〈エミ視点〉







後期授業が始まって直ぐ…

授業中にスマホのスケジュール帳を見ながら

何かを考えている沙優ちゃんに気付いて

「何かあるの?」と問いかけた






サユ「・・・・笑実ちゃん…生理いつだっけ?」





沙優ちゃんと私は生理周期が近く

私の生理後に一週間しない位で

沙優ちゃんの生理がきていた…けど…






「・・・・夏前位から早まったりして…

  あと…ピル…使ったりしてて…

   前とは…ちょっとズレてるから…」






ピルの事を沙優ちゃんに話すのは

なんだか恥ずかしくて…

目を合わせられずにボソボソと伝えると

沙優ちゃんはひやかす事もなく…

黙ったままだったから

チラッと目線だけを向けると

口元に手を当てて難しい顔のまま

カレンダーを見つめていて…





( ・・・・・・ )





春から学校の事で色々とあり

あまり狂った事のない周期が初めて

大きくズレて生理が早まった事を思い出し

沙優ちゃんも何か悩みがあって

生理が来てないのかなと思い

ノートの端に〈産婦人科行ってみる?〉と

書いて沙優ちゃんに差し出すと

沙優ちゃんは大きく目を見開いて

私の方を見てきた…





( ・・・えっ… )





沙優ちゃんの疑問がただ遅れているだけでは

ない様な気がしてセミの鳴き声が響く

窓際の席で、もしかしてとある言葉が過ぎった…





講義が終わり逃げる様に

帰ろうとする沙優ちゃんの背中を追って

「沙優ちゃんッ」と手を掴むと

その手は大きく振り払われて

「違うから」と言われた






サユ「色々あって…テストとか…

  夏休みアッチに帰ってたりとかして…」






沙優ちゃんの口調はいつもよりも

早口で…激しくて…

少しだけ震えている…






サユ「ほらッ!気候とか気圧変わった所に行くと

   早まったりするとかいう…から…」





「・・・最後にきたのいつ?」





サユ「・・・ッ・・違うもんッ…」






さっき沙優ちゃんはテストと言っていた…

もし7月が最後だったとしたら

2ヶ月遅れている事になるし…

6月なら3ヶ月だ…






( ・・・アキラ先輩と会っていた時期だ… )






「沙優ちゃん…一緒に検査しよう?」





サユ「だから…違うってばッ!」





「沙優ちゃん…」






沙優ちゃんは目を涙ぐませて

「絶対に違う」と言って

そのまま走って行ってしまい

追いかけようとした足を止めて

検査薬を買いに少し離れた

個人経営の小さな薬局へと入った





店「なにかお探しですか?」





「あっ…あの…」






出てきたのは男の薬剤師さんで…

どうしようか迷ったけれど

妊娠の事を質問した…






「あの…せい…生理が夏の…

  6月?7月?辺りからきてなくて…その…」






店「・・・・検査はまだかな?」






やっぱり…1番可能性が高いのは

妊娠なのかなと思い首を横に振った…






店「検査もだけど

  早めに産婦人科に行った方がいい…

  6月だったらもう12週目を過ぎているだろうから」






「12週??」






店「学生さん…かな?」






私は見た目が小さい事もあって

よく年下に見られるから

未成年だと思っているのかなと思い

「二十歳です…」と伝えると

薬剤師さんは「パートナーは?」と聞いてきた






「・・・・あの…」






薬剤師さんは答えない私に

「言わなくてもいい」と優しく笑って言うと

妊娠の周期の数え方と

人口中絶について教えてくれた…






店「12週を過ぎての中絶は

   中期中絶になるから初期中絶よりも

   母体に負担がかかるからね…」






検査薬を差し出して

「もし陰性が出ても一度病院にいくといい」

と言ってレジを打ち出した

   

   



中身が見えない茶色紙袋に入れてもらい

自分のトートバックの奥へとしまい

お礼を伝えてから沙優ちゃんの

マンションへと向かいながら

さっきの沙優ちゃんの姿を思い出し

すんなりと検査をしてくれない気がした…





( ・・・今日中に検査させなきゃ… )






店「吐き気はない?」





「いえ…元気です?」





店「3ヶ月を過ぎたら悪阻の症状も出始めるからね」






一日…一日と過ぎれば

それだけ沙優ちゃんの体にも影響がでるし…

もし本当に妊娠なら…

お腹の中の赤ちゃんだって成長していくから…





沙優ちゃんのマンションの一階にある

駐車場の影へと行き

カオル先輩へと発信した






( ・・・怒るかな… )






「お疲れ様です…あのっ…その…

  就職係に行かなくちゃいけなくて…」


 




沙優ちゃんの部屋と遊ぶと言えば

家に連れておいでと言う様な気がして…

他に友達がいない事も知っているし…

つける嘘がコレしか追いつかなかった







カオル「・・・就職係か…

   それはちゃんと行かなきゃダメだね」






カオル先輩の声が不機嫌なのは分かったし

嘘にも気付いている様な気がした…






( でも…今日は… )






「はい…あの…もしかしたら

  帰りが門限を越えてしまうかもしれないので…」






カオル「・・・・・・」






カオル先輩は何も答えてくれなくて

「あの…先輩?」と問いかけたけれど

先輩は黙ったままで 

やっぱり怒っているんだと思った


 




「・・・はっ…20時…までには帰ります…」






カオル「はぁ……20時? 

   門限の意味分かってる?」






検査結果が陰性ならまだ…

もしも陽性なら…

直ぐに「サヨナラ」なんて言って帰れないし

きっと…一人じゃ不安だ…

連れて行く病院だった探さなきゃいけない…




近くの病院に行くわけにもいかないし

多少離れた病院にした方がいいだろうから…






「・・・・ごめんなさい…」






何を言われても…

カオル先輩がどれだけ不機嫌になっても

今日は門限は守れないと思った…







カオル「門限を守れないなら

   もう帰って来なくていいよ」






( ・・・・えっ… )






カオル先輩の言葉を理解するまで

数秒かかり…理解した時には

スマホを強く握っていた…






「分かりました…」






カオル「・・・・意味…分かってんだよね」






「はい…」






カオル先輩に…

何を言われても…門限は守れなかった…




それが…別れの言葉だったとしても…


















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