先輩達…

〈エミ視点〉










カオル「ニワトリが苦手な笑実ちゃんの為に

   クリスマスには毎年

   七面鳥じゃなくてステーキを焼いてくれる

   優しいお母さんが悲しむよ?笑」

   





カオル先輩の言葉で

先輩が少し前から扉の外で私が皆んなから

変だと言われていたのを聞いていたんだと分かった…






カオル「七面鳥食べた事ないの?笑」





「・・一回…あるんですけど…食べれなくて…」





カオル「味が嫌いなの?」





「・・・・私…ニワトリ嫌いなんです…」





私は…小さい時から鶏が怖くて…

直視出来ないくらいに苦手だった…





「普通の鳥料理は大丈夫なんですけど…

  七面鳥は…そのなんていうか…

  形が残り過ぎてるっていうか…はい…」





カオル先輩は私の話を聞きながら

ソファーに倒れこみ

「確かに鶏の方が笑実ちゃんよりも強そうだね」

と笑いながら揶揄ってきたから

ペシッと先輩の太ももを叩いて怒った…





カオル「クリスマスはケンタッキーとか食べてたの?」






「ケンタッキーは…地元になかったので…

  お母さんが…毎年お肉を…焼いてくれました…」






カオル「なんかそっちの方が

  クリスマスディナーって感じだね?笑」







教授の部屋に向かいながら

胸にあるファイルを更にギュッと抱きしめて

改めて自分の好きになった人が

カオル先輩でよかったと感じた…





頬に残る涙をハンカチで拭き取ってから

扉をノックすると「はい」と声が聞こえ

息を整えながら扉を開けると

教授は私の顔を見て驚いていたけど

カオル先輩の言う通りに

ノートを見せながら

ちゃんと出席していた事を説明した…





他の講義のページを見ながら

「一度預かっていいか?」と言われ

ファイルをパシッと閉じると

私の顔をジッと見てきた…






先「浜田先生から…変な噂があると聞いたが…」






先生は言いにくそうな顔をして

少し目線を外しながら

そう問いかけてきたから

ツカサ先輩との事だと分かった






「・・・隣りの大学の…4年生…で…」






先「・・・・・・」






「たまにジュースを買ってくれるいい先輩です…」






先「・・・・・・」






「・・・・クラスの皆んなとも距離ができて…

  間違った噂が流れてしまっているだけです」

  





あの事実を認めたくないのもあるけど…

私はツカサ先輩や…サトル先輩の方がよかった…

さっきまでクラスにいた皆んなよりも

カオル先輩の友達の方が…

温かい気がしたから…






サトル「はぁ!?ニワトリが苦手?」


   




ペペロンチーノを食べていると

カオル先輩がよく食べるガーリックソースの

グリルプレートを食べていたコウ先輩から

「一口食べるか?」と聞かれ

プレートの上にあった

チキンステーキに目を向けて

パッと顔を逸らすとアキラ先輩が

「なんだよ?」と

眉間に皺を寄せながら聞いてきた






お肉には鶏皮の部分もついていて

焼けた鶏皮にはプツプツとした

毛穴が見えているから

そこに鶏の毛があったんだと思うと…

妙に生々しくてやっぱり苦手だった…





( ・・・カットされてたらいいけど… )





スーパーでもカットされた鶏肉しか買わず

骨つき肉みたいなニワトリ感の残る

お肉はさけていた…






( ・・カオル先輩はいいよって言うけど… )






コウ先輩が食べているプレートをチラッと見て

骨つき部分も食べたいよねと考えていると

ユウト先輩が「クリスマスのチキンもダメなの?」

と聞いてきた…






鶏がダメだと話すと皆んな必ず

クリスマスは何を食べるんだと尋ねてくるから

普通は…やっぱりチキンなんだなと

改めて思いながら「うちは牛のお肉でした」と

俯きながら答えた…






一年生の時に亜香里ちゃん達と

初めてケンタッキーに行き

この事を話すと「牛!?」と

驚いて笑っていたから

サトル先輩にまた

バカにされるのかなと思っていると…






サトル「クリスマスに牛の肉?    

   お前の家はブルジョアかよ…」






とバカにして笑う事もなく

自分の目の前にあるハンバーグを食べながら

「俺も肉は牛派だな」と言っていた…






( ・・・・それに…先輩達は… )






私は少しだけ笑って

顔を上げると先生の目を見て

「噂はただの噂で優しい先輩です」と伝えた















  

  

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