秘密

〈コウ視点〉









アキラ「ヒーローじゃねーか」





講義が終わり就職係に貼り付けてある

近隣企業の求人案内をに目を通していると

アキラとユウトも就職係にやって来た





シュウ「まぁ…ヒーローと言えばヒーローだな?笑」





シュウも揶揄うようにカオルに顔を向けて言うと

カオルは表情を変えずに「ツカサは?」と

アキラに問いかけていて

俺も気になっていたから顔を向けた






アキラ「教授には呼ばれたけど…」





シュウ「・・・・・・」





アキラ「飲み会ばっかりするからこんなデマが

  出回るんだって注意されただけだったよ…笑」






アキラは笑ってそう言うと

「ペットに感謝してたぞ」とカオルに顔を向けた






( ・・・・姉妹校だからな… )





カオルはあの日

笑実ちゃんに別れを告げに行ったんじゃなく

笑実ちゃん達のいる教室へと行き…

それはもう男前な事をしていて…笑

カオルから直接聞かなくても

直ぐに噂として俺たちの耳にも届いた




二日後の日曜日に笑実ちゃんね様子を見に

カオルのマンションを一人で訪ねると

笑実ちゃんは体調が悪く寝ていて…




ツカサとの噂はタダの噂だと

笑実ちゃんが教授に説明したと

カオルから聞いていたから

大丈夫だろうとは思っていたが…






コウ「豆乳ジュース買ってやれよ?笑」




アキラ「ふっ…箱ごと買って届ける様に伝えとくわ」




カオル「向こうもツカサとサトルに感謝してたよ」






カオルの言葉に皆んな一瞬理解が出来ずに

「感謝?」とユウトが首を傾けると

カオルも少し首を傾けて「してるらしいよ」と

小さく笑っていた






アキラ「自分のダチをこう言うのもアレだが…

   アイツらはお前のペットに

   感謝される様な事してねーぞ?笑」





シュウ「どっちかつーと…嫌いだろうな?笑」






ツカサの事はそうだろうし…

サトルなんて会うたびに嫌味しか口にしていない…


 



( ・・・なんの感謝だ? )





ユウト「笑実ちゃんの方はもう大丈夫なの?」





話しているときにカオルのスマホが鳴り

ポケットから取り出してスマホの画面を見て

「ふっ…」と笑うカオルに

アキラが講義中も音出してんのかと驚いていて

シュウが呆れた笑みを浮かべながら

「講義が終了した瞬間にサイレント切るんだよ」

と説明していた…






ルナ「卒業までまだあるし…講義もお昼も…

  ずっと一人きりにさせるつもりなの?」






ルナのあの言葉を聞いて

笑実ちゃんの手を離してあげるのかと思っていたが

カオルは笑実ちゃんを離す事なく…




笑実ちゃんはルナが言った通りに

一人で講義を受けて

お昼も一人で教室で食べているらしい…







カオル「・・・半年くらいだよ…」





コウ「半年?」





カオル「夏休みや冬休みをひいたら…

   学校自体はあと半年もないよ…」





コウ「・・・・・・」






キッチンで訪ねた俺にコーヒーを煎れながら

そう話すと手元のドリップコーヒーから顔を上げて

笑実ちゃんの寝ている寝室のドアに顔を向けた





半年だから頑張れって事なのかと思い

キッチンのカウンター部分にある

小さなカレンダーに目を止めた…





笑実ちゃんが書き込んだであろう

ゴミ出し日や

スーパーのお買い得情報を見ながら

笑実ちゃんらしいなと

手に取って眺めていると

カオルの癖のある丸のマークが

ある日にちにつけられていて

記念日か何かかと思いカオルに尋ねると

カオルは「あぁ…」と言って笑いながら

また手元のコーヒーに顔を戻した





( ・・・・なんだ? )





気になって次のページをめくると

また癖のあるマークはついていて

「ん?」と思いながらめくり続けると

最後の12月まで毎月ついていた…





( 日にちは違うし…記念日じゃないな… )





俺はそのマークが何なのかを理解して

カオルに顔を向けると

「コウは感がいいね」と笑っている…






コウ「・・・・俺の感が当たってるなら

   少しずつズレてる気がするんだが…」






俺がそう言うとカオルは吹き出して笑い出し

口に人差し指を当ててコッチを見てきた…





( ・・・・・・ )





隣りで講義中の笑実ちゃんに返事を返している

カオルを横目で見ながら日曜日の事を思い出し

反対側の就職係の掲示板に目を向けた…




カオルは…

笑実ちゃんに楽しい学生生活を諦めてもらい…

笑実ちゃんに対して可哀想だなとも感じだが…





( ・・・半年なんかじゃないんだろう… )





カオルが笑実ちゃんの手を離さなかったのは

自分と笑実ちゃんの先の未来が

半年なんかじゃなく…

もっと長く続くと感じたからこそ

手を離さなかったんだ…




少し間違った独占欲の様にも感じるが

これがカオルなりの

〝好き〟の形なのかもなと思い

あのカレンダーのマークの秘密には

気づかなかった事にしてやった…

















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