〈エミ視点〉










「・・・・かみ…」






迎えに来た先輩の姿を見て

驚いているとカオル先輩は前髪を触りながら

「変かな?」と笑っている…





10時間前に別れた時は

明るいアッシュカラーだったはずの髪は

黒に染められていて前髪は

私の様に真っ直ぐと切りそろえられていた…






( ・・・・なんだか… )





先輩の姿を見上げていると

カオル先輩は私の後ろにある

オートロックのドアに反射している

私達を見て小さく笑いながら

「笑実ちゃんとお揃いにしたくてね」

と言ってきた…





カオル先輩はいつもそうだ…

詩織ちゃん達と会う時も…

あの花火大会の日も…





( いつも…私に合わせてくれる… )





「・・・・カッコイイです…すごく…」





そう伝えると先輩は

私の髪に手を伸ばしてきて

いつもの様に髪を耳にかけてきた






カオル「笑実ちゃんも…可愛いよ…」





「・・・・・・」






あの風が舞った朝の様に

先輩を見上げているとカオル先輩も

また私の視線に気付いて顔を少し下げた…





カオル「・・・・逃げないなら…するよ…」





「・・・・・・」





気付いていた…

あの時カオル先輩の手が少し

頬に添えかけられていた事に気付いて

パッと距離をとって離れた…




逃げない私をしばらく見つめた後に

耳にある手が頬えと移動し

親指で優しく頬を撫でてきたから

逃げる事も目を逸らす事もしないで

先輩の目だけを見上げ続けていると






カオル「・・・答え……でいいんだよね?」






と言ってゆっくりと顔が近づいてきたから

何も言わずにそっと目を…閉じた…




デートの後に答えを頂戴と言われていたけど…

もう私の中で答えは出ていたから…





サトル先輩との電話を切って

クローゼットから取り出した服を

鏡の前で当てながらカオル先輩との

久しぶりのデートを楽しみにしていたから…





特別なデートをする約束だった今日を…

お試しみたいな形では一緒にいたくなかった…

ちゃんと…先輩の彼女として

約束のデートをしたかったから…





唇が離れ目を開けてカオル先輩を見ると

少しだけ泣いている様な目をしていて

「好きだよ」また想いを口にしてくれた…






カオル「離れてる間もずっと好きだったよ…」





「・・・・私もです…」






カオル先輩は私を大切にして

可愛がってくれていたけど

こんな風に「好き」と

言葉にしてくれる事は少なかった…





「ずっと…大好きです…」





この離れていた数ヶ月間…

耳に届く噂話に

泣いた日も多かったけれど…




私は自分が思っていた以上に

カオル先輩に想われていたんだと分かった…





先輩は手を差し出してきて

「約束のデートしようか」と言ってきたから

「はい」と言ってその手をギュッと握り

約束のクリスマスデートへと向かった…





カオル「お腹は空いてる?」





「ペコペコです!笑」





カオル「ペコペコなの?笑」





「楽しみにしていたから

  オヤツも食べないで待ってたんです」

   




カオル「笑実ちゃんのオヤツ…どら焼きかな?」





「外れです…笑」






カオル先輩は繋いだ手を

自分のポケットへと入れて

「お団子?」と問いかけてきて…





数ヶ月前のあの日々に本当に戻ったんだなと

感じながら繋いだ手を強く握り返し

「それも外れです」と笑って答えた







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る