〈エミ視点〉








「・・・・せん…ぱい?」





抱きしめられている腕の中で

そう問いかけてみたけどカオル先輩からの返答はなく

目の前の胸板が規則正しく動いているのが見えるから

きっと寝ているんだろう…






カオル「試験終わるまで

   笑実ちゃんは俺の家に泊まるからね」






カオル先輩の試験も昨日で終わり…

そろそろ自分のアパートへと

帰らなくちゃいけないなと思った…





ツカサ先輩達の家が

私と同じ方面だと知っていたから

昼間も…ずっと帰っていないままだったけれど

いつまでもカオル先輩の部屋にいるわけにもいけないし





( ・・・・3週間以上帰ってないしな… )





シーツとかも一度洗いたいし

今日のお昼にでも帰ろうかと思っていると…





カオル「今日もお鍋にしようか?」





遅い朝ご飯を二人で向かい合って食べていると

カオル先輩がシュガートーストを片手に持って

そう問いかけてきたから「え…」と

小さく口にすると、先輩はトーストを頬張りながら

「鳥の水炊きがいいね」と言って

手についた砂糖をペロッと舐めていた…





( ・・・・今日まで泊まるのかな… )





カオル先輩は優しいから

試験までと言っても直ぐに追い出す様な事は

しない気がして明日辺りなのかなと思った…





何も答えない私の方へ目を向けると

「違うのがいい?」と首を傾けて

あのあざとい上目遣いで聞いてきたから

「水炊き…好きです」と言って

その日の夜もカオル先輩の腕の中で眠りについた





次の日もカオル先輩はお昼から

「一緒に映画を見ようか」と言ってきて

私の苦手なホラー映画を再生しだし…




開始早々、怖そうな雰囲気のシーンに

慌てて耳に手を当てて目を閉じると

手が耳から離されダダンッと怖そうな効果音が

耳に響いてきて目を開けて

私の両手を握っている先輩に顔を向けた





カオル「ちゃんと見なきゃ

  映画鑑賞にならないでしょ?笑」





「・・・・・・」





カオル「手は繋いでてあげるから…ねっ?笑」





テレビの画面を見る様に促されているのが分かり

「怖いです…」と呟くと

カオル先輩はクスリと笑って

私を自分の前に座らせて後ろから抱きしめると

「ほら…怖くないよ」と言って

私の顎に手を当てると

クイッとテレビの方へと顔を向かせた…





カオル先輩がわざと

ホラー映画を見せようとしているのが分かり…





「・・・夜…寝れなく…なります…」





( ・・・・ズルイな… )





カオル先輩が私にこの映画を見せようとしている

理由は分かっているのに

そんな事を口にしている私も…




この言葉を言わせる為に

子供みたいな意地悪をしてくるカオル先輩も…






( ・・・・お互い…ズルイ… )






カオル「一緒に寝たらいいよ?」






カオル先輩の声は少し意地悪で

楽しそうな声色をしていて…

やっぱりズルイ先輩だと思っていると




右耳に柔らかい感触を感じ

「ねっ…?」と先輩の囁く吐息に

身体をギュッと反応させながら

「はい」と返事をしていた…



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る