思い出の場所…

〈エミ視点〉







サユ「アレ…」





2限目が終わり教科書をしまって

お弁当を取り出していると

沙優ちゃんが出入り口側を指差していて

「えっ?」と顔を向けると

ルナ先輩が腰に手を当てて

コッチを見ていた…





「・・・・あっ…」





「おいで」と言っているのが

口の動きで分かり立ち上がって

ルナ先輩に近づいて行こうとすると

「荷物も、持っておいで」と言われ

「はい…」と席に戻りバックに

お弁当箱を入れていると

「二人ともおいで」と聞こえてきて

沙優ちゃんと顔を見合わせていると

「早く!」と聞こえ

「すみません」と駆け寄った…





隣りの大学のルナ先輩がどうして

コッチの敷地にいるんだろうと

不思議に思いながら

後を追って行くと

先輩は学食に入って行き

歩く足を一度止めて入り口を眺めていると

「時間なくなるから早く」と言われ

少しだけバックをギュッと握り直して

顔を俯けながら中に入って行った





( ・・・一年…ぶり… )





教室とはまた少し違った

学食特有のガヤガヤとした音を聞き…

懐かしいなと思いながら

チケット販売機の前にいる

ルナ先輩に目を向けると

「どれがいいの?」と背中越しに問いかけられた





サユ「・・・あの…」





ルナ「あぁ、お金なら預かって来てるから

   好きなやつ選んだらいいよ

   あるんでしょ?好きなメニューとか」






「預かって…来てる?」






ルナ先輩の言葉の意味が分からず

沙優ちゃんと首を傾げていると

「混むから早く」と言われ

戸惑いながら食券の販売機を見上げ…

また懐かしいなと感じた…





「・・・・日替わり…

 今日はエビフライなんだ…笑」





一年生の時は当たり前の様に

毎日この機械の前で

「何にしようかな」と口にしていた…





アカリ「今日の日替わり当たりだよね!」





サユ「エビフライに小さいコロッケ…

  亜香里ちゃんの好きな物ばっかりだもんね?笑」





「あっ!今日のドリアはハヤシライスだ!」





リナ「昨日のハヤシライスの残りだって

   皆んなにバレバレだけどね…笑」







( ・・・・一年…経つんだ… )






最後に来たのは

後期試験前の最後の講義の日だった…




試験中は教室で勉強をしながら

おにぎりやパンを食べていて

2年生になったらまた…

当たり前の様にチケットを買ってココで

笑いながら食事をしていると思っていた…





日替わり定食のボタンを押すと

ピッと音が聞こえ下に落ちてきた

食券を手に取ってルナ先輩達と一緒に

調理のおばちゃんに差し出すと

5分もしないで「ハイッ!」と

トレーに乗った日替わり定食が出てきた





( ・・・こんな盛り付けだったな… )





何を見ても懐かしいと感じ

トレーを持って先輩達のいる

席へと歩いて行くと

周りの子達が見ている事に気づき…

「珍しい」と聞こえてきて少し顔を下げた




何をされるわけじゃなくても

こう…一方的に見られて…

皆んなが何気なく口にする噂話が

自分の耳に届くと…

居心地は悪いし…上手く笑えなくなる…





トレーをテーブルに置いて

「お待たせしました」と席に腰を降ろすと

ルナ先輩が「顔あげな」と呟いた…






「・・・えっ…」






ルナ「何にも悪い事…

  してないって言ってたじゃん…」






「・・・・・・」






ルナ「・・・ワイドショーと一緒よ

  皆んな羨ましくて見らずにはいられないし

  何か言わなきゃスッキリしないだけだよ…」







ルナ先輩はそう言うと

箸を手に取って焼き魚定食を食べ出し

隣りに座っている沙優ちゃんが

「そうかも…」と言って

周りを見渡して

「あたしもそうだったから…」

と眉を下げた…






サユ「・・・笑実ちゃんは…

   本当にシンデレラで…羨ましかったから…」






「・・・しん…でれら?」






ルナ「確かにね…笑

  カオルが最初構ってるの見た時は

  あたしもハッ!って思ってたし」





何となく良くは見られていないのは

知っていたけど笑いながら話すルナ先輩に

「えっ…」と顔を向けると

先輩は前髪を軽くかき上げて

「だって」と話し出した






ルナ「カオルのタイプには見えないし

  発育もまだまだだしさぁ…笑

  気まぐれで可愛がっているのかと思ってたら…」






サユ「・・・・大切にしてましたからね…笑」






沙優ちゃんが少し恥ずかしそうに

そう言うから「へっ…」と

顔を覗き込むと…






ルナ「付き合うまで大事にされてたんでしょ?笑」






「・・・・・・」






ルナ「カオルがそんな事したのは初めてだし

   特定の彼女を作るのも…

   自分の部屋に誰かを泊めたのも…

   別れた後も…女々しくしてたし…」






「あんなカオルは初めてだったから」と

止まっていた箸を動かしだした

ルナ先輩はやっぱり…どこかカオル先輩に似ていて

「ルナ先輩といると…ドキドキします」

と伝えると先輩はゴホッと咳こみだして

「カオルに睨まれるからやめてよ」と笑い出した





サユ「ルナ先輩が男だったら惚れます…笑」





ルナ「カオル達よりもいい男だろうからね

   日替わりで彼女にしてあげるよ…笑」






先輩の言葉に笑いながら

日替わり定食に箸をつけだし

食券を買うときにルナ先輩が言っていた

お金を預かってきた相手は誰だったんだろうと

先輩に顔を向けると私の考えが分かったのか

「ふっ…」と小さく笑った…






ルナ「春からずっと…

  毎朝お弁当を作って登校しているのを

  知ってるのはたった一人しかいないでしょ?笑」






「・・・・・・」






ルナ「卒業前に連れて行ってやってくれって」






( ・・・・・・ )






カオル「今日のお弁当は何?」






年明けの講義が始まりキッチンで

お弁当を作っていると

そう声をかけてきて

学食やファミレスでシュウ先輩達と

ご飯を食べるカオル先輩が

「俺の分も作って」と言ってきて

不思議に思っていた…






兄「4月1日から勤務開始だから

  3月半ば過ぎ辺りに一度見学に来てほしいってよ

  卒業式終わったら早めにアパートも引き払って

   コッチに戻って来たらどうだ??」

   





( ・・・・離れたくない… )






カオル先輩を知れば知るほど

好きになっていって…





日替わり定食を食べて

懐かしい味に「美味しいです」と言って

鼻の奥がツーンとするのが分かった…





私が恋した相手は

あのアニメの野獣…よりも…





「カオル先輩は…カッコイイですね…笑」





ルナ「急に惚気?笑」









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