野獣…
〈エミ視点〉
1限目が終わってスマホを確認してみても
沙優ちゃんからの返事は届いてなくて
何かあったのかなと心配していると
教室の入り口から
1年生の女の子達がコッチを見ていた…
( ・・・・・・ )
何で見られているのかは
何となく分かっていて…
顔を少し下げて
次の講義の教科書を取り出していると
スマホの画面が光り
LINEの通知も表示されていたから
沙優ちゃんかと思い直ぐにひらくと
LINEの相手はあの子達が
教室を覗いてる理由の相手だった…
【学校が終わったらシュウの部屋においで】
( ・・・・・・ )
唇が少しだけ突き出て
【今日は真っ直ぐ帰ります】
と返事を返すと直ぐに既読マークがついて
カオル先輩からの着信画面になった…
「・・・・出ませんよ… 」
あと5分程で次の講義が始まるし
教室の外に出ても一年生や…
他の学科の子達がいる廊下で
先輩の電話には出れない…
着信画面が消えた数十秒後に
カオル先輩から届いたメッセージを見て
慌ててスマホを持って教室から出て行き
ヒソヒソと話す一年生の横を通り過ぎて
階段を駆け上がって行き
人のいない教室を見つけて中に入った
「ハァハァ…」と息を整えながら
スマホに目を落として
カオル先輩から新しく届いている
メッセージを読んで
「野獣…」と小さく呟いてから
先輩に発信した
耳に聞こえてくるネズミーのマーチ曲に
アレっと思いながら少し驚いていると
「もしもし?」と
機嫌良く笑っている声が聞こえてきた…
「・・・・ヤッパリ先輩は…意地悪です…」
カオル「野獣は意地悪だからね?笑」
今日の早朝にタクシーを呼んでもらい
帰る準備をしてコートを着ていると
カオル先輩もダウンに腕を通しだしたから驚いて
「えっ?」と先輩を見ていると
「荷物あるでしょ?」と言って
私と一緒にタクシーに乗って
私のアパートに来てくれたけど…
「・・・皆んなの前では…嫌です…」
カオル「ふふ…揶揄われた?笑」
「・・・・・・」
カオル先輩は洋服数着と
メイク用品を手に持つと
学校に行く私と一緒にアパートを出て
手を繋いで歩きだしたから
「皆んなに見られます」と言って
さりげなく手を離そうとすると
「いいんじゃない?」と手をギュッと握って
昨日の様に繋いだ手を先輩のポケットへと入れ
「何時に終わるの?」と普通に会話をしだした…
学園通りに入ると学校の子達が
コッチを見て何か言っていて…
「別れたんじゃないの?」や…
先輩が私と離れていた時の話も
また…聞こえてきていた…
サトル「便所女達を気にすんな」
( ・・・・・・ )
もうヤキモチを妬いたりはしていないけれど
関係を持った子達は決して少なくなくて…
今こんな風に私と手を繋いで歩いている
カオル先輩を見れば悲しくなったり
嫌な気分になるんじゃないのかなと思った…
女「よく戻れるよね?アタシなら無理…」
「・・・・・・」
どんな顔をして歩いたらいいのか分からなくて
顔を下げると「笑実ちゃん」とカオル先輩に
名前を呼ばれ少しだけ顔を向けると
グッと繋いだ手を引かれて
バランスを崩す私を抱きとめた先輩は…
女「エッ…!?」
( ・・・・えっ・・ )
周りから「エッ?エッ!?」と声が聞こえる中
私も頭が追いつかずに
目をパチパチとさせていると
中に先輩の舌が入ってきたのを感じ
「ンッ!」と先輩の肩を叩いた…
カオル先輩は皆んなの前で
私にキスをしてきた…
それも軽いキスなんかじゃなく
まるでベッドの中でする様な
深いキスをしてきて
直ぐにはやめてくれず
唇を離された時には
だいぶ周りに人が集まっていた…
恥ずかしく固まっている私の顎を持ち上げて
「これでもう大丈夫だよ」と
笑う先輩の顔は意地悪で…
とっても…優しい目をしていた…
カオル「シュウ達も会いたいみたいだから
学校終わったら真っ直ぐおいで」
「・・・・・・」
カオル「来ないなら迎えに行くよ?笑」
カオル先輩は魔法の解けた
優しい王子でもあるけど…
あの暴君な野獣の面影もある…
( ・・・・でも…いつも守ってくれる… )
カオル先輩からキスをされなかったら
今日の学校の中はもっと
気不味い雰囲気だったはずだから…
皆んな私を見にきて
ヒソヒソと話したりはするけれど…
( ・・・・大丈夫… )
今の先輩の彼女は私だけなんだと
あのキスが…私に勇気をくれたから…
カオル「また正門の前でキスしようか?」
「・・・・真っ直ぐ…行きます…」
そう言うと「いい子だね」と
満足そうに笑っているカオル先輩は
全然カッコ悪くなくて
前の様に征服欲の強い王子様に戻っていた…
( ・・・ヤッパリ野獣だ…笑 )
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