存在…

〈コウ視点〉








ヒョウ「ちょッ!・・・ハハッ・・」





ヒカルが実家から帰省してきて

地元酒を買い込んで来たから皆んなで味見をしようと

シュウの部屋で集まっているとずっと返信が返って

こなかったヒョウが騒ぎながら玄関から入ってきた





ヒカル「誰か連れて来たのか?」





玄関からヒョウ以外にも誰かいるようで

ツカサ達とどっかで会って連れて来たのかと思っていると

「カオルもいるよ」と聞こえ

スマホを触っていたカオルが顔を上げて

ドアの方に顔を向けたが

ヒョウは玄関で笑ったまま中々入って来ない





シュウがドアを開けて玄関の方を見て

「連絡ついたのか」とカオルに顔を向けてきて

ヒョウと一緒にいるのが笑実ちゃんだと分かり

カオルはスッと立ち上がって

玄関の方へと歩いて行った





コウ「・・・・・・」





ヒカルはご当地限定のノンアルジュースも買って来ていて

カオルに笑実ちゃんも誘う様に言っていたけど…

ヒョウ同様、LINEが中々既読にならなくて

ずっとスマホを片手に前髪をかきあげては

少しイラだったタメ息を吐いていた…





( あの顔じゃ連絡はついてないな… )





廊下に歩いて行く時のカオルの顔を見て

面倒くさい事はゴメンだぞと

シュウの部屋にあった野菜を適当に入れて作った

寄せ鍋を混ぜながら思っていると…





シュウ「そっ…そりゃーお祝いしなきゃなッ!!笑」





険悪な雰囲気を心配した玄関から

シュウの豪快な笑い声が聞こえてきて

ヒカルと顔を見合わせると

「おしゃべり」と笑実ちゃんの泣く様な声が

聞こえてきてまたヒョウが

変な事をバラしたのかと思った





ヒョウとシュウが笑いながら部屋に入ってきて

少し後に笑っているカオルに手を引かれながら

顔を真っ赤にして涙目になっている

笑実ちゃんも入ってきた





ヒカル「またヒョウに泣かされたのか?笑」






ヒョウ「いやいや!今回は違うよ

   俺はむしろアドバイスとかしてあげたし

   感謝される立場だよ?笑」





コウ「アドバイス?」





笑実ちゃんがヒョウの服を引っ張って

「止めてください」と更に泣いているのを見て

またバストアップの本を買ってるのでも

見つかったのかと思い笑っていると





シュウ「Cカップになったお祝いに乾杯しようぜ」





と言うシュウの言葉に俺もヒカルも

一瞬固まった後に笑実ちゃんを見て

「ん?」と顔を傾けていると、ヒョウが

「美保ちゃんの店で測ってもらってたんだよ」

と言ってテーブルの前に腰を降ろしてきた





ヒカル「C?」





ヒカルは疑う顔で何度も

「C?」と連呼していると…





ヒョウ「骨が小さいから

  普通のCより小さいみたいな事言ってたよ?」





シュウ「アンダーの事だろ?」





笑実ちゃんはカオルの背中に顔を隠して

泣いている様だがヒョウ達は気にする事なく

ゲラゲラと笑っていて…

中々サイテーな先輩達だなと思った





ヒカル「豆乳買い与え続けて良かったよ!笑」




ヒョウ「今度カオルから学食奢ってもらおうぜ」





カオルは癖である前髪をまたかき上げる仕草をして

「全員分なの?」と笑っていて

さっきまでの不機嫌顔はすっかり消えている





恥ずかしがってカオルの背中から

顔を出さない笑実ちゃんに

ご当地ジュースがある事を伝えると

おずおずと顔を出してきて

顔を俯かせたままカオルに引っ付いて

鍋の前に腰を降ろした




最初は揶揄うヒョウ達に

泣きながら怒っていたが段々と涙も止まり

いつもの様にカオルの隣で

マスコットの様に座っていた





シュウ「笑実ちゃん達は

  明後日から学校始まるんだろ?」





ヒカルの買ってきた苺味の

ご当地ジュースを飲みながら

首を縦に振っている姿を見て

すっかり馴染んだなとフッと笑った





俺たちが女の子と一緒に飲んだりするのは

飲み会や合コンばかりで

こんな風にただ食事をするだけの席に

笑実ちゃんの様な女の子がいるのは

去年まではなかった事だが…





コウ「学校もカオルの家から通うのか?」





俺の質問に「そうだね」と答えたのは

カオルの方で笑実ちゃんはカオルの答えを聞いて

少し照れた様に下を向いてまたジュースを飲んでいる





付き合いだしてから…

まぁ…あの時はツカサ達の事もあったからだろうが…

カオルは笑実ちゃんを自分の家に泊め続けていて

試験を終えた後のこの春休み期間はずっと

同棲生活の様に一緒に暮らしていた





ヒョウがたまに「手料理食べたい」と言って

笑実ちゃんをここに呼び出したりもしていて

笑実ちゃんが俺たちの集まりに

顔を出す事は珍しくなくなり

誰も気にとめていなかった





ヒョウ「チワワ!シメは雑炊がいい」




ヒカル「卵と海苔入れて優しい味付けにして」




シュウ「あぁ!言ってた、だし醤油買っておいたから

   好きに使って味付けしていいからな?」






笑実ちゃんは…

俺達にとってペットで…マスコットで…

妹みたいな感じで…





( ・・・・たまに寮母みたいなんだよな… )





「作った後片付けしてないんですか!?」




キッチンへと行き

溜まった洗い物を見て「えっ!」と文句を

言っているのが聞こえるが…






コウ「悪い…雑炊は米柔らかめなのがいいわ…」






2歳も年下の笑実ちゃんに

寮母みたいな真似をさせて悪いとは思うが

俺たちの要望通りの雑炊を作ってくれる

笑実ちゃんは…なんと言うか居心地が良かった…





多分シュウ達もそうなんだろうと思い

出された雑炊を食べながら「美味いな」と言った










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