羨ましい…

〈サユ視点〉







笑実ちゃんがゴメンねと謝ってきている

グループLINEに二人が返事を返していない事に

「はぁ…」とタメ息をつきながら

まだ返事をしていない臆病な自分にも

嫌気を感じながら顔を上げて

また大きなタメ息を落とした…






アカリ「出たくないなら

   最初から言ってほしいよね…」





リナ「お客さん達にも来るって伝えたのに…」






笑実ちゃんが帰った事に

亜香里ちゃん達はあまりよく思ってなくて…

グループLINEにもわざと何も

返していないんだろうと思いながら

「春休みで良かった」と呟いた…





サユ「・・・・はぁ…」





去年のハッスルの時もだけど

笑実ちゃんは真っ直ぐと自分の考えを持っていて

ハッキリと「やめる」や「帰る」と言えて

いいなと羨ましく思っていた…





スナックのお手伝いは…

まぁ…楽しいけれど…

出たいかと聞かれたら答えはノーだった…





足を曲げて自分の膝の上に顎を乗せ

「いいなぁ…」と小さく呟いた…





スナックに出ると返事を返していたのは

カオル先輩だったみたいで

前のようにヤキモチを妬いたんだろう…





里奈ちゃんがタバコを買いに行った時に

シュウ先輩達に会ったと聞いて

クリスマスの時みたいに来てくれるんじゃないかと

一瞬淡い期待を持ったけれど…





( ・・・・また飲み会… )





スナックの後に里奈ちゃん達とカラオケ屋に行き

二人が笑実ちゃんの事を話している時に

何も言えずにドリンクを飲む事しか出来ず…





カオル先輩とは仲直りできたと

心配をしてLINEを送ると

大丈夫だったという返事を見て

ホッとしている自分もいたけれど…





シュウ先輩はカオル先輩じゃないし…

私は笑実ちゃんじゃないんだと改めて感じた…





笑実ちゃんにはカオル先輩がいるし

里奈ちゃん達はバイト中だし…

会いたいシュウ先輩とは会えなくて…





一人で部屋にいる自分が無性に寂しく感じ

手に握っているスマホを操作して耳に当てると

LINEの発信音が鳴っていて

プツッと切り替わる音の後に

「なんだよ」と不機嫌な声が耳に届いて

目を閉じて「暇ですか?」と言った…





本当に聞きたい声は違うし…

本当に…会いたい人も違う…





だけど寂しい自分に

〝寂しくない〟と思わせる為に

アキラ先輩に電話をしている…






アキラ「時間ねーから直ぐに帰るからな?」





サユ「・・・・いいですよ…」






( 笑実ちゃんが…羨ましい… )










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