花火大会
〈コウ視点〉
シュウ「何時に出るんだ?」
ソファーに座ってヒカル達のゲームを後ろから
笑って眺めているカオルにシュウが問いかけると
カオルは時計に目を向けて
「笑実ちゃんが来たら行くよ」と言って
ヒョウに「下手くそだな」と言いながら
ゲームのコントローラーを取り上げている
コウ「着付けできる美容室がこの辺にあったんだな?」
今日は一年前にヒョウが笑実ちゃん達に
すっぽかしをくらわせた
あの花火大会の日でカオルは笑実ちゃんと
一年越しの約束を叶えてやる為に
二人で見に行くらしい…
ヒョウ「俺らも行く?」
カオル「先週行っただろ?笑」
ヒョウ「あれもデートみたいなもんじゃん?笑」
先週の花火大会はアキラ達が
花火の見える居酒屋を押さえてくれて
そこで保育士達と合コンをしていたが…
アキラ「半分は帰ったから来い」
花火が打ち上がる前に
半分近くが各々で別行動をしだし
アキラが笑実ちゃんとカオルを呼びだし
笑実ちゃんはカオルの膝に座って
窓から見える花火を見ていて…
その前の週は…
隣りの地区で上がる花火の音だけを聞き…
笑実ちゃんが「ビビるな」と
サトルから怒られながら揚げた
骨つき肉の唐揚げを食べて
「音だけの花火もいいな」と飲んでいた
( ・・・今日は浴衣だしな… )
コントローラーを取り上げたカオルは
グレーがかった黒い浴衣を着ていて
今近くの美容室で浴衣を着付けてもらっている
笑実ちゃんと浴衣デートをする為に
ユウトから借りたようだ
シュウ「まさかカオルも浴衣を着るとはな…笑」
俺の隣に来て笑いながら
小声で言うシュウに相槌をうち
「やる事もカッコイイなカオル先輩は」と
二人で揶揄っていると
ガチャッと玄関の開く音が聞こえ
笑実ちゃんが来たんだと分かった
シュウ「カオルの浴衣姿見て驚くだろうな?笑」
笑実ちゃんはカオルも浴衣を着ているなんて
知らないからきっと喜ぶだろうと思い
シュウとニヤつきながら扉の方を見ていると…
( ・・・・ん!? )
シュウ「・・・・・・」
コウ「・・・・・・」
入って来た笑実ちゃんを見て
想像していた浴衣姿とは少し違い
俺も…きっと皆んなも驚いている…
ヒョウ「・・・去年の浴衣じゃ…ないね?」
ヒカル「目…つけまつげか?」
ヒョウから聞いていた浴衣とは違い
少しレトロ感のある浴衣にアレ?ッと思っていると
笑実ちゃんはカオルの方を見て
「カオル先輩も浴衣なんですか?」と
顔を赤くしてカオルに近づいて行った
カオル「この浴衣どうしたの?笑」
「あっ…実は…」
笑実ちゃんが予約をしたのは
お洒落な美容室なんかじゃなく
近所にある床屋と美容室の間の様な
お婆さんが一人でやっている
小さな美容室だったらしく…
「娘さんが帰省してて…」
そこの娘が子連れでたまたま里帰りをしていて
その人の子供がみたらし団子を手で食べて
下の肌着を着付けている時に笑実ちゃんの浴衣で
手を拭いてしまったらしい…
「そのお家にあった浴衣を借りたんですけど…」
カオル「着付け…お婆さんがしたの?」
「いえ、帰省してた娘さんも美容師らしくて
少し前の和柄の浴衣をこんな風に着るのが
向こうで流行ってるって…してくれたんです」
笑実ちゃんの着付けの仕方はなんて言うか
浴衣の柄とは違って後ろの帯のアレンジが凝っていて…
ヒョウ「いや!可愛いよ!
頭もその都会の美容師さんでしょ?」
「はい…なんで都会って?」
カオル「メイクもその人かな?笑」
お洒落な美容室を予約しない所が
笑実ちゃんらしいしけど…
予想していた綺麗な仕上がりとは違い
笑実ちゃんの可愛い雰囲気を残した
このレトロな浴衣の方が似合っている気がした
( メイクもキツくないしな… )
中心部分にだけつけられたであろう
つけまつげは黒目上だけくりんッとしていて
目尻のライナーなどはほとんどぼかされている
カオルは時計を見てシュウにシャワー借りるよ
と一言いってから浴室へと行き
30分ほどで髪型をやりかえて出てきた
ヒカル「カオル先輩やっさしーい!笑」
カオル「うるさいよ…笑」
笑実ちゃんがカオル好みの綺麗めな感じで
仕上げてくると思っていたから
カオルもそれに合わせて
髪をセットしていたが
一度ワックスを洗い流して
笑実ちゃんに合わせた少し落ち着かせた
ヘアセットにしていた
( 浴衣も綺麗に着直したな…笑 )
ヒョウ「あー!そっちの方がいいね
さっきのままじゃ育ちのいいお嬢さんと
カッコいいヤンキーって感じだったしね?笑」
カオル「今はどうなわけ?笑」
ヒョウ「ちょっと品のいいヤンキーかな?」
ヒョウの例えになんとなく納得して笑っていると
カオルは「結局ヤンキーなの?」と
ヒョウにつっこんでいた
笑実ちゃんの手を引いて出て行く
カオルを見送りながら
「フッ…」と小さく笑い
パタンと閉まった扉に「良かったな…」と
幸せそうに笑っていた
笑実ちゃんの顔を思い出しながら呟いた
ヒョウ「なんか俺も浴衣の子とデートしたくなってきた」
ヒカル「・・・・行けばなんとかなるかもな…」
きっと笑実ちゃんとカオルを見て
羨ましくなったであろうヒョウとヒカルは
「花火大会に行こう」と言って準備をしだし
俺も少し感じていたその気持ちに
また小さく笑ってから準備を始めた
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