ファミレス

〈コウ視点〉










ヒョウ「チワワ遅いね?」





ヒョウが届いたオムライスを食べながらそう言い

俺も斜め上に飾られている時計に目を向けて

確かになと頷いていると

カオルがスマホを手に取り耳に当てたから

笑実ちゃんに発信しているんだろうと思っていると

「3歳のガキじゃあるまいし」と後ろの席に

座っているサトルの言葉が聞こえてきた







サトル「ちょっと遅い位で騒いで探したりするから

   調子に乗るんだよ…たく…」






ヒカル「その3歳に

   リンカーンの事指摘されたんだろ?笑」







ヒカルとヒョウはゲラゲラと笑っているが

後ろのサトルは眉を釣り上げながら

「あのガキ、ペラペラと…」と怒っている…






笑実ちゃんが電話に出ないようで

少し不機嫌顔になっているカオルを見ながら

サトルの言う…

笑実ちゃんが調子に乗っているは疑問だが

少し遅れた位で騒いで探しだすは

あながち間違ってないかもなと思っていると…





シュウ「カオル、お前のお姫様が来たぞ?笑」





窓の外を見て笑いながら

シュウがそう言うとカオルは窓の外に目を向け

俺もトンカツを一口頬張って顔を向けた






ヒカル「髪伸びたね…」

 




シュウ「ん?…確かにそうだな」







笑実ちゃんは小走りで

ファミレスの入り口側に走っていて

焦茶色の長い髪が少しだけ風で靡いていた





( 確かにに伸びたな… )





初めて会った時は肩位だったはずの髪は

今じゃ胸下辺りまであり

綺麗なロングヘアになっていて

伸ばしているのかなと思っていると

「あっ!」とヒョウが笑い出した






ヒョウ「来月の花火大会の為に伸ばしてるんだよ!」






アキラ「花火大会と髪がなんかあんのか?」






ヒョウ「去年たまたま会ったチワワ達に

   浴衣を選んでやって

   俺がチワワに言ったんだよ…」






シュウ「なにを?」






ヒョウ「浴衣ならカオルは髪を高くアップして

  頸を見せたヘアスタイルが好きだって言ったら

   チワワが自分の髪を触って

   長さが足りないって落ち込んでたからさ…笑」






ヒョウの言葉に「一年かけて伸ばしてんのかよ」と

またサトルの呆れた様な言葉が聞こえたが

入り口の方を見ているカオルの顔からは

さっきまでの不機嫌な表情が消え

もうそろそろ入ってくるであろう

笑実ちゃんを待って笑っている…






コウ「花火大会行くのか?笑」






カオルにそう問いかけると

顔を入り口に向けたまま

「去年から約束してるんだよ」と言い

本当に一年かけて伸ばしたんだなと

少し驚いていると

走って近づいて来る足音に

笑実ちゃんが来たのが分かった





「すみません、遅くなりました…」





カオル「ふふ…お疲れ様」





笑実ちゃんがカオルの横に座ると

カオルは笑実ちゃんの腰を一度自分の方に

抱き寄せてから「走って来たの?」と

ニコニコと笑って笑実ちゃんの長い髪を

耳にかけてあげていた





サトル「ファミレスでいちゃつくなッ…」





サトルは顔をコッチに向けて

「おい!」と笑実ちゃんを呼ぶと

ツカサが立ち上がって

箱入りの豆乳ジュースを笑実ちゃんに差し出した





ツカサ「噂の件…ありがとうな…」





「・・・・・・」





笑実ちゃんはツカサをジッと見上げた後

サトルの方に顔を移して小さく笑ってから

「私も…ありがとうございました」と言い

箱入りのジュースを受け取った






アキラ「サトル達に感謝してるって何をだ?」





サトル「そのジュースはツカサからで

   俺は1円足りともだしてねーぞ?」






笑実ちゃんは貰ったジュースを膝に置いて

眉を釣り上げているサトルに顔を向け

「カラオケ屋さんで…」と

少し眉を下げながら困ったように笑っていて…





「カラオケ屋?」とシュウ達が

不思議そうな顔をしている中

サトルとツカサは目を見開いて

驚い顔をしている





ツカサ「・・・・見えたのか?」





ツカサの言葉に笑実ちゃんは

「いえ…」と小さく顔を横に振り

自分の膝の上にある豆乳ジュースに

一度視線を落としてから





「ツカサ先輩のよく飲むコーヒー…

  私と一緒であまり人が飲まない物だから…」





ツカサ「缶コーヒーで分かったのか?」






どうやらゴールデンウィークの日に

里奈ちゃん達と楽しく行っていたはずの

カラオケはそうではなかった様で

たまたま2階の喫煙スペースでタバコを吸っていた

ツカサ達がそれを見ていたらしい…






「・・・・あの時は…助かりましたけど…

  缶ごと落としたら危ないですよ?」






笑実ちゃんがサトルの方を向いてそう言うと

サトルは「俺じゃなくてツカサだよ」と

眉を釣り上げて否定していたが

笑実ちゃんは「いえサトル先輩です」と笑っている





「ツカサ先輩は…優しいから

 缶コーヒーを落としたりはしませんよ?笑」





笑実ちゃんの言葉にツカサは

驚いた表情を見せたが直ぐに吹き出して笑い出し

「当たりだ!」と話だした






ツカサ「声が聞こえてきて覗いたら

   シュウの部屋で会った子がいたから

   しばらく立ち聞きしてたんだけど…

   建物の端に…えみ…ちゃん?が座ってるのが

   見えて何となく分かったっていうか…」






シュウ「・・・・・・」






ツカサ「俺も…まぁ…聞いてていい気分ではなかったけど

   どうしようかと思って眺めてたら

   急にサトルが俺の飲んでた缶コーヒーを

   取り上げて中身を溢しながら投げたんだよ…笑」






ヒョウが「想像できるね」と笑いながら

サトルの方に顔を向けると

サトルは顔を赤くして…






サトル「勘違いすんなよ!?

   お前を庇ったんじゃなくて

   ベラベラと煩いガキ達に黙るように

   落としただけなんだならな!」






アキラ「そっちのが問題だろ?笑」






サトル「別に助けたわけじゃねーし  

   俺に感謝とかするな、ツカサにだけしてろ!」






笑実ちゃんは「ふふ…」と笑って

「分かりました」と答えていたけど

サトルは「だから笑うな!」と

照れ隠しなのかずっと顔をコッチに向けて

笑実ちゃんに文句を言い続けていた

















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