最低…

〈サユ視点〉







ベッドに置いたままのスマホを手に取ると

LINEの通知数が30を超えていて

何だろうと不思議に思ってひらいてみると

新しくできた学科のグループトークに

笑実ちゃんとカオル先輩の写真があり

クラスの皆んながそれに対して反応していた






【 カオル先輩って趣味悪いよね 】




【 笑実ちゃんに合わせてダサくなってない? 】






言いたい事だけを言って

次々に通知されてくるトークに

タメ息を吐いて「大きなお世話だよ…」と

決して皆んなの前では言えない本音を呟いた…





写真の中の笑実ちゃん達を見て

うまくいっているんだと安心しながら

さっきまでアキラ先輩が座っていた

テーブルを見て何となく笑っている自分がいた





最近のアキラ先輩はよく…

笑顔を見せてくれる…

最初見た時は驚いたけど…

いつもがあの仏頂面な分

少しだけ可愛く見えていた…





アキラ「お前、アメリカのリンカーンの名言知ってるか?」





サユ「えっ??リンカーン?」





アキラ「サトルのバカがワシントンと間違えて

   カオルの犬に一枚とられてたんだよ…笑」





サユ「笑実ちゃんがサトル先輩を?笑」






前は終われば直ぐに帰っていたけれど

最近は少し話して帰って行くようになり

アキラ先輩と笑っている時間が楽しかったし…





( ・・・・楽しみにしてたり… )





襟元を引っ張って

この前新しく買った下着に目線を落とし

「好きじゃなかったかな…」と

一人呟いている自分に「ふふ…」と笑い

アキラ先輩に少しずつ…

惹かれていっているのが分かっていた






里奈ちゃん達に決して話せないし

前みたいに笑実ちゃんと

下着を買いに行ったりしたいなと思った






2日程して急に亜香里ちゃん達が

4人でカラオケに行こうと誘い

理由も…なんとなく分かっていた…







アカリ「カラオケ後にさり気なく頼んで

   シュウ先輩達の所に連れて行ってもらおうよ?」






亜香里ちゃんの言葉を聞き

やっぱりと思いながら

少し顔を下げていると…






アカリ「里奈だってヒカル先輩の事好きだったわけだし

   沙優ちゃんだって…ねぇ?」






シュウ先輩の事を言っているんだと分かり

小さく「うん…」と頷き

本当は行きたくなんかないと奥歯をギリッと

強く噛んでいたら急に上から缶コーヒーが落ちて来て

亜香里ちゃん達は「最悪」と怒りながら

トイレに走って行き

笑実ちゃんがもう来るかもしれないと

一人入り口に立っていると…





「・・・・ぁっ… 」





目に涙を溜めた笑実ちゃんが

奥の方から出てきて固まった…




( ・・・いつから…今の聞いて… )





笑実ちゃんは何も言わずに

私の前を走って行き

私も…呼び止める事が出来なかった…




( 泣いてた……当然だよね… )





あんな事聞いたら

私だって泣いてしまうに決まっている…




強い、強いと勝手に思っていた笑実ちゃんは…

私と同い年の…普通の子で…




クラスで浮いていても…

一人でお昼を食べていても…

笑実ちゃんは強いから大丈夫って

勝手に自分の都合のいい様に考えていた…





余計に拗れるかと思い亜香里ちゃん達には

笑実ちゃんがいた事を話さないでいると…




アカリ「なに!?無視??」





体調が悪くなったとか何か

送ってくるかと思っていたら

笑実ちゃんは誰にも連絡も返す事はなく…

連休は明けて余計に浮いてしまっていた…




( ・・・こんなつもりじゃなかったのに… )





笑実ちゃんなら…

波風を立てない様に何も聞かなかったフリをして

用事があると連絡をしてくるかと思っていたけど…





それも私が勝手に都合良く考えた事で…

笑実ちゃんはクラスの誰とも…

関わりたくないんだと分かった…





何も知らない皆んなは

カオル先輩と付き合っているから

調子に乗ってると怒っていたけど…





( 普通…嫌だよ… )





あんなの聞いたら…

一人の方がマシだって…

誰だって思うはずだ…





こんな自分嫌だし…

今の私をシュウ先輩が知ったら

どう思うんだろうと思った…





( ・・・・アキラ先輩も… )






出席確認のシートが回されてきて

自分の名前を書いている時に

ある事に気づいた…





( ・・・・アレ?? )






シートは笑実ちゃんのいる列から回ってきていて

笑実ちゃんの名前が書かれているはずなのに

笑実ちゃんの名前は無く…

ワザと回していないのかなと思っていると

笑実ちゃんは講義が終わった後に普通に出て行き…





( 名前書いてないの忘れたのかな… )





欠席扱いになるのにと心配していると

後ろの方から笑い声が聞こえてきて

亜香里ちゃん達が「やっぱり消したんだ?」と

話しているの聞いて(えっ…)と驚いた…





リナ「笑実ちゃんシャーペン使うもんね?笑」





アカリ「ペンなら修正テープとか使わなきゃいけないし

   最悪先生にもバレるからね?笑」





サユ「・・・・・・」





何回目なんだろうと思った…

もしも5回欠席したら試験は受けれないし

単位もモチロン貰えない…




私達は短大生の2年生で

この講義は必修科目だから…

もし、笑実ちゃんが知らずに休んだりしたら…





女「はぁ…最悪留年してほしいね…」





リナ「悪い事言ってるし?笑」





( ・・・全然笑えないよ… )





里奈ちゃん達は去年まで

一緒にカラオケに行ったり4人で

遊んだりもしていたのに…




皆んなの事を最悪だと思いながらも

何も言えない自分はもっと…

最低だと思った…













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