柚茶

〈エミ視点〉








( ・・・・・ )






沙優ちゃんの部屋に入り

フワッと鼻を掠めた香りに一瞬驚いたけれど

ヤッパリ勘違いなんかじゃなく

アキラ先輩と会っているんだと思った





サユ「何飲む?」





キッチンから顔を出して

ニコニコとした笑顔でそう問いかけてくる

沙優ちゃんに「うん」と頷くと

「寒いから柚茶にしようかな」と言って

またキッチンへと消えて行った





荷物を置いてテーブルの前に座ると

目の前にあるベッドに目線がいき

何となくパッと顔をそらせて

昨日来たのかなと思いながら

テーブルの上にあるコースターを手にとった






( ・・・・アキラ先輩… )





アキラ先輩には何度も助けてもらっているし

悪い人じゃないのは分かっているけど…

一昨日の飲み会で「ブスばかり」と

文句をいいながらもそれなりに楽しんでいた…





( シュウ先輩も…寝室に行っていたし… )





シュウ先輩達は私の前で

沙優ちゃんの話題をふってこなくなったから

きっとそれがシュウ先輩の答えなんだと思い

私もふれないままにしているけど…






サユ「おまたせ!お菓子は

  甘いのと塩っぱいの両方あるからね」






そう言ってスナック菓子とチョコレートを

出してきた沙優ちゃんに「ありがとう」と言って

マグカップの中の柚茶を飲むと

柑橘系の爽やかな甘さが口に広がり

「コレ美味しいね」と沙優ちゃんに笑いかけた





サユ「気に入ってくれたなら良かった!」




「このお茶は…沙優ちゃんみたいだね?笑」




サユ「えっ?笑」





「優しい甘さも似てるし…柚の爽やかさが

 元気で明るい沙優ちゃんみたいだなって思って?笑」






マグカップを両手で握って

そう話すと沙優ちゃんの笑い声が聞こえなくなって

嫌だったかなと顔を向けると

「笑実ちゃんは…苺ミルクだね?」

と照れた様に笑っていた






「それは豆乳ジュースのイメージでしょ?笑」





サユ「それもあるけど…

  笑実ちゃんは可愛いから…笑」






沙優ちゃんはそう言うと

ポテトチップスの袋を開けて

「カオル先輩のヤキモチは治まったの?」

と揶揄うように聞いてきて

シュウ先輩やアキラ先輩の名前にはふれずに

ケーキを作った話や…






「・・・・胸がね…ちょっと…」





サユ「ん!?大きくなった?笑」





「・・・・おすすめの体操があるの…」






沙優ちゃんも胸を大きくしたいと言っていたから

あの体操をおすすめしようとすると

「おっぱい体操の事?」

と言いながら笑い出し

なんで知っているのかも分かり…




「ホントにおしゃべり…」と

ヒョウ先輩の顔を思い出して呟いた…









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