〈エミ視点〉








スマホを手に握り数歩前にある

シュウ先輩のアパートに目を向けて

何度目かになるか分からないタメ息を吐いた





( ・・・・いきなり行っても… )





あの後、体調が悪いからと

里奈ちゃん達に謝ってから一人で

シュウ先輩のアパートまで歩いて来たけど

カオル先輩も…楽しんでいるはずだし

私が現れたら他の先輩達も困るんじゃないかと思い

インターフォンを押せないまま

1時間近く経っていた…





「・・・・早く…謝ればよかった…」





そう呟いて顔を下に下げていると

「またかよ…」と後ろから聞こえ

パッと振り返るとアキラ先輩がいた





アキラ「入るなら入れよ」





そう言って私の横を通りすぎると

ロックを解除して中に入っていき

動かないままでいる私に

「早くしろ」とオートロックの開いた

ドアの前に立っている





「・・・・でも…」





アキラ「カオルに会いに来たんだろ?

   中にいるから早く来いよ」





ヤッパリ中にいるんだと分かり顔を俯かせると

アキラ先輩の面倒くさそうなタメ息が聞こえ

「お前は彼女なのか?ペットなのか?」

と言ってきた…





「・・・・かの…じょです…」





アキラ「それなら早く着いて来い」





アキラ先輩はそう言って中へと歩いていき

私も慌ててドアの向こう側へと

小走りで入って行った





「・・・・買い出し…ですか?」





アキラ「まだ始まって2時間も経ってねーのに

   なんの買い出しがあんだよ…」





「・・・・そう…ですか…」





気不味くて全然会話が続かず

今からカオル先輩にどんな顔で

会えばいいのかも分からなくて

顔を下に向けて歩いていると

「喧嘩でもしたか?」と聞かれた





「・・・・・・」





アキラ「体操の効果がなくてか?笑」





「・・・今日も女の子がブスばっかりなんですか?」





相変わらず性格の悪い先輩だなと思いながら

以前焼肉屋で遅れて行く飲み会の理由が

コレだったなと思い出してそう問いかけた





アキラ「分かってんじゃん?笑」





「・・・・・・」





沙優ちゃんの趣味が少し分からないと思い

チラッとアキラ先輩の顔を見上げると

「なんだよ?」と不機嫌顔で睨まれ

まだシュウ先輩の方がいいと思った…





部屋の鍵は開いているみたいで

ドアノブを回すと直ぐに開いたドアに

無用心だなと思いながら

アキラ先輩の後ろを歩くと

リビングの明かりが既に消えているのを見て

思わず足を止めた…





( ・・・・帰った方が… )





アキラ先輩も立ち止まって

顔をコッチに向け

「怖いか?」と聞いてきた






アキラ「中を見るのが怖いか?」





「・・・・・・」





アキラ「お前は彼女なんだろ?

   なら中にいるのはお前の彼氏だろうが」





「・・・・・・」





アキラ「堂々と中に入って

   もし他の女といちゃついてたら奪い返せよ?笑」





「・・・・・・」





アキラ「カオルの事が本当に好きなら入れ…

   怖くて、自分が一番なら今すぐ引き返せ…」






怖い気持ちは正直あるし

中に入って奪い返す勇気も度胸もないけど…





( ・・・・謝らなきゃ… )





ちゃんと直ぐに断らなくて

ごめんなさいって

謝りたいし…




勝手にLINEのページをひらいたり

勝手に返事を返した事の

文句も言いたかった…







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