商店街
〈エミ視点〉
ヒョウ「ホントにいたよ!笑」
ヒョウ先輩の声に「えっ?」と振り返ると
まるで芸能人が着る様な
派手なチェック柄のロングコートを着て
駆け寄ってくる先輩に驚いた…
( ・・・・柄物のコート… )
地元でそんなオシャレな服を着ている
男の人なんていなかったし
カオル先輩も明るいカラーのセーターなどを
好んでよく着ていたけど…
ヒョウ先輩は顔も派手だからか
オシャレな格好をしていると
住む世界の違う人みたいに見える…
( ・・・・浮いてる…よね? )
ここは小さな商店街だし
買いに来るお客さんは近所の年配者が多く
茶色や灰色のダウンジャケットの人混みに
有名ブランドのチェック柄に
よく似たコートを着ているヒョウ先輩は…
もの凄く浮いていて皆んなが見ている…
ヒョウ「チワワはこの商店街似合うね
一体化してて探すの苦労したよ?笑」
「・・・・そう…ですか…」
先輩は浮いていて20歳の私が一体化というのも
変な気がするけどスーパーよりも居心地がよく…
野菜やお肉などはコッチに買いに来ていた
「探してたんですか?」
探すのに苦労したと言う事は
何か用があったのかと思い
ヒョウ先輩に問いかけてみると
先輩は「そうそう!」と言って
子供の様にニコッと笑うと
「夕飯なに?」と聞いてきた…
「・・・・・・」
何も答えない私に
ヒョウ先輩は目をパチパチとさせて
「聞いてる?」と首を傾けているけど…
( 夕飯なにって… )
ヒョウ先輩とは先週、学校の前で
プリントを…足で拾ってもらい…
カオル先輩の言う通り就職係の人から
長い嫌味を言われながら
再発行をしてもらったあの日以来で
その前に会ったのは
9月の後期授業が始まった日に
シュウ先輩の部屋で皆んなでご飯を食べた日だ…
ヒョウ先輩は9月の…
私とカオル先輩が別れる前の時の様に
接してくれているけど
夕飯は…もう作る事も
一緒に食べる事も出来なくて…
ヒョウ「夕飯の材料を買いに来たんじゃないの?」
「・・・・あの…そうなんですけど…」
ヒョウ先輩は私をジーっと見て…
急にニッと笑うと「何処で買うの?」と
キョロキョロと周りのお店を見渡しだし
「時間ないから早く」と言われた
( ・・・時間がない? )
不思議に思いながらも
先輩のコートを少し引っ張って
「ヒョウ先輩」とコッチを向いた
先輩の顔を見上げると
先輩は私の言いたい事が分かってる様で
「分かってるよ」と言って笑った
ヒョウ「作ってとは言わないよ…
ただ…チワワの今日の夕飯は何かなって?笑」
「・・・普通ですよ?」
私の夕飯のメニューを聞いて
どうするんだろうと更に疑問に感じ
自分の眉間に少しだけ力が入った…
ヒョウ「今日サトル達と定食屋に行くんだけど
チワワが作る様なご飯があるかなって思って」
「・・・・和食…って決まってるんですか…」
先輩達の中じゃ
地味な和食イコール私の
イメージなんだろうなと思い
だいぶ前にアキラ先輩から
「地味飯ばかりじゃカオルが飽きるぞ」
と言われた事を思い出した…
( ・・美味しいよって言ってくれてたけど… )
数ヶ月前の…
白くモヤのかかった様な記憶が頭の中に蘇り
遥か昔の事みたいだなと小さく口の端を上げると
「でっ!?夕飯は??」とヒョウ先輩の言葉と共に
商店街独特のガヤガヤとした
賑やかな声が耳に届いてきた…
「まだメニューは決めてないんです…」
ヒョウ「ん??買いながら決めるの?」
「いつもお店の人達から教えてもらってて…」
ヒョウ先輩は「お店の人?」と首を少し傾げると
「まっ!いいや!早く案内してよ」と
子供みたいな甘えた目で見てくるから
少しだけダイキ先輩に似ている気がして…
( 先輩も…気を遣ってくれてるのかな? )
ダイキ先輩もよく「笑実ちゃん」と
年下の私に甘えてきていたけど
店長と私に気を遣ってワザとあんな風に
甘えてきていたから
ヒョウ先輩も気を遣ってくれているのかなと思い
先輩の背中を見上げると…
ヒョウ「チワワ!見て見て!!蟹が動いてる!笑」
初めての商店街に興奮して歩くたびに
声を上げて騒いでいて
カヨさんの八百屋さんに着くと
ヒョウ「バナナの叩き売りが見たい!」
と失礼な事まで言い出していて…
ダイキ先輩とは違う気がした…
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