一週間

〈エミ視点〉








4限目の講義が終わり

スマホに届いているLINEを見ると

カオル先輩からファミレスにおいでと届いていて

先輩に了承の返事を返してから

教科書をバックにしまった





( ・・・・一週間… )





先週の苦しかった金曜日から1週間が経ち

今までと変わらずに端の席で

一人で講義を受けているけど

先週までとは少しだけ違う…




週明けは流石に皆んな見てきて

何か言っていたけど

今までの視線とは少し違っていて

「いいなぁ…」と羨む声が聞こえていた

一日、一日経つと

前ほどは見られる事もなくなり

私が望んでた通りに

ほっといてくれるようになった





( 出席も…認めてもらえたし… )





先生達の間で話し合いが行われ

出席シートは廃止になって

しばらくは先生が点呼をとるスタイルに

変えられていて

最初は気まずさも感じたけれど

5日経つと慣れている自分もいた





教室から出て行く亜香里ちゃん達の姿が見え

この1週間学校に来ていない

沙優ちゃんの事を考えた…






サユ「やめてくださいッ…」






教室の入り口からそう叫んだ沙優ちゃんの顔は

赤くなっていて声も震えていた…





( ・・・・沙優ちゃん… )





カオル先輩に連絡をしてくれたのも沙優ちゃんで…

私が今こうしてここに座れているのも…

多分…沙優ちゃんのおかげだ…





( カオル先輩が来てくれなかったら… )





亜香里ちゃん達はあのバイトの事が

小さく噂になっていて

月曜日は学校を休んでいたけど

火曜日のお昼からは登校してきて

里奈ちゃんと二人で行動をしている…




亜香里ちゃん達と

こじれてしまったんじゃないかと

心配をしながら

バックを肩にかけて先輩達のいる

ファミレスに向かっていると

信号で肩を叩かれ振り返るとルナ先輩がいた






「ぁっ……お疲れ様です…」





そう言って軽く頭を下げると

ルナ先輩は口の片方だけを小さく上げて笑い

「ちょっといい?」と聞いてきた…




ルナ先輩は直ぐ側にある

スーパーの方へと歩いていき

中にある飲食スペースで話すのかと思っていると

店内へは入らず側面にある細いツーロに入っていく




( ・・・・どこに行くんだろう… )





草木のあるツーロを歩いて行くと

自販機が一台ありその横にベンチと

喫煙場所でよく見る灰皿が設置されていた






ルナ「好きなのいいよ」






ルナ先輩は自分のスマホを自販機にかざして

私にボタンを押すようにいい

「自分で買いますので」と財布を取り出そうとすると

「一月のお詫びだから」と背中越しに言われ

何のお詫びか分かり「すみません」と言って

水ゼリーのボタンを押した




ルナ先輩は私が下から取り出した

ペットボトルに目を向けて「美味しいの?」と

聞いてきたから「初めて飲むので…」と

答えると自販機をしばらく眺めて

私と同じ水ゼリーのボタンを押していた





出てきたペットボトルを手にベンチに座ると

「ここ従業員しかこないから」と言い

私にも座る様に隣りを軽く叩いた…





いいのかなと思いながら「失礼します」と言って

ルナ先輩の隣りにゆっくりと腰を降ろし

話ってなんだろうと居心地の悪さを感じていた





ルナ「・・・・カオルが教室に来たんだって?」





私は「はい…」と俯きながら答え

手にあるペットボトルを眺め続けていると

「あの日さ…」と…

ルナ先輩は、大学のカフェテリアで

私から離れるように先輩達の前で

話した事などを話しだした…






ルナ「俺と離れたら元に戻れんのって…

  あんなカオル初めて見た…笑」






長い前髪をかきあげながら

そう話す先輩は前に会った時よりも

少しだけ柔らかい印象をうけた…






ルナ「あたしも…皆んなも…

  こっぴどくフリに行くのかと思ってたんだけど」





「・・・・・・」





ルナ「カオルに…大事にされてるんだね…」





( ・・・知らなかった… )






もしあの日…

先輩が私から離れる選択をしていたら

どうなっていたのかなと少し考え

教室で皆んなと並んで講義を受けて

お昼も…前の様に学食で

笑って食べていたのかなと想像した…





( ・・・なんか…違う… )





去年の様な学校生活を想像してみたけれど…

講義中にカオル先輩から届くLINEや

お昼に一人の教室でランチバックから

お弁当を取り出していると

入れた記憶のないイチゴのゼリーや

カオル先輩からの小さなメモが出てくる

今の学校生活の方が…

とてもキラキラしている様に感じる…






ルナ「何にも悪いことしてないですって

   アキラに言ったらしいね?笑」

  




「・・・えっ…」





ルナ「確かにそうだなって思った…

   アンタは…チワワちゃんは

   ただカオルを好きになって

   そのカオルも…チワワを

   好きになっただけなんだよね…」






ルナ先輩は握っていたペットボトルを

顔の高さまであげてラベルを見ながら

「変わってるね」と笑っていて…






ルナ「ヒョウ達が茶碗蒸し楽しみにしてたよ」






カオル先輩の周りの人達は

やっぱり…温かい気がした…





















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