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〈サユ視点〉
病院に行った翌日の朝から
悪阻が始まり30分に1回のペースで
異物が上がってきてトイレにかけこんでいた…
こんな状態で学校に行けば
皆んなに妊娠していると気付かれてしまうと思い
手術までは学校を休むと連絡をいれると
笑実ちゃんは学校に行かずに
食べ物などを買い込んで来てくれ…
「ふふ…もう少し夏休みを満喫しようか?」
レンタルショップ屋でDVDや漫画も借りて来て
一週間私の部屋でゆっくりと過ごしてくれて
手術の日もずっと…側にいてくれた…
手術後の痛みと出血が続き
病院からもらった注意事項に書かれている通り
手術後の1週間も学校を休んでいて…
( ・・・全然…知らなかった… )
手術後は悪阻もないし
安静にしているだけだから大丈夫と
笑実ちゃんには学校に行ってもらっていたけど
カオル先輩と別れていて
この1週間…また学校で
皆んなから噂されていたなんて…
廊下を歩いていても
耳に聞こえてくるカオル先輩の話に
自分の手が強く握り締められていた…
( ひどいよ…カオル先輩… )
笑実ちゃんは「大丈夫」と言って
普通に振る舞っているけど
大丈夫なわけがない…
自分の彼氏だった人のこんな噂を
聞きたいはずなんてないから…
先輩達は他の大学の子や
社会人のお姉さん達とも飲み会をしていたのに
連日聞こえてくる噂の相手は皆んな…
この学校の子達ばかりで
余計にカオル先輩への怒りが募った…
( こんなの…笑実ちゃんへの嫌がらせだよ… )
私の秘密を守ってくれた事が
原因だと分かっていても…
サユ「カオル先輩に全て話してよりをもどして」
もう…そんな風には言えなかった…
今は笑実ちゃんの耳に
先輩の噂が入ってきてほしくなくて
お昼の休憩時間も人の少ない
旧校舎の階段に笑実ちゃん連れ出していた…
「・・・・秋の空だね?笑」
空を見上げながら笑っている笑実ちゃん見て
暑い日差しの和らいだ空を見上げた
サユ「・・・早いね…」
「あっという間に冬がきて卒業だね…」
先週から10月に入り
まだ日中は温かいけど少しずつ
秋の気配を感じ出していた…
( ・・・・誕生日だったよね… )
カオル先輩の誕生日がこの位だったはずだと
一年前の記憶が蘇り抹茶オレを飲んでいる
ストローを口から離して
隣りでバナナミルクを飲んでいる
笑実ちゃんを横目で見た…
サユ「・・・美味しい?笑」
「・・・・バナナの味かな?笑」
最近…笑実ちゃんは
イチゴ味の物に手を伸ばさなくなった…
以前飲んでいた豆乳ジュースにも…
昨日はフルーツミルクを飲んでいて
その前は…ヨーグルトだった…
きっとイチゴ味は
カオル先輩との思い出が詰まっていて
今はその思い出から離れたいのかなと思ったから
それ以上は何も聞かなかった
笑実ちゃんとカオル先輩が別れて…
もうすぐ1ヶ月で…
( きっと…笑実ちゃんの気持ちは… )
1週間もしないで別の子を抱ける
カオル先輩とは違って…
笑実ちゃんにとってのカオル先輩は
そんなにアッサリと
消える存在じゃないはずだから…
笑実ちゃんがまた…
イチゴ味のジュースを手に持つ時がきたら…
( ・・・・カオル先輩を… )
そうなる日が早く
くるといいなと思いながら
笑実ちゃんの言う秋の空を見上げ
抹茶オレを飲んだ…
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