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〈エミ視点〉
サトル「おい、なげーよ!」
ヒョウ先輩の背中を叩いていると
廊下側のドアがバッと開いて
サトル先輩が怒って部屋に入って来たから
思わずカオル先輩の背中にまわって顔を隠した…
サトル「・・・・なんだよ…」
「・・・・・・」
サトル先輩は、多分…私の事を
あまりよく思っていない気がする…
いつも言葉がトゲトゲしいし…
ジン先輩は無関心の冷たさだけど
サトル先輩の私への冷たい態度は
明らかに敵意が入っているから…
サトル「・・・・・・」
アキラ「謝りに来たんだろうが?」
サトル「・・・分かってるよ…」
どう見ても謝る態度でも
悪いと思っているような態度でもないな
と思って見ていると
サトル先輩は私の視線の意味を理解したのか
眉をピクリとさせてコッチを見ているから
カオル先輩の背中に顔を埋めた…
カオル「・・・・ツカサは?」
サトル「連れてくるよ…」
サトル先輩はそう言って廊下に歩いて行くから
ツカサ先輩と二人でずっと寝室にいたんだと思った…
( ・・・・寝室… )
あの部屋はカオル先輩との
楽しい思い出もある場所だけど
思い出したくない記憶もある場所で
出来れば見たくないし
今すぐにでも帰りたかった…
カオル先輩の背中に顔を埋めていると
「笑実ちゃん手」とカオル先輩の声が聞こえて
肩に置いてある手をカオル先輩の腕の方に伸ばすと
ギュッと重ねられる感触がした…
リビングに近づいて来る足音に
顔を上げれないでいると
知っている音楽が聞こえてきて
閉じていた瞼をパチっと開いた
( ・・・・カオル先輩? )
聞こえている音楽は
目の前にいるカオル先輩の場所よりも
もっと離れた場所から聞こえてくるし…
なによりもこの曲は
悪役になるからやめたとカオル先輩が言っていた
曲だったから不思議に思っていると…
ヒカル「何度聞いてもウケる歌詞だよな?笑」
ヒョウ「試験中に
流れ出した時は何かと思ったよ!笑」
「・・・・えっ?」
休憩時間にカオル先輩が
ツカサ先輩の着信音を
あの一緒に見た映画の
悪役のテーマソングに勝手に変更して
サイレントモードもOFFにしてしまい
試験中にあの曲が大音量で流れだしたらしい…
サトル「クラス中が笑いだして
教授は怒り狂ってツカサを追い出すし…」
カオル「再試受けるだけだろ?笑」
サトル「・・・・とにかく!
罰は受けたんだから…許してやってくれよ…」
「・・・・ってくれたら…」
サトル「・・・・なんだ?」
「・・・・二人で…
その曲を…歌ってくれたら…許します…」
正直…
ツカサ先輩もサトル先輩も嫌いだけど…
カオル先輩がツカサ先輩への罰に
あの映画の…あの曲を使ってくれたと聞いて
少し嬉しく感じていた…
カオル「笑実ちゃんを守ってあげるなら
野獣の方の曲だからね
ガスの曲じゃ、俺が悪い奴になっちゃうし?笑」
あの言葉の後に…
カオル先輩から
初めての「好き」をもらったから…
顔を上げてサトル先輩とツカサ先輩の顔を見ると
ツカサ先輩は眉を下げて肩を落としていたけど
その隣りでサトル先輩は目を釣り上げていた…
サトル「ちょーしに乗んなよッ!」
アキラ「歌くらい歌ってやれよ…」
サトル先輩は断固として歌わなかったけれど
ツカサ先輩は歌詞を見ながら辿々しく
一生懸命歌ってくれて…
あの日の苦い記憶が少し薄れていった…
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