元に…

〈コウ視点〉









カオル「また正門の前でキスしようか?」






楽しそうに笑うカオルの声を聞きながら

出されたコーヒーに手をつけ

上手くいって良かったなと思っていた…





イヴの夜にカオルは帰ってこなく…

笑実ちゃんと会えたのか

会えなかったのかも分からないまま

女の子のいなくなった部屋で

明け方近くまで皆んなで待っていた




次の日の夕方前にカオルのマンションを訪ねると

髪を黒くしたカオルがエントランスから出て来て

ヤッパリ駄目だったのかと駆け寄り

カオルの髪型を見て口の端が上がった





コウ「髪型でペアルックか?笑」





カオル「あぁ…笑」





カオルは前髪を軽く触りながら

少しだけ照れ臭そうな表情をしていた





( ・・・お前は笑実ちゃんには合わせるからな… )





花火大会の時も…

ゴールデンウィークの時も…




笑実ちゃんの幼馴染のカップルと

一緒に会うと聞いた時は驚いたし

その日に撮った写真を笑実ちゃんから

見せてもらった時は更に驚いた…




カオルの髪が好青年かの様にセットされていて

耳によくつけているピアス達も外されていたから





コウ「ずいぶんな変わりようだな?笑」




「ふふ…この日のカオルは可愛かったです」





写真の中のカオルはアクセサリーらしい

アクセサリーは身に付けてなく

服も大人しめのカラーだけど…





( ・・・いい笑顔してるなぁ…笑 )





笑実ちゃんの隣で笑っているカオルは

楽しそうに笑っていて

写真を見せている笑実ちゃんも

幸せそうな表情をしていた…





黒く真っ直ぐと切り揃えられた前髪は

あの駅で見かけた笑実ちゃんとそっくりで…

何となく上手くいったんじゃないかと思った





コウ「今からクリスマスデートか?」





カオル「約束してたからね」





少しだけ眉を下げてそう答えたカオルに

「上手くいったんだろ…」と

控えめに問いかけてみると

カオルは更に眉を下げてから笑った…





カオル「サトルの言う取り…

   カッコ悪く縋ってみたよ…笑」





コウ「・・・・そうか…笑」





カオル「カッコ悪くても…諦められないからね…」





コウ「・・・・・・」





カオルは今から笑実ちゃんと

約束をしていたデートに出かけるらしく

今日のデートが終わった後に

笑実ちゃんから返事をもらう事になっていると聞き

出会った頃とは立場逆転だなと思い

小さく笑ってから「頑張って来い」と

カオルの背中を軽く叩いて見送った





( ・・・・心配いらなかったな… )






笑実ちゃんとどうなったのか

気になった俺は今日も朝から

カオルのマンションを訪ねると

呼び出しの返事はなく

まだ寝てるのかとしつこく

インターホンを押していると

「不審者だよ」と後ろから

カオルの声が聞こえパッと振り返ると

大きな紙袋を手に下げたカオルが

笑いながら近づいて来た





コウ「お前…今帰りか?」



 

カオル「笑実ちゃんを送って来たんだよ」





そう言ってオートロックを解除する

カオルの手にある紙袋を覗くと

女の子の洋服が見えて

また一緒住むんだと分かり

「おい!ちゃんと説明しろよ?」と

カオルの肩に自分の肩を

軽くぶつけてふざけた…





部屋に入ると

朝までいたであろう笑実ちゃんの形跡が

チラホラとあり当人じゃない

俺の口元が緩むのも変な話だが

素直に嬉しく感じた




紙袋を手に寝室にある

クローゼットへと向かう

カオルの背中に顔を向けると

扉からベッドが見えていて

さぞかし乱れているんだろうなと思い

数歩近づくと綺麗にベッドメイキングされていて

乱れた感じは全くなかった…





( ・・・相手は笑実ちゃんだったな…笑 )





笑実ちゃんが乱れたベッドのまま

帰るわけがないなと思い

何処までもいい子だよなと

寝室に入ってベッドに近づいていくと

ベッド横にあるゴミ箱が目に止まり

「カオル君…」と呼んだ






コウ「・・・・お前…

  笑実ちゃんは一限からだったんだろ?」






クローゼットから顔を出したカオルに

ゴミ箱を軽く指差してそう言うと

「あぁ…」と笑うカオルに

「たく…」と呆れたタメ息をこぼして

本当に元に戻ったんだなと

ソファーに座って、また小さく笑った…









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