現実
〈エミ視点〉
料理本を見ながら
「卵4つ…」と呟いて冷蔵庫を開けると
ピコンとLINEの通知音が聞こえ
扉を閉めてからスマホを覗くと…
【 ごめんね 】
と沙優ちゃんから届いているLINEを見て
大丈夫だよと返信をしてから
また冷蔵庫に体を向けると
今後は着信音が鳴り出し
沙優ちゃんかなと振り返り
画面に表示されている名前を見て
クスリと笑ってから通話ボタンを押した
「・・・・卵足りないから無理ですよ?笑」
ヒョウ「えー…卵買ってけばいいわけ?」
数分前にカオル先輩から
夕飯を尋ねるLINEが届いていたけど…
カオル「帰ってきてからの楽しみがいいから
夕飯はナニ?なんて質問はしないよ
もし届いたら100%ヒョウだね?笑」
以前カオル先輩が言っていた言葉を思い出し
また勝手にLINEを送ってきたんだと
可笑しくなって口の端が上がっていた
「容器もないから無理ですよ?」
ヒョウ「容器??」
ヒョウ先輩の声が少し遠くなり
「シュウ!茶碗蒸しの容器ってある?」
と聞こえてきてお皿と卵を持ってでも
来そうだなと思い料理本に目を落として
分量を計算しなおしていると
カオル「二人ぶんだけでいいから」
カオル先輩の声が耳に聞こえてきて
さっきよりも自分の口の端がキュッと
上がるのが分かった
後ろからヒョウ先輩の怒っている声が
聞こえているけど
カオル先輩は全く気にしてない様で
「もう直ぐ帰るよ」と優しい声が聞こえた
( ・・・・不思議だな… )
朝起きて…家から学校にいる時間の方が長くて…
短大生である私からすれば
お昼の学生生活の方が〝現実〟って感じなのに…
カオル先輩のこの部屋にいる時の方が…
19歳の…ただの〝私〟でいられる気がする…
学校が始まって2週間になるけど…
私の学生生活は去年とは…全く変わっていて…
リナ「カオル先輩の彼女って…笑実ちゃんなの?」
アカリ「バレンタインの日も…
シュウ先輩の家に行ってたって…」
シュウ先輩の部屋に来ていた
女の先輩から…少しずつ噂が広まっていたみたいで…
2年生になったあの…初日の日には
私だと分かってしまい
亜香里ちゃん達にも
自分の口で説明する前に…知られてしまった…
コウ先輩の言う通り…
私の学校にも…クラスにも…
カオル先輩と関係を持っていた子はいて…
中には…私の様に恋心を抱いていた子も沢山いた…
( ・・・・分かってた事だし… )
別に特別何かをされるわけでもないけど…
クラスの子達とも少し距離ができ
亜香里ちゃん達とも…離れてしまった…
アカリ「沙優ちゃんは知ってたの?」
サユ「えっ?」
アカリ「だっていつも一緒にいたわけだし…
沙優ちゃんもシュウ先輩と付き合ってるの?」
サユ「・・・・それは…」
今の私は…学校で…
少し…変な目立ち方になっていて
私と一緒にいれば沙優ちゃんもクラスで浮いてしまうし
学食とかでもジロジロと見られてしまう…
だから…私と沙優ちゃんは学校では
以前の様に話さないし
一緒にいる事もなくなっていて…
さっきみたいにLINEや電話だけをしている…
コウ「学校はどうだ?」
コウ先輩は噂を知っているのか
学校が終わってシュウ先輩の部屋にいる
カオル先輩を迎えに行くと
いつも眉を下げて小声で聞いてくる
ヒョウ「俺たちも茶碗蒸し食べたいし!」
カオル「回転寿司屋にでも行きなよ?笑」
電話から聞こえてくる会話を聞きながら
先輩達の方が友達みたいだなと思い
何となく笑ってしまった
「カオル先輩…早く帰って来てくださいね?笑」
カオル「ヒョウを振り切って早く帰るよ」
先輩の言葉を聞いて「ふふ…」と笑いながら
電話を切って冷蔵庫から卵をパックごと取り出して
振り切れずについて来るであろう
先輩達の分の茶碗蒸しも作りだした
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