〈エミ視点〉








カオル「・・・ふふ…

  笑実ちゃんはいつも楽しそうだよね?」






花火大会の影響か…

電車の中は混み合っていて

カオル先輩と立ったまま電車に揺られていると

片手で手すりを握り

もう片方の手で私を支えてくれているカオル先輩が

急に笑い出した…






「・・・また…鼻歌うたってましたか?」





カオル「歌いそうないきおいの笑顔だったからね?」






恥ずかしくなって顔を下に下げると

カオル先輩は私の腰にある手をグッと引き寄せて

「そんなに嬉しい?」とクスクスと笑いながら

耳に唇をあてて小声で問いかけてきた…




今の自分の耳が真っ赤な事は分かってるし

カオル先輩が私の反応を見て揶揄っているのも…







( ・・先輩達は…皆んな意地悪だ… )






「・・・・去年は一緒に見れなかったので…

  嬉しいです……嬉しいですし…

  カオル先輩と一緒だと楽しいです」






そう先輩を見上げて言うと

カオル先輩は少しだけ目を見開いた後に

優しく微笑んでくれて






カオル「なんだかまた

  ヒョウの頬を抓りたくなってきたよ」





「今ですか?笑」





カオル「そう…去年の浴衣も可愛かったからね」






カオル先輩の言葉が嬉しくて

「ふふ…」と笑ってから

「抓っちゃだめです」と言った





去年は沙優ちゃんとドキドキしながら

電車に揺られていて…

電車の窓に反射して映る自分を

何度も大丈夫かなと覗いていて…





屋台の前で待っている時も

いつ現れるか分からない先輩達を

キョロキョロと探していて

打ち上がりだした花火の音を聞きながら…

ずっと待っていた…





すっぽかされたと分かり俯いたまま電車で帰り…

ヒカル先輩からルナ先輩達と一緒にいると聞き

余計に着飾った自分に虚しく感じ

唇を尖らせて沙優ちゃんのアパートまで歩いた…






「・・・・先輩達は…あの後きてくれましたから」





カオル「・・・・・・」






カオル先輩達が花火を買ってから

わざわざ会いに来てくれた事が嬉しかった…






「あの公園での約束も守ってくれましたから…笑」





カオル「・・・ほんと…困った子だね…」






そう言うとカオル先輩の顔が見えていた

私の視界は一気に暗くなり

唇によく知る柔らかい感触を感じていた…




周りから「見て」とひやかす声が聞こえてきて

カオル先輩は少し唇を離して

「見られてるね?」と少し可笑しそうに

私に問いかけてきたから…






「見られるのも…ひやかしも慣れました…笑」






そう笑って答えて…

もう少し唇の柔らかさを感じたくて

先輩の腰元の浴衣を軽く掴むと

「俺だけ見てたらいいよ」と言って

さっきよりも腰を抱き寄せられ

揺れる電車の中でカオル先輩だけを見続けた
























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