友達…

〈エミ視点〉









カラオケ屋さんに着くと

亜香里ちゃん達はまだ来てなくて

スマホをバックから取り出すと

数分前にカオル先輩から着信が入っていたようで

何か急用かと思い周りを見渡しても

まだ来る気配もないかなと

カラオケ屋さんの端の壁の方へと行き

先輩に発信した





カオル「ごめんね、もう楽しんでたかな?」





「いえ、今着いた所です」 





カオル先輩達は朝早くから少し離れたIKEYAに

ワゴンカーを借りて皆んなで行っていて

今は車の中のはずなのに…



 


「・・・・先輩…」





電話の向こうの音が響いていて

スピーカーになっている事に気付き

「先輩達…暇なんですか?笑」と笑うと

一気に笑い声が聞こえてきた





シュウ「最近…鼻がきくな?笑」





コウ「耳だろ?笑」





「お土産は何がいい?」と言う

カオル先輩にご当地ジュースがいいですと言うと

電話の向こうが騒がしくなったから

私のお土産で賭けをしていたんだと分かった






ヒョウ「チワワは漬け物って言うと思ったんだけど…」




 

「ふふ…私はまだ19歳ですよ?笑」






賭けに勝ったのはヒカル先輩だったようで

ご当地ジュースを買ってきてくれると

約束をして電話を切った





通話終了の画面を見て

「楽しそうだな」と呟くと直ぐに

【羽目外さないでね】と

カオル先輩からLINEが届き

先輩の言う〝羽目〟が 

スナックの事だと何となく分かった





スマホの画面を見ていると

後ろの方から里奈ちゃん達の声が聞こえてきて

皆んなの所に行こうとすると…





リナ「てか、本当に付き合ってたんだ…」





多分私の事を言っていて…

聞こえてきた口調や声のトーンからして

いい雰囲気じゃないような気がして足を止めた…






アカリ「写真見て驚いたよね?」





( ・・・・写真? )






数日前の詩織ちゃん達と会った日に

カオル先輩と手を繋いで歩いている所を

見たクラスの子が写真を撮って

学科のグループトークに送っていたようだ




私のスマホにある学科のグループトークには

そんか写真送られてきていないから

新しいグループトークが作られているんだと分かり

聞こえてくる会話に目を閉じた…






アカリ「カラオケ後にさり気なく頼んで

   シュウ先輩達の所に連れて行ってもらおうよ?」






( ・・・・今日…誘われたのは… )






アカリ「里奈だってヒカル先輩の事好きだったわけだし

   沙優ちゃんだって…ねぇ?」






「うん…」と小さく聞こえてきた声に

その場に沙優ちゃんもいるんだと分かり

腰を降ろして膝の上にトンッと自分の頭を乗せた…






リナ「でもずっと口きいてなかったのに

  許してくれるかな…イキナリすぎてバレない?」






アカリ「学校始まる前にコッチのグループに入れなきゃ!

   他の子達だって先輩達と仲良くなりたいから

   絶対に声かけてグループに引き入れるよ!」






( ・・・・入れる…引き入れるって… )





まるで〝物〟の様な言い方に「ハァ…」と

息を漏らしながら閉じてる瞼が震えていた…





リナ「だよね…あたし達は元々

  笑実ちゃんと友達だったわけだし

  カラオケに誘っても変じゃないよね?」






( ・・・・友達って…なに? )





瞼の裏側に数日前に会った

詩織ちゃんの顔が浮かんできて

「笑実の選んだ人ならいい人だよ」と

電話で言われた言葉が頭の中に聞こえてきた





アキラ先輩や…嫌いなサトル先輩だって

ツカサ先輩の為に「悪かったな」って

年下の私に謝ってきて…





ジン「今度はツカサが来ても…平気か?」





いつもは無関心で冷たいジン先輩が

茶碗蒸しを作っている私の側に来て

顔を下げてそう…聞いてきた…





ジン「アイツも茶碗蒸しとか…

   ばばくせー飯が好きなんだよ…」






「・・ッ… 」漏れそうになる声を

口に手を当てて抑えようとして

掌に当たる濡れた感触に

自分が泣いている事に気付いた…






アカリ「はぁ…遅くない?

   せっかく誘ってあげたんだから

   普通、立って待っとくべきだし…」






( ・・こんなの…友達なんかじゃない… )





真っ暗な視界の中でそう思っていると

「キャッ」と亜香里ちゃん達の声が聞こえたと同時に

カンッ…と何かが地面に落ちてきた様な音がした





アカリ「何!?コーヒー?」




リナ「髪にかかったし」





亜香里ちゃん達は上から落ちてきた缶コーヒーで

頭や洋服が汚れたらしくカラオケ店内に入って行き

皆んながいないうちに帰ろうと

手で涙を拭き取りながら立ち上がって

陰から出て行くと入り口には

まだ沙優ちゃんが一人で立っていた





サユ「・・・ぁっ… 」





沙優ちゃんは私を見て

目を見開いて驚いた後に

カラオケ店内にチラッと顔を向けて

里奈ちゃん達を気にしているのが分かり

私も何も話さないまま

自分のアパートの方へと帰って行った













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