〈エミ視点〉









カオル「ちょっとお水挟もうか?笑」





カオル先輩が焼いてくれた

ステーキを食べながら甘いお酒を飲んだら

体が熱くなってきて顔も赤くなっていたようで

カオル先輩が氷の入ったお水を差し出してくれた





冷たいお水が喉を通って流れていき

体の中も頭もスッキリしていく感じがして

先輩を見るとお酒の入ったグラスを持って

私の横に腰を降ろすと

「何見ようか?」と

ネズミーのチャンネルを開いて

問いかけてくる先輩に

「魔法のランプがいいです」と言った






カオル「曲は知ってるけど

  ちゃんと見るのは小学生以来かもね」






先輩はリモコンを置くと

私の腰を抱き寄せてから

テレビに顔を向けて

「悪役の歌はいつも面白いね」

と笑っていて…






( ・・・・普通なら… )






カヨ「普通なら洒落こけたお店に行くか

  ケンタッキーなんかを買って食べそうなのに」





去年のカオル先輩は先輩達と合コンに行こうとして

相手の女の子達をアキラ先輩達に

とられてしまいスナックに現れた事を思い出した





きっとカヨさんが言った様に

お洒落なお店で特別なディナーを食べたり

友達とケンタッキーを食べて騒いだりが

カオル先輩の〝普通〟だったんだろうなと思い…





近所のお年寄りが集まる

商店街へと買い物に行き

自分の家でお肉を焼いて食べて…

小学生以来見た事のない

アニメを見ているカオル先輩を

見上げていると先輩は「ん?」と

私の顔を覗き込んできた…





カオル「お酒がキツかったかな?」





そう言ってテーブルにある

お水の入ったグラスを手に取って

私に差し出してきたから

「ありがとうございます」と言って

受け取ってお水を口にしていると

先輩が肩に腕を回してきて

そのまま反対側の髪を撫でながら

また耳に髪をかけてきた…




グラスを唇から離してカオル先輩の方に顔を向けると

私の手にあるグラスの重みと感触がパッとなくなり

コトッと音が聞こえたから先輩がグラスを

テーブルに置いた事は分かったけれど

私の目にその光景が映る事はなく…




変わりに唇にほんのり苦い

アルコールの味が広がっていた…





最初は唇の柔らかさだけを感じるキスだったけれど

少しずつ深くなっていく久しぶりのキスに

手を何処に置いていいのか分からず

片手はソファーにギュッと押し当てて

もう片方は宙に浮いたままでいると





カオル「ハァ…ぇみちゃんッ…」




カオル先輩から腰を抱き寄られて

身体の距離も近くなり

先輩の肩を掴んでバランスを保っていた




先輩は舌を絡めてきたりはせずに

角度を変えながら少し唇が離れると

私の名前を呼んで身体を抱きしめる様に

またキスをしてきてくれて…




抱き寄せる度に手の位置も少しずつ動くけれど

前の様に胸を触ってきたりはしない…





( ・・・・・・ )





陽気なアニメの声がする部屋の中で

カオル先輩の私を呼ぶ声とキスの音が

アンバランスに耳に届いていて

先輩が角度を変える度に

ソファーの独特な軋む音が

より一層大人な雰囲気に変えていく





いつもは私の方が息がもたなくて…

苦しくて、小さく息を乱しながら

カオル先輩を見上げると

余裕そうに微笑む先輩の顔があったけれど…





( ・・・初めてだ… )





唇を離しながら「ハァ…」と息を漏らして

余裕のなさそうな顔で私を見つめてくる

先輩の瞳は私の気持ちを探っているようで…

また腰を強く抱きしめてキスを落としてくる…





初めてカオル先輩とそうなった日は

玄関で2択を言い渡されて

そのまま寝室に連れて行かれ…





それ以外は一緒に住んでいたのもあって

先輩から当たり前の様に抱かれていた…






( 多分…初めてだ… )






こんな風に気持ちを探られながら

カオル先輩に求められるのは…




先輩に「大好き」だとは伝えても

一度は離れてしまっていた私を

今日…抱いてもいいのかと

問いかける様にキスをして

求めてくる先輩は

トンっと自分の額を私のオデコへと当てて

また…「えみちゃん…」

と苦しそうに名前を呼んできた…





「・・・・・・」





こんな先輩は初めてで

どう反応するのが正解か分からず

目線を下げていると

くっついていた額は離れていき

顎をそっと上げられて

先輩と視線が交わると

顎にあった手が首筋へと

ゆっくりと移動していき

私の襟元部分で止まり

そのままジッと見つめてくる

カオル先輩の目を見続けた…





カオル「・・・・カッコ悪くなって…いい?」





「・・・ぇっ…」





先輩の言葉にそう返した瞬間

腰をグッと抱き寄せられて

首筋にカオル先輩の顔が埋まって

下腹部がギュッとなる感覚がした




「カオッ……んッ…」





温かい感触と共にチクリと

心地いい痛みが首筋に与えられ

「ャッ…」と口からでる言葉とは違って

カオル先輩の背中の洋服を

ギュッと掴んでいる自分に気付き

手を離して先輩から距離をとろうとすると

ダメだとでもいうかの様に

更に腰を抱き寄せられ

どんどん下がっていく先輩の舌が

鎖骨辺りを舐めて小さく身体が跳ねた…





カオル「・・・もう一度ちょうだい…」





先輩はそう言うと洋服の下から

手を入れてきて下着の上から胸に手を当て

私の顔を少し下から見上げながら

「笑実ちゃんを頂戴」と言ってきた






「・・・・・・」






サトル「誰もお前みたいには

   抱かれてねーって事だけは確かだぞ」






( ・・・・10分… )





時間なんて気にした事なんてなかったから

毎回何分抱かれていたのかなんて分からないけれど…

先輩が私に与えてくれる甘い時間が

数十分で終わる事は…一度もなかった…




時間が全てじゃない事は分かっているけど…

今、目の前で私を求めてくれている

カオル先輩に嘘は一つもなくて…

その想いもちゃんと私に届いている…






「・・・・カオル先輩…」



 


カオル「・・・・・・」






先輩の目を見つめて

「カッコ悪い先輩のままでいてください」

と伝えるとカオル先輩は

少しだけ驚いた顔をした後に

困った様に笑って

「笑実ちゃん相手じゃそうなるだろうね」

と言って顔を近づけてきた






カオル「・・・カッコ悪い位に…もう離さないよ?」






カオル先輩の言葉に小さく頷いて微笑むと

先輩は軽くチュッと音を立てたキスをして

洋服の中にある手をスッと脱き

「おいで」と私を抱き上げて

奥の寝室の方へと歩いて行った







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