友達の…

〈コウ視点〉








少し遅れて店に入って来たヒョウは

ニコニコとご機嫌で

何かあったのかと不思議に思っていると

目の前のサトルも感じた様で






サトル「遅れて来て偉いご機嫌だな?笑」






いい子でもひっかけて来たのかと

居酒屋のオッサンみたいな問いかけをしている

サトルとアキラにいくつだよと

苦笑いをしているとヒョウの口から

「チワワと買い物してたんだよ」と出てきて

皆んな固まった…






( ・・・笑実ちゃん…だよな?? )






目の前のツカサが「カオルの?」

と確認するとヒョウは「そうそう」と

呑気な相槌を返しながらメニュー表を見ている…





今日この場には、俺とヒョウと…

アキラとサトルとツカサの5人だけで

カオルがいなかった事にホッとしながら

「お前どう言うつもりで」と問いかけると

バンッとビールジョッキをテーブルに置き

眉を吊り上げているサトルに

俺の声はかき消された…






サトル「ヒョウ…なんであのガキに構うんだ?」





ヒョウ「んー…楽しいから?」





サトル「楽しい?」





ヒョウ「チワワは変わってるって言うか…変だね

  今日もチワワの行きつけのお店を見に行ったら

  年寄りが沢山の商店街だったし…笑」






ヒョウの言葉に「商店街?」と

笑っているのはアキラだけで

俺とツカサは微妙な顔で

ヒョウとサトルを見守っていた…






サトル「もうあのガキには関わんなよ…」






サトルの言葉にアキラと楽しそうに

話していたヒョウはキョトンとした目を向け

「なんで?」と問いかけているが…





( ・・・なんでって… )





サトルは笑実ちゃんに対して

どうかと思うような発言しかしないが

俺もサトルと同じ考えで

笑実ちゃんに前の様に構うのはどうかと思った…





サトル「なんでって…

  あのガキはカオルと付き合ってただろうが」





ヒョウ「・・・うん、だからなんで?」





ツカサ「・・・・・・」






ヒョウの空気の読めない感じは前からあるが

今回は「まぁ…いいか…」と

流してくれような相手ではなく…

まだ料理も届いていないこのテーブル席が

妙に息苦しく、居心地悪く感じた…






( ・・・シュウも連れてくるべきだったな… )






だいたい…

いつもの5人組の時は

仲裁したり場の雰囲気を読んで

上手くまとめてくれるのはシュウの役回りで…





サトル達のグループでは

アキラのポディションなんだろうが

そのアキラはヒョウの話を笑って聞いているだけで

笑実ちゃんに構うのはやめろなんて…

言いそうな気配は…ない…






コウ「・・・ヒョウ…

   カオルと笑実ちゃんが…

   いい感じで別れたわけじゃないのは…

   知ってるよな??」






ヒョウ「この前普通に笑ってたけど?」






ヒョウはまた…

キョトンとした顔で俺を見ているが

俺は「いやいやいや!」と首を横に振り

「カオルを見ただろうが」と言うと

「ん?」と目線をあげて

あの日の記憶を辿っているのか

「ん〜?」と口を動かしながら

「別に普通じゃない?」とアッサリと言った…






コウ「どう見たって…まだ好きだろうが!」





アキラ「・・・・・・」






あの日カオルは

笑実ちゃんと普通に接していたけど

学校の坂を上がっていく

笑実ちゃんの背中をずっと…見ていた…






ヒョウ「でもヤル事はやってるから…

   元気なんじゃない?」






ツカサ「・・・あんま綺麗じゃねぇけどな…」


   





ツカサは少し目線を外してそう言うと

ビールジョッキを持ち上げて

口の中を潤す程度にビールを飲んでいた…





俺も手元にあるジョッキグラスに目を向け

酒の不味くなるような雰囲気に

中々ゴクリと飲む気分にはなれなかった…






アキラ「別にヒョウが悪いわけでもねーだろうが…」






俺やツカサが中々進まないビールを

ゴクゴクと飲みながら

「別れたのはあいつらの問題だろ」

と言ってお通しで出された枝豆を食べている






サトル「マナーだよ、マナー!!

   ダチが未練がましく思ってる女に

   わざわざチョッカイかけんなって言ってんだよ」






アキラ「マナーって…笑

  お前はただカオルのペットが嫌いなだけだろうが?」






ヒョウ「だよね?前から思ってたけど

   なんでそんなにチワワを毛嫌いしてんの?」






サトル「別に毛嫌いじゃねーよ

   俺はパッと見から嫌いなんだよ!」




 


それを毛嫌いって言うんじゃないのかと

サトルにも呆れた目を送りながら

「ヒョウ!」と呼んで

「カオルの為にもあんま構うな」と言った





こんな事は言いたくないが

アキラは言いそうにもないし

サトルじゃ…無理だろうと思い

カオルの気持ちも考えてやれと話した…






ツカサ「・・・・あんまいい気しねーだろ…」



 



ヒョウ「・・・いい気ねぇ…

   元々はサトルが連日

   チワワと同じ学校の子達とばかり

   飲み会開いてたのも悪いよね?」






ヒョウの言葉に枝豆を食べていたサトルは

「俺のせいかよ!?」と目を見開いて怒り出し






サトル「慰めようと集めただけで

   抱いたのはカオル本人だろうが」





ヒョウ「散々別れるように盛り上げといて

   関わるなは…ちょっとねぇ?」






ヒョウも枝豆に手を伸ばして

「あーあ…アレがなかったらなぁ」と

少し唇を突き出しながらムシャムシャと

口を動かすヒョウを見て

俺も同じ事を思った…





( もし…アレがなかったら… )





今もカオルの隣りで

笑っていたのかもしれないなと思った…




だけど…サトルの言う事もその通りで…

抱いたのはカオルで…

あの日嘘を吐いたのは笑実ちゃんで…




アキラの言う二人の問題も…

その通りだなと…思った…






ヒョウ「チワワが言ってたやつあるかな?」






( ・・・なんでこんなに構うんだ… )





これだけ場の雰囲気が悪くなっても

笑実ちゃんの話を止めたないヒョウに

眉を寄せながら顔を向けた…












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