〈エミ視点〉







パチッと部屋の電気をつけて

荷物を床に置いてから窓を開けて換気をした…






「・・・・はぁ… 」






自分の部屋を見渡しながら

小さくタメ息を吐き

コートのポケットからスマホを取り出し

カオル先輩から何も連絡がきていない事に

肩を落とした…





( ・・・・ご飯食べてくれたのかな… )






あの後、先輩は寝室から出てきてくれなくて…

私が部屋にるとずっと

出てきてくれない様な気がしたから

脱衣室にあったメイク道具や化粧品だけを

バックに詰めて自分の部屋に帰ってきていた…





ピコンッと聞こえたスマホに目線を落とすと

沙優ちゃんから「いいの?」と

心配するLINEが届いていた…





「・・・・よくない…けど… 」





そう呟いてまた「はぁ…」とタメ息を吐いて 

カオル先輩が勝手に返事を返した

グループLINEのページをひらいた…





明後日は…2月14日で…

亜香里ちゃんからまた

お店のお手伝いに来て欲しいと届いていて…






【 ママが入院しちゃって…

   配るチョコはお店で準備するから

    クリスマスみたいに手伝ってもらえないかな? 】






あのお仕事は自分には向かない気がするし

知らない人と長時間話すのも慣れない…




( ・・・・それに… )




バレンタインは先輩と一緒に過ごしたかった…





だから普通なら直ぐに断るけれど

ママさんが入院したという文が気になって

どうしようかと悩んでいる時に

カオル先輩から声をかけられた…





私が悩んでいるのが分かり

あんな風に怒ったんだろうけど…






「・・・・勝手に返事しないでくださいよ…」






スマホを見せてと言われた時も

内心驚いたし、いい気持ちではなかった…





スマホを見るのはマナー違反だと思うし

見られたくない物の一つや二つ…

きっと誰にだってあるはずだ…





私も先輩のスマホの中は…

正直見たくなかった…





先輩は私と付き合うギリギリまで

合コンや飲み会に参加していて

沢山の女の子達の連絡先を知っているだろうし

連絡だって送られてきているだろうから…





付き合い出してから

毎日の様に一緒にご飯を食べて

先輩の腕の中で目覚める日々だったけど

いつか必ず自分のベッドで

一人で目覚める朝がくるだろうと不安もあった…





先輩が私のどこを

好きになってくれたのかも

分からないし…





毎週…毎日のように遊んでいた先輩が

私では満足できずに

飽きしまうんじゃないかと怖かったから…





里奈ちゃん達は

まさか別の誰かが

返事を返したなんて思うはずもなく

【ありがとう】とお礼と一緒に

バレンタインイベント用の

服の指定が送られてきている…





「・・・・カオル先輩のせいですからね…」





自分が悪い事も分かっていたけれど

先輩に対して怒っている部分もあり

素直に「ごめんなさい」と送れないでいた…







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