〈アキラ視点〉










8時過ぎの今…

大学に向かっている1〜2年のガキ達と

すれ違いながらサトルから言われた言葉を考えた…





「何も悪い事してませんから…」





( 俺がアイツを好きだと? )






あり得ないと歩く足を早めにながらも

頭の中にカオルに引っ付いて幸せそうに笑う

アイツの姿が思い出され

「ちげーよ」と小さく呟いた






サトル「シュウのガキを

   カオルのガキの代わりにしてたんだろうが?」






( ・・・・・・ )






何度か…何度か思った事はあった…

沙優を抱きながら…

(アイツはどんな顔をするんだ…)と…





あの地味なガキがベッドの中で

どんな顔をしているんだと考えた事があった…





アイツと同い年である沙優は

ベッドの中じゃそれなりの顔をするが…

飲み会に来る女達と何一つ変わらず

特別何かを思ったりはしなかった






アキラ「・・・・はぁ…」






歩く足を止めて前方から歩いて来る

沙優の姿を見ていると

沙優も俺に気づいて足を止め

気まずそうに目を泳がせている…






( ・・・・・・ )






夏のキャンプで

アイツの顔を見た時は

正直驚いた…





部屋から出てきたアイツは

一丁前なんかじゃなく…

顔や身体から〝女〟を漂わせていたから





普段はなんて思わない仕草や

あまり肉付きのない腕や脚を見ながら

ベッドの中じゃどうなるんだと

益々興味がわいた…





あの日石垣に座って

カオルからキスをされていた頃よりも

甘い色気を感じたからだ…






サトル「・・・・遊ぶ用じゃねぇからな…」





( ・・・確かに遊ぶ用じゃない… )






遊ぶならそれなりに

コッチも楽しめるように

派手な見た目の綺麗どころを選ぶし

身体だって程よく肉付きのいい女がいい…




アイツから感じた甘い色気は

飲み会でみる女達の色気とは全く違っていて

一度手を出したらヤバそうだなと思った…





遊んで楽しむどころか

どんどん深海にハマって

抱いた腕を離せないような気がした…





( ・・・カオルがそうだからな… )





カオルの〝心情〟はそんな感じなんだろうなと

人事の様に思っていたが…






サトル「・・・カオルのガキが好きなんだろ?」






もしサトルの言う通り

あの感情はカオルに対して思っていた物ではなく…

俺自身の想いだったのなら…






サトル「笑実の代わりに抱いてたんだろ?」






( ・・・・・・ )






カオルが大事そうに側に置く姿を見て

(そんなにか?)と鼻で笑った事があった…




そして、そんなカオルに引っ付いて回る

アイツに「カオル以外は見えてねぇのか」と

嫌味を言った日もあった…






サトル「・・・カオルが羨ましかったんだろ…」






( 羨ましい?俺が?? )






サトル「カオルが大事にすればする程

   あのガキの代わりが欲しかったんだろ」





( ・・・・・・ )






立ち止まったままの沙優に

ゆっくりと近づいて行き

「久しぶりだな」と声をかけた







サトル「カオルと笑実は

  お前らの事で拗れたみてーだけど…

   1番可哀想なのは

   カオルでも笑実でもねぇ…


   自分の気持ちにも気付けず

   好きな女のダチに手を出して

   妊娠させたお前でもねぇし

   シュウと上手くいかねぇ寂しさを

   お前で紛らわせていたあのガキでもねぇ」






( ・・・・・・ )






沙優は俺が会いに来た理由が

何となく分かったのか

目をギュッと閉じて顔を下に下げていく…







サトル「1番可哀想なのは

   そんないい加減な奴らが自分の両親で

   その…いい加減な親の顔も見れずに

   いなくなったガキだろうからな…」

   

   





俺は顔を下げた沙優を見ながら

「話がある」と言った…







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