幸せ

〈エミ視点〉







既読マークが一つしかついていない

グループLINEを見て小さくタメ息を溢すと

「んっ…」とカオル先輩の声が聞こえ

パッと振り返るとその目は閉じられていて

まだ眠っているようだった





毛布から肩が出ているのを見て

首の上まで毛布をかけてあげると

寒かったのか顔を毛布の中にもぐらせている





「風邪ひいちゃいますよ…」





小さく笑ってからそう囁き

カオル先輩の頭を撫でながら

自分の手首に長い袖元が

ダランとなっているのを見て

更に口の端が上がった





カオル先輩は上半身裸のままで寝ていて

昨日のお風呂後に先輩が着ていた

スエットのトップスは私が着ている





昨日の夜の記憶が途中からないから…

また寝てしまったんだと思い

いつもの様にカオル先輩が

自分の服を私に着せてくれたんだろう…






目を覚ました先輩に

朝ごはん替わりに昨日作った

ガトーショコラとコーヒーを差し出しながら

どうしていつも先輩の方の服を

着せてくれるのかを質問した…






カオル「俺の服の方が着させやすいからね」





「大きいからですか?」






カオル「そう、寝てる笑実ちゃんの

   腕とかを引っ張ってると…

   なんか…壊しちゃいそうで怖いから…笑」






「・・・・・・」






カオル先輩の言葉を聞き

ジーっと先輩の顔を見ていると

私の言いたい事が分かった様で…





カオル「壊れてないでしょ?」





「・・・・・・」





カオル「笑実ちゃんの身体の事は   

   俺の方がよくわかってるよ?笑」






先輩は「ふふふ…」と笑いながら

赤くなっている私の顔に手を当てて

「風邪ひいちゃったのかな?」と

揶揄い続けている…





カオル先輩は優しくて…イジワルで…

それはベッドの中でも変わらず…






「・・・・ちゃんと…

  おやすみなさいって…言いたいです…」






最近はよく知らないうちに眠ってしまう事が多くて

カオル先輩から腕枕をされながら聞く

「おやすみ」が聞けていなかった…





先輩は「んー?」と笑いながら

ガトーショコラを小さく切ってフォークに刺すと

私の方に差し出してきて

私が口を開けるのをまっているんだと分かり

小さく口を開けるとクスッと笑って

ケーキを口の中に届け…






カオル「笑実ちゃんは素直だから…どうかな?笑」






と言ってもう一度

フォークにケーキを刺して自分の口に運んでいる…






「・・・・先輩に腕枕されながら…

   話とかも……したいです……」





カオル「・・・・・・」






カオル先輩の顔を見つめてそう言うと

先輩は口の中をモグモグと動かしながら

コッチをジッと見てきて

マグカップを手に取り

コーヒーを一口飲むと「いいよ」と

ニッコリと微笑んでくれた






「ホントですか?」





カオル「笑実ちゃんに嘘はつかないよ?笑」






カオル先輩の言葉に

自分の顔がだらしなくニヤけて

いくのが分かり両手で口元を隠して笑っていると

先輩はまたケーキを刺したフォークを差し出し

「おかわりしようかな?」と言って笑っていて…





少し前に吐いたタメ息を忘れてしまう位に

先輩との幸せな時間を過ごしていた







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