





キッチンへと走って行き

鍋の中や冷蔵庫を開けて確認しているヒョウに

「いくつだよ?笑」と呆れて問いかけると

「あっ!さつま芋のカレーだ」と

満足そうな声をあげていた





シュウ「明日はイカ飯食が

   食いてぇって言っといてくれ」





カオル「明日もウチに来る気なの?笑」





シュウ「あと2ヶ月もないし

   出来る限りココに来るからな?笑」






シュウの言葉にカオルは笑って首を振りながら

「勘弁してよ」と言っているけれど

シュウは「いや、来るぞ!」と

課題を広げながら本気半分、冗談半分の

雰囲気で笑っている





( ・・・あと…1ヶ月半か… )





2月頭になり

この課題提出が終われば

1ヶ月先の卒業式で俺たちは

学生じゃなくなり皆んなバラバラになる…





ヒカル「カオルの親からは気に入られたんだろ?」





キッチンで皆んなの分の

コーヒーを煎れているカオルに

ヒカルが問いかけると

カオルは「まぁね」と小さく笑っていた





シュウ「資料だけ持って帰って来いって

   自分の実家で働かせる気だったんだな?笑」





カオル「ん?たまたまだよ?笑」





( たまたまねぇ…笑 )





カオルが笑実ちゃんに対して

独占欲が強い事はここに居る全員が知っていて

カオルの「たまたま」を信じる奴はいない…





ヒョウ「保育士とかチワワっぽくていいじゃん」





シュウ「ちょっと舐められそうだけどな?笑」





カオル「見学行った日にはもう舐められてたよ…笑」






コーヒーをトレーに乗せて持って来て

笑っているカオルに

「そうなのか?」と問いかけた





カオル「最初は補助だし…

   子供達に泣かされて帰って来るだろうね」





カオルのお母さんは保育園を経営していて

この前の週末に笑実ちゃんを連れて

実家へと帰り保育園で働けないか相談したらしく

資格が取れるまでは補助として

お母さんの保育園で働く事になったようだ





ヒョウ「カオルは春から専門学校だし…

  チワワを檻の中に入れられて良かったね?」

   




コウ「檻ってお前…いい保育園だぞ?」





カオルのお母さんの保育園は

地元でもわりかし大きめな保育園で

2年前には新しい保育園を建てて

2つの保育園を経営している





ヒョウ「いや!檻だね!

   昼間はお母さんの監視だし

   夜は会社の女子寮に入れられて

   完全なる檻だよ!笑」






( ・・・まぁ…否定は出来ないな… )






カオルは春から公務員専門学校に半年ほど通い

カオルのお父さんが働いている市役所の

採用試験を受ける予定だから

就職するまでは一緒に住むのを反対されたらしく

笑実ちゃんを1年間だけ寮に入れて

カオルも実家に戻るようだ





シュウ「男子禁制だけど週末どうすんだ?

  まさか毎週ホテルってわけにもいかないだろう」





カオル「週末は俺の家に呼ぶよ

   まぁ…ホテルも行くだろうけど」





ヒョウ「実家で朝までなんて出来ないだろうしね」






( ・・・・・・ )





夏のキャンプや寄りを戻した

クリスマスの翌日に見たゴミ箱を思い出し

実家は無理だろうなとマグカップを手に取って

熱いコーヒーを飲んでいると

「でも本当なら一年は遠距離だったからな」と

俺と同じようにコーヒーを飲みながら

シュウがそう言って「まだマシだな」と

カオルに笑っていた





ヒカル「・・・・なぁ…

   本当に遠距離になってたらどうしたんだ?」





ヒカルの問いかけに皆んな

「ん?」と顔を向けると

「年に数回しか会えなかっただろうし…」と

少し濁しながら言うから

遠距離に耐えれなくなり

別れてしまうんじゃないかと思っていたんだろう






シュウ「・・・俺も正直…

   カオルがヤキモチを妬いて  

   また笑実ちゃんにガッと言って

   そのまま…離れるかと思ってたしな…」






ヒョウ「あー!それは俺も思ったよ!

   カオルって他の女の子には優しいのに

   チワワには直ぐに怒るしさ

   後で後悔する癖に言いすぎるし」






カオル「別れる原因は俺なの?笑」






ヒカル「笑実ちゃんが原因だとしたら…

   分かりやすい嘘だろうな?笑」






ヒカルの意見に皆んな首を縦に振って

「下手くそだからな」と笑っていると

ヒョウが「コウは?」と問いかけてきた






ヒョウ「コウもカオルの

  短気が原因で別れると思ってた?」






俺は「そうだな…」と呟き

後ろのキッチンへと顔を向けて

あの小さなカレンダーを見ながら

「フッ…」と小さく笑ってカオルを見た






コウ「1ヶ月離れて

  1年なんて無理だと思ったカオルが

  GWに会えた笑実ちゃんを散々抱きまくって…」






ヒョウ「想像つくね…

   でっ、夏まえには喧嘩してそう」






コウ「いや…夏前には

   笑実ちゃんの妊娠が分かって

   直ぐにカオルの実家行きじゃないのか?笑」







俺の言葉に皆んな目をパチパチとさせて

固まっているけどカオルだけは

「さぁね」と笑っていた







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