薬局
〈エミ視点〉
アキラ「誰かと思えばお前か…笑」
カヨさんの所で買い物をした帰りに
前に寄ったドラッグストアへと立ち寄り
残り少ない調味料を見ていると
通路の角からアキラ先輩が顔を覗かせていた…
アキラ「ずいぶんとまたイメージ変えたな?笑」
「・・・・・・」
アキラ先輩の後ろにはジン先輩と…
数日前に会ったサトル先輩の姿があり…
何となく嫌な組み合わせだなと感じて
「どうも」と頭を下げながら
一歩横にズレた…
なんで学校から離れたこのお店で
会うんだろうと疑問に思い…
アキラ先輩に目を合わせたづらくて
目線を少し下げて泳がせていると
先輩の手に持つカゴの中身が目に入り
なぜ学校から離れたこのお店で
買い物をしているのかが分かった…
「・・・・・・」
カゴの中には避妊具の箱が数個入っていて
隠しもせず堂々とカゴを持って歩いている
先輩達にまた一歩下がった…
( ・・・・・・ )
沙優ちゃんは妊娠の事を
誰にも知られたくないと泣いていて
私も…その気持ちに同調した…
アキラ先輩と…シュウ先輩は友達で…
よく一緒にいる事も多いから
好きな人に知られたくない気持ちもわかった…
例え…叶わない恋の相手だったとしても
シュウ先輩にとって
可愛い地元の後輩としての
イメージのままでいたかった気持ちも…
よく…分かったから…
( ・・キレイなまま…終わりたいから… )
アキラ先輩も
避妊をしなかったわけじゃない…
今回の妊娠は本当に…二人のせいではなく…
「・・・・届ける場所を間違えたのかな…」
昔読んだ絵本を思い出し
そう小さく呟くと「何言ってんだ?」と
アキラ先輩が一歩近づいて顔を覗き込んできた…
「・・・・・・」
アキラ「・・・・ん?」
サユ「・・・・知られたくもないし…
シュウ先輩と…変な感じになってほしくない…」
沙優ちゃんが恋をしたのはシュウ先輩だけど
きっとアキラの事も嫌いじゃないから…
そのままで終わってほしいんだろうなと
アキラ先輩の顔を眺めていると…
アキラ「・・・なんかお前…あれみたいだな…」
「・・・・・・」
アキラ「かぐや姫みたいな頭してんな?笑」
てっきりコケシとでも
言うのかと思っていたから
アキラ先輩の言葉には少し驚いた…
アキラ「確かこんな頭だったよな?」
ジン「あー…髪長いからな…」
眉を吊り上げたサトル先輩が
「誰が、かぐや姫だよ」とドカドカと近づいて来て
私の髪を横から見下ろしながら
「前も後ろも真っ直ぐでどう見たって座敷童だろ」
と言って怒っている…
( ・・・・座敷童… )
美「笑実ちゃんはね…
後ろも全部切りそろえて
レトロ感出した方が絶対に可愛いよ」
美容室のお兄さんはああ言ってくれてたけど
やっぱり似合わないのかなと思いながら
また目線を下げ視界に入る避妊具に
フイッと顔を背けると
アキラ先輩の笑いが聞こえてきた
アキラ「んな反応すんなよ
カオルだってこんな風に買ってたと思うぞ?笑」
ジン「つーか夏のキャンプ…
お前らあれ何個使ってたんだ?」
相変わらず失礼で…
遠慮のない先輩達に顔を背けたまま
何も答えずにカオル先輩も
こんな風に買ってたのかなと
避妊具をガサガサと入れたカゴを持って
歩いている先輩が想像できず…
どうしてたんだろうと考えていると
ジン「お前ら週に何箱使ってたんだ?」
「・・・・・・」
ジン先輩は揶揄ってる風ではなく…
多分普通の会話として聞いているんだろうけど…
( 口臭の質問とか… )
カオル先輩の言う通り変わってる先輩だなと
私の返答を真顔で待っている
ジン先輩の顔を見上げていると
サトル先輩がタメ息を吐きながら
「それが今じゃ週一箱空くか空かないかだしな」
と一人言の様に呟いた…
ジン先輩がバシッと
サトル先輩の肩を叩いているのが
視界の横から見え
今のはサトル先輩の嫌味なんかじゃなく
本当の事なんだと…分かった…
( ・・・・勘違い…しちゃダメ… )
アキラ先輩やジン先輩は…
まるで私がまだ…
カオル先輩と付き合っているかの様に
話してくるから…
つい…忘れてしまっていた…
私はもう…先輩の彼女じゃないんだと言う事を…
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