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〈サユ視点〉
サユ「・・・なんで…」
学科のグループトークを見て
固まってそう呟き
笑実ちゃんのトーク画面を開いて
また手を止めた…
笑実ちゃんとの最後のやりとりは
あのゴールデンウィークの日の
待ち合わせ場所に向かう前で…
この後、私達の会話を聞いていた笑実ちゃんは
泣きながら陰から出てきて…
( ・・・・怒ってるよね… )
笑実ちゃんは私に気を遣って離れてくれたのに
里奈ちゃん達と一緒になって…
出席シートの事だって
自分は関係ないと思っていても…
いくら大丈夫かなと心配していても
笑実ちゃんからみたら私も
亜香里ちゃん達と同じだよね…
サユ「見て見ぬフリが1番酷いよ…」
笑実ちゃんがクラスで
あんな状態なのを見て知っているのに
アキラ先輩と話す時には
まるで今も笑実ちゃんといつも
一緒にいるかのように相槌をうっていて
サユ「・・・知ったらきっと…」
アキラ先輩は私をどんな目で見るんだろうと思った…
そして…シュウ先輩は…なんて思うのかなと
考えてはタメ息を繰り返していた…
次の日の朝目を覚ましたと同時に
自分の額が汗をかいているのを感じ
体を起こして目覚める瞬間まで見ていた
悪い夢を思い出し「気持ち悪い…」と呟いた
汗と一緒に憂鬱な気分を落とそうと
シャワーを浴びながら
2限目から行こうかなと思っていると
さっきの夢と一緒に笑実ちゃんの事が横切った…
「・・・ッ…沙優ちゃんッ…」
( ・・・・最低だ… )
慌ててシャワー室から出て
体にバスタオルを巻きつけて
ベッドにあるスマホへと手を伸ばし
笑実ちゃんに学校に来ない様にLINEを送った
時間を見ると1限目開始の40分前で
もう家を出たかもしれないと不安になり
急いで身支度を済ませて学校へと向かった
( ・・・・私は夢だけど… )
今日見た悪夢は…
暗い夜道を一人で逃げる様に走っていて
自分のアパートに逃げ込もうとした瞬間
知らないおじさんから
腕を掴まれた所で目が覚めた…
グループトークの中は
ツカサ先輩から笑実ちゃんが
襲われたという話で持ちきりで
誰も…笑実ちゃんを心配する様な
コメントはなく…
何も知らずに学校へと行き
あの日の事をまた言われるんじゃないかと
心配になって必死に走った
( あんな事思い出したくもないはずだ… )
教室に授業開始数分前に着き
席に座っている笑実ちゃんを見つけて
一瞬足が止まり駆け寄ろうかと思ったけれど
後ろの席から手招きをしている
亜香里ちゃん達の姿が見え
顔を俯かせながらソッチに足を向けた…
( ・・・・どうして私はいつも… )
去年のあのイヤラしいお店の時と
何も変わってなくて
亜香里ちゃん達の顔色ばかり伺って…
自分で自分が嫌になってくる…
出席シートが笑実ちゃんの席にまわると
隣りに座っている里奈ちゃんが
腕をトントンと叩いてきて
顔を向けると周りの子達も
それを見て笑っていて
どうしたんだろうと思っていると…
サユ「・・・・えっ…」
コッチに回ってきたシートを見て
しばらく周りの音が何も聞こえなくなった…
( ・・・・コレを…見たの? )
笑実ちゃんにゆっくりと顔を向けると
黒板に顔を向けていた…
リナ「泣くとかないんだね…」
隣りから「なんかつまんないね」と聞こえる声に
ペンを持つ手が小さく震え出した…
あの日の笑実ちゃんを見たら
そんな事とても言えないし…
こんな思いをさせる前に
電話をしてでも学校に
来させるんじゃなかったと後悔をした
( ・・・何で私はここにいるんだろう… )
本音を全く話せない
里奈ちゃんや亜香里ちゃんの隣りに座って
何をしているんだろうと胸が苦しくなった…
2限目が終わり里奈ちゃん達と
学食に向かいながらも他の学科の子達が
「あれ本当?」と亜香里ちゃんに質問してきて
さっきの事を笑って話している
亜香里ちゃん達にも…
それを笑って聞いている
目の前の子達にも…虫唾が走った…
この子達と一緒にいる事が怖くなってきて
そっと離れて誰もいない教室へと入り
スマホを取り出してシュウ先輩の番号を見つめた…
サユ「・・・ほんとに……ズルイ…」
この事を話して1番責めなさそうな
シュウ先輩を無意識に選んでいる自分に
また嫌になっていた…
シュウ先輩は胸の内では呆れても
表面には出さずにうまく隠してくれる…
でもアキラ先輩はそんな事はせず
きっと冷めたタメ息をついて私を軽蔑する…
( ・・・・だけど… )
この事を知って
1番私を責めるのはきっとこの人だ…
そして笑実ちゃんを救えるのも…
サユ「・・・きっと… 」
深呼吸をして息を整えてながら
カオル先輩へと発信した…
去年のバイト先に現れたあの日のカオル先輩は
本当に怖くて私にまであたってきていた…
交流会の日に笑実ちゃんを探して連絡してきた時も
電話越しでも分かる位に不機嫌で…
春からの笑実ちゃんの話を聞けば
カオル先輩はきっと今までにない位に怒るだろう…
カオル「もしもし…」
繋がったカオル先輩の声は
すでに冷たくて…
もう何か知っているのかと怖くなって
「あの…沙優です…」と言うと
カオル先輩は少し黙った後に
「いつから…」と聞いてきた
カオル「・・・・いつから一人なの」
カオル先輩の言葉に
やっぱり知っているんだと思い
「ごめんなさい」と泣きながら謝ると
「俺に謝ったって意味はないよ」と
淡々とした口調で言われ
全部話してと言う先輩の言葉通りに
2年生になったあの1日目には
カオル先輩の彼女だと知られていた事や
交流会の事、カラオケ屋での事…
そして出席シートの事も全て話した…
カオル先輩は呆れたタメ息を吐く事もなく
ただずっと黙って聞いていて
先輩が怒っているのがよく伝わってきた…
カオル「・・・・前に…
勝手にLINEを触ったら怒ってたよ」
サユ「・・・ぇ…」
カオル「友達の秘密もあるからやめてくれってね」
笑実ちゃんとよく一緒にいたのは私で
笑実ちゃんが誰の秘密を守ろうとしていたのかも分かり
また「ごめんね…」と小さく呟いた
カオル「今はどこにいんの?」
サユ「多分…教室です…」
カオル先輩がコッチに来るんだと分かり
大丈夫かなと不安にもなったけれど
今以上の最悪な状態なんて
きっとないと思いながら電話をきった…
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