〈コウ視点〉









女「カオル先輩部屋に来ないんですか?」





カオル「・・・・・・」






ベランダでタバコを吸っていると

女の子達が中々部屋に戻らない

カオルを呼びに来たが

スマホを眺めたまま

何も答えないカオルの代わりに

「煙いから部屋の中にいた方がいいよ」と言って

女の子達をリビングに戻し

カオルの背中にタメ息を吐いた…





コウ「・・・・・・」





笑実ちゃんは多分…

地元に戻って就職するんだろう…




ツカサからさっき

笑実ちゃんとコンビニで会った時に

就活の為に黒に染めたと言っていたと聞いた…





( ・・・・そして… )





ツカサ「なんかまた…

   サトルが言ったみたいで悪いな…」





笑実ちゃんと駅で会って以来

この一週間飲み会に

顔を出していなかったカオルに

ツカサが謝って来て

なんの話かと思ったら…





( ・・笑実ちゃんが避けた理由は多分それだ… )






普通…誰だって別れた恋人の

性事情なんか知りたくは無い…




ツカサはそれを知ったカオルが

しばらく顔をだしていなかったと

思ったみたいだが…





コウ「・・サトルも…悪気はないと思うぞ…」





黙ったままのカオルの背にそう伝えたが

カオルはピクリとも動かず

手の中にあるスマホの画面を見つめている





もう数ヶ月以上前の笑実ちゃんとの

LINEのやりとりを

ただずっと眺めているカオルに

何て言ってやればいいのか分からなかった…





カオルは笑実ちゃんに会いに行って

一度キッパリと振られている…





〝好き〟だからといって

全てが上手くいくわけじゃないし

一度ズレた歯車をもどすのは簡単じゃない…





カオル「・・・・帰るよ」





スマホをポケットへとしまい

そう言って部屋に戻って行くカオルに

「ケーキ位食って帰ったらどうだ」と

タバコの火を消して俺も部屋の中へと入ると

廊下の方からうるさい足音と共に

遅れて来たサトルが顔を出した





( 嫌なタイミングで来たな… )





どうせならカオルが帰ってから

現れて欲しかったと思いながら

俺の前で足を止めている

カオルの肩に手を置くと

キッチンからビールを片手にしたアキラが

「随分と遅かったな」と声をかけると

サトルは目を細めながら部屋の中を一度見渡し…





サトル「ブスばっかりだから飯食ってから来たんだよ」





( ・・・・はっ…? )





ヒカルもヒョウも…

ジンもツカサも…

皆んな固まっていて

アキラは目を丸くしている…




今のサトルのセリフは

アキラがよく言うセリフだが…

流石のアキラも女の子達の前で言ったりはしない…





( ブスって…お前が集めた子達だろうが… )






女の子達も当然いい反応はしてなく

微妙な空気の中で

アキラが「どうした?笑」と苦笑混じりに

サトルに問いかけると

サトルはアキラを睨むような目を向け






サトル「うるせえ!

  年上専門なら年上だけ相手してろ」






そうアキラに言い…

今度はソファーに数人で座っている

女の子達に目を向けて

「カオルが好きか?」と問いかけた





さっきベランダにカオルを呼びに来た子が

「えっ…」と戸惑いながら

隣の子と顔を見合わせていると





サトル「さっさと帰った方がいいぞ」





サトルはダウンに手を突っ込んだまま

ソファーに近づいて行き

「どうせ便所だそ」と見下ろしながら言った…






サトル「カオルがお前らの

   誰かを抱いたとしても便所だぞ…」





女「べっ…便所?」





サトル「トイレだよ!

