試験

〈エミ視点〉








テスト開始数分前に沙優ちゃんが扉から入って来て

ざわついていた教室が一瞬静まりかえり

皆んなの視線が沙優ちゃんに集中した…






( ・・・・沙優ちゃん… )





試験は番号順に並んでいて

沙優ちゃんの席は1番前の席だった




誰とも目を合わせずに自分の席に座るとバックから

筆記用具だけを取り出している沙優ちゃんの

後姿を見つめていると静かだった教室は

またヒソヒソと話し声が聞こえだした






女「なんで休んでたわけ?」





女「亜香里ちゃん達とも目合わせないね」






私の周りからも声が聞こえていて

沙優ちゃんが1ヶ月前の自分と少しだけ重なり

顔を俯かせて先生が入ってくるのを待っていた





( ・・・ほっといてあげればいいのに… )





退席可能時間を過ぎると

沙優ちゃんは直ぐに答案用紙を教壇にいる先生へと出し

早足で出て行き次の試験開始ギリギリに戻って来ていて

誰とも話したくない…関わりたくないと

沙優ちゃんが思っているのが分かり

私もいつも通りに一人で行動をした





午後の試験が終わり

スマホの電源を入れるとカオル先輩から

シュウ先輩の部屋にいると連絡がきていたけれど…






( ・・・・・・ )






ジン「お前ら一緒にシュウの部屋に遊びに来てて

   カオルとシュウにそれぞれ可愛がられてたけど

   シュウはカオルと違って

   恋愛対象にはならなかったわけだし…

   結果今は…会ってねーだろ?」






( ・・・・いつも一緒に… )






バイトを始めたのは

可愛い浴衣やメイク道具を買いたくて…

カオル先輩に可愛いって思われたくて初めて…

沙優ちゃんもシュウ先輩の為に始めたんだ…




浴衣を選ぶ時も…

沙優ちゃんと二人で…






サユ「髪飾りも買おうかな?笑」




「あっ!巾着もないよ」






夜景を見た日も…

カラオケ屋でも…公園での花火も…

当たり前の様に4人だったから…





( どっちか一人だけなんて思っていなかった… )






シュウ先輩はカオル先輩の友達だから…

カオル先輩と付き合いだしてからは

沙優ちゃんではなくカオル先輩と一緒に

シュウ先輩の部屋に行っていて






( ・・・・・・ )







もし逆の立場だったらと想像してみた…

おめでとうという気持ちに嘘はなくても

仕方がないと分かっていても…





( ・・・・寂しい気がする… )






学校から出て帰り道の細い路地に入ると

スマホを取り出してカオル先輩に発信をした






「あっ…お疲れ様です…」





カオル「お疲れなのは笑実ちゃんだけどね?笑

   試験はどうだった?」






カオル先輩の電話の向こうからは

ヒョウ先輩達の声も聞こえていて…

「もう来るか?」とシュウ先輩の声も聞こえた…






サユ「・・・・もう…諦めようと思って…笑」






私がカオル先輩から「好きだよ」と

言ってもらえたあの日…

沙優ちゃんはシュウ先輩が女の人と

寝室から出てくるのを見た日だった…





( アキラ先輩の事も…きっと… )






「あの…試験が…

 思ってたよりも全然ダメで…

 明日の試験勉強もまだまだ終わってなくて…」





カオル「・・・・・・」






「だから…今日は先に帰って勉強してます…」






そう伝えるとカオル先輩は

「うん…分かった」と言って

赤点取ったら許さないからねと笑っていた





電話を切って通話終了になった画面に

小さくタメ息をこぼし

沙優ちゃんの事を考えていた…



  




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