〈サユ視点〉









( ・・・・えっ? )






教室に入ってある事に気付き

隣りに座っている笑実ちゃんに顔を向けると

困ったように笑ってから

先生が書いている板書をルーズリーフに書き出した…






1限目、2限目と授業が終わり

笑実ちゃんの手を引いて

普段使われていない空き教室へと向かい

誰もいない事を確認してから

笑実ちゃんに問いかけた






サユ「カオル先輩の家に住んでるよね?」





「・・・・少し前までね…」





サユ「えっ??」






笑実ちゃんの言葉に頭が追いつかず

「じゃあ…」と言いかけて開いた口を止めた…




( ・・・・まさか… )






サユ「・・・・いつ?」




「・・・・最近…」






笑実ちゃんは…

女優にはなれない様な子だ…




嘘をつく時は気不味い話題になると

手を自分の手で抱き締めるように握ったり

バックやスカートの裾を掴む癖があって…






サユ「・・・・笑実ちゃん…私を見て…」






「・・・・・・」






必ず目線を下に向ける…

私はこの数日…この数週間…

笑実ちゃんの嘘を見抜けなかった…





( ・・・・多分…別れたのは… )





サユ「・・・・あの日…帰らなかった日でしょ?」






「・・・・あれは…」






サユ「そうなんでしょ??

  だって…あの日から笑実ちゃんずっと…」




  


あの日からずっと…

笑実ちゃんは門限を…

時間を気にしている日がなかった…






サユ「時間大丈夫?」





「カオル先輩には沙優ちゃんの部屋で

  課題してるって事になってるから!笑」






( きっと最初のあの日には…もう… )






カオル先輩は門限を守らなかった

笑実ちゃんに対して怒ったんだと分かった…






サユ「わっ…私がカオル先輩に話すッ」






あの日の事も…

その後の事も全部私のせいだと

カオル先輩に説明すれば

また笑実ちゃんはカオル先輩の隣で

笑っていられると思い

先輩に電話をかけようとすると

笑実ちゃんが「やめて」と言って

私のスマホを両手で握ってきた






サユ「だって…このまま…じゃ……」






キラキラと光る水滴が落ちていくのが見え

言いかけた言葉は最後まで口にする事はなく…

私のスマホをギュッと掴んでいる

笑実ちゃんの小さな手が震えている事に気づいた…






「ほん…と…ッ……ゃ…て…」





サユ「・・・・・・」






笑実ちゃんの口から

カオル先輩から…あの日…

「帰って来なくていい」と言われた事や

その後にカオル先輩が…

前の様に飲み会に参加している話を聞いた…





( ・・・なんで… )





カオル先輩は

笑実ちゃんをすごく大切にしていたからこそ…

信じられなかった…






「だから……話し…たり…しないで…」





サユ「でも、それじゃ…」





「・・・もう…私の先輩じゃない…から…」





そう言ってバックからハンカチを取り出すと

壁に背を預けたまま小さく座って涙を拭く

笑実ちゃんに話すんじゃなかったと後悔した…






( 私が…あんな事を言ったから… )






サユ「ダレにもッ…しっ…られたく…なぃ…」






あの日…笑実ちゃんはずっと

私を抱きしめて背中を摩りながら

「大丈夫だよ」と言ってくれた…






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