   コイツは便所でしか抱かないからな」






チラッと一度カオルに目を向けてから

もう一度女の子達を見下ろし

「今日も明日も明後日も…お前らはずっと便所だ」

と言い放ち…それはここにいる男全員が

知っていて…思っている事だった…




カオルは…笑実ちゃんと付き合う前の飲み会じゃ

俺たちの様に寝室を使う事もあったが

9月からは…笑実ちゃんと別れてからは

トイレにしか連れて行っていない…






サトル「お前…あのガキを便所で抱いた事あるか?」





カオル「・・・・・・」






顔だけカオルに向けてそう問いかけると

何も答えないカオルを見て

「だろうな」と鼻笑い

「情けねー奴だな」と呟いた





サトル「あのガキと別れて…

   ウジウジ、ダラダラと未練がましく

   こんな名前も知らねーガキ達を

   便所で抱いて気が紛れてんのか?」






カオルの…

女の子達への扱いがいいもので無い事は

俺たちだって分かっていたが…






( ・・・・未練がましくは… )






カオルは誕生日の日に

笑実ちゃんに会いに行って…

フラれて帰って来た…




まだ笑実ちゃんへの

想いが吹っ切れて無い事も

俺たち皆んな気付いている…





サトルの「ウジウジ、ダラダラ」の言葉に

「もういいだろ…」と言って

声を上げたのはシュウだった…






シュウ「・・・・話は終わりだ」






シュウが立ち上がってそう言ったが

サトルはシュウの言葉を全く聞いて無い様で

真っ直ぐとカオルに目を向けたまま

「ダセーな」と話を続けている






サトル「お前どんどんダサくて情けなくなるな」






カオル「・・・・・」






サトル「どうせならその情けない姿を

   あのガキに見せたらどうだ?笑」






アキラ「・・・いい加減にしろ」






サトル「会いに行って見せてこいよ」





サトルはカオルが会いに行ってフラれた事を

知らないからなと内心でタメ息を吐きながら

サトルの腕を掴んで外に連れ出そうとすると

バシッと振り解かれ

「どうせカッコつけて帰って来たんだろ」

とカオルがあの日

フラれた事を知っているようだった…





( なんだ…?? )





俺やシュウ達も詳しく知らない話をサトルは

「笑ってサヨナラなんかしてんじゃねーよ」

と話し出したから驚いた…






サトル「こんな所で情けねー姿晒してないで

   あのガキに泣きついてみろよ

   別れたくねーって縋ってみろよッ!」





カオル「・・・・・・」

   





サトル「同じ情けねー姿なら

  そっちの方がよっぽどマシだ…」






カオルは目を見開いてサトルを見ていて

服の袖口下にある手はこぶしを作っていた…






サトル「もし…俺がツカサの秘密を知っていたとして

   自分の女からその秘密を教えろなんて言われても

   俺だったらぜってー話さねーよ…」






ツカサ「・・・・・・」






サトル「男のお前がそんなダセェ真似して

   困らせて泣かせてどーすんだよ」






サトルの言うツカサが

沙優ちゃんだという事分かったが…





( なんでサトルが知っているんだ… )





サトルは笑実ちゃんを可愛がってなんていないし

ハッキリと言えばイジメに近い事しかしない…




そんなサトルを笑実ちゃんも

あまり得意としていなく…

まだ色々あった

ツカサと話す事の方が多かった…






サトル「クリスマスに焼き鳥食ってるような

   変なガキだけど

   お前はその変なガキが好きなんだろうが?」






ヒョウ「・・・・骨付きは食べれないからね…」







ヒョウがボソッと呟いた声が聞こえる位に

部屋中皆んな黙ったままだったけど…




クリスマスだから鶏肉を食べようと

クリスマス感ゼロな

焼き鳥をチマチマと食べて

満足そうに笑っている笑実ちゃんが

何となく想像できて顔を下げて少しだけ笑った…






サトル「だったらこんな所にいないで

   あのガキに縋ってこいよ」





コウ「・・・・・・」






俺も…縋って来て欲しいと思い顔を上げると

俺とサトルの横を通り過ぎて行くカオルに

サトルは「カオル」と呼び

笑実ちゃんがいた焼き鳥の名前を

玄関から出て行くカオルの背中に伝えた…





( ・・・情けなくていい… )






情けなくても、カッコ悪くてもいいから

一緒に帰って来いと思いながら

カオルが出て行った扉を眺めた…




   















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