〈シュウ視点〉










立ち上がってビールを取りにキッチンへと行くと

カオルがベランダにいるのが見え

「はぁ…」と息を吐きながら

冷蔵庫からビールを2本取り出し

俺もベランダへと向かった






シュウ「最近よく吸うな…タバコ」






カオルは背を向けたまま

ベランダの手すりに肘を乗せ

どちらかに握っているであろうタバコの煙が

小さく空に登っていた…





何も答えないカオルに

「ふっ」と片方だけの口の端を小さく上げて

何も言わずに缶ビールを差し出し

カオルはコッチに少し顔を逸らしてから

ビールを受け取った






シュウ「・・・・・・」






笑実ちゃんが嘘を吐いて…

カオルが帰って来なくていいと言った日から

笑実ちゃんは本当に

カオルのマンションに帰って来なくなり…

その数日後…






( ・・・・もう…無理だろうな… )






俺やコウ達も

なんだかんだでカオルは

笑実ちゃんを許すと思っていた…

時間が経てばまた…と…





サトルが開いた飲み会に途中から現れたカオルは

以前の様に女の子の隣りに座り

前の様に…楽しんでいて…





( ・・・・多分…知っている… )





あの日サトルが集めたのは

笑実ちゃんと同じ学科の一年生で…

噂は直ぐに回るだろうし

笑実ちゃんの耳にも入ってるからこそ

部屋の荷物も…全部なくなっていたんだろう…






シュウ「・・・・(なんで抱いた…)」






そう問いかけたかった…

カオルを見ていれば

まだ終わりにしきれていない事は明白だし

抱き方だって見てるコッチが

相手の子達に対して

不憫になる様な抱き方だからだ…






( ・・・・まぁ…気づいてないだろうがな… )






カオルが笑実ちゃんに対して

どんな抱き方をしていたかなんて

皆んな知らないだろうし

好意を抱いていたカオルとそうなれて

喜んでる子達ばかりだろうからなと思い

手にある缶ビールを開けてひと口飲んだ…






カオル「・・・・帰るよ」






タバコの火を消して

開けてないままのビールを俺の手に返すと

カオルはリビングへと戻り…

そのまま真っ直ぐと

玄関に続く廊下へと消えていく…






シュウ「・・・・はぁ…分からねぇ…」






自分のビールとカオルから返されたビールを

セメントの床に置き

ポケットの中からタバコとスマホを取り出した





タバコに火をつけて

「ふぅ…」と煙りを吐き出しながら

スマホに目を向け

ずっと連絡を取り合っていない

沙優ちゃんのページをひらいた






シュウ「・・・・言わねーだろうな…」






カオルと別れる事になった理由を

沙優ちゃんなら知っていると思うが

笑実ちゃん自身がカオルと別れてでも

隠そうとした話を

沙優ちゃんが俺にするはずがない…






( ・・・・知ったところで… )






そう考えているとガラッと

後ろのドアの開く音が聞こえ顔を向けると

ジンがタバコを咥えながら出てきて

「なんでガキばっかなんだよ」とボヤき

タバコに火をつけている






ジン「カオルの趣味に合わせて毎週、毎週

   ガキばっかりなのもキツいな…」






シュウ「カオルの趣味?笑」






ジン「好きじゃん…ちっこいガキが…

   サトルなりに気を遣ってるみたいだぞ」





シュウ「あぁ…サトルね…」






笑実ちゃんと別れたと聞いて

誰よりも喜んで飲み会を開いたが

その飲み会のおかげで

最近じゃヒョウとカオルが微妙な雰囲気だ…






ジン「カオルが来出したら

  今度はヒョウが顔出さなくなったな?笑」






シュウ「・・・・来週辺りには顔出すよ」







ヒョウはヒョウで

笑実ちゃんの事を可愛がっていた…






ヒョウ「何も、チワワと同じ学校の子を

   抱かなくてもよかったんじゃない?」






別れて一週間もしないうちに

知りたくもないそんな情報…

笑実ちゃんも聞きたくはなかっただろうしな…





ヒョウが怒ったところで…

もう…どうにもならない…

きっと、沙優ちゃんから話を聞いてもだ…






シュウ「なかった事には…出来ないからな…」





ジン「ん?何がだ?」






例え…門限を守れない

どんな理由があったにしろ…

カオルがそれを知って

笑実ちゃんに会いに行ったとしても

前の様には戻れないだろう…





そしてカオルも…


それを…分かっているはずだ…































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