〈エミ視点〉






カオル先輩達の試験が終わった日に

シュウ先輩の家でお鍋をするからカオル先輩と

一緒においでと言われ…

手を繋いで歩きながら

少し気まずさも感じていると…





カオル「笑実ちゃん、蟹好きだったよね?」





「えっ?はい…好きですけど?」





カオル「今日は蟹鍋だから好きなだけ食べてね?笑」





誰かの実家から届いたのかなと思ったけれど

蟹の名産の出身の先輩はいなかったはずと

不思議に思いながらシュウ先輩の部屋に着くと…





( ・・・・・・ )





玄関にある沢山のメンズ物の靴を見て

部屋の中にいつもの4人の先輩以外にも

誰かいるのが分かり…

その誰かも…なんとなく想像がついた…




足を止めた私にカオル先輩は

手をギュッと強く握ると腰を曲げて

顔を覗きこんできた…





カオル「大丈夫だよ?

   今日は笑実ちゃんの為のお鍋だし…

   俺の側にいれば大丈夫だから…

   ちゃんと…守ってあげるからね」





「・・・・手…離さないでくれますか?」





カオル「離さないから大丈夫だよ?笑」






そう言うと私の手を引いて

リビングの中へと入っていき

リビングの真ん中にあるテーブルには

もうお鍋の準備が出来ていて

シュウ先輩の隣りにはアキラ先輩の姿があり

カオル先輩の手をギュッと握った…





ヒョウ「チワワ、真ん中の席に座りなよ」





ビールとノンアルコールのカクテルジュースの缶を

両手に握ってキッチンから現れた

ヒョウ先輩に少し安心していると

「来たな!」とベランダからコウ先輩と…

ジン先輩も部屋に入ってきた…





( ・・・・この人は…ちょっと怖い… )





ジン先輩は…

コウ先輩やヒカル先輩達と違って

冷たい雰囲気があり少し苦手だった…





( ・・まだアキラ先輩の方がマシな気がする… )





カオル先輩に一歩近づくと

「大丈夫だよ」と私の耳元で囁き

手を引いてヒョウ先輩の言っていた

真ん中の席へと座った





アキラ先輩達がいるなら…

サトル先輩達もいるんだろうと思い

コレがなんの集まりなのかも何となく分かった…





アキラ「お前ホント…災難続きだな?笑」





「・・・・・・」





シュウ先輩達はあの件に全くふれてこなくて…

「大丈夫?」と心配されて

変に気を使われるのも嫌だけど

こんな風にサラッと笑って話すアキラ先輩は

やっぱり性格が悪いんだろうなと思う…






アキラ「そのガキに何もするな!

  カオルはそいつに手なんか出してねーんだよッ」






( ・・・・・・ )






怖いし苦手だけど…

アキラ先輩は不思議と

嫌いにはなれない先輩で…

多分…沙優ちゃんとも…





アキラ先輩の横にいるシュウ先輩を見ながら

なんとなくモヤモヤとした

気持ちになっていき…






シュウ「・・・・そんな熱い視線送られると

   俺がカオルから睨まれるんだけど?笑」






「えっ!?」






パッとカオル先輩に顔を向けると

繋いでない方の手で頬杖をつき

コッチを真顔で見ていた…






カオル「・・・・・・」





「・・・・あの…」





カオル「シュウに熱い視線送ってたの?笑」






口調も声も笑っているけど

目を細めて…あきらかに怒っている…





「ちっ…違います!

  あの…むしろ冷めた視線です!」





シュウ「おい…」






シュウ先輩は優しくて…好きだけど

沙優ちゃんの事を考えると…






アキラ「相変わらずカオルのペットだな?」





カオル「で…あいつらは?」






カオル先輩の言葉に少しだけ

心拍数が上がった事に自分でも気付き

右手をカオル先輩と繋いでいる左手に

そっと重ねた…





アキラ「・・ツカサがお前に謝りたいんだとよ…」





「・・・・・・」





アキラ「・・・・悪かったな…」






アキラ先輩は

いつもの偉そうな話し方ではなく…

一度下に下げた顔を上げて真っ直ぐと私の目を見て

「悪かった」と謝ってきた…





アキラ先輩にとってツカサ先輩は大切な友達で…

私にとっての沙優ちゃんなんだろうと思い

先輩がツカサ先輩の為に

私に謝っているんだと分かった…





ジン「サトルの件も悪かったな…」





後ろからジン先輩の声も聞こえ

カオル先輩の誕生日の事を言っているんだと分かり

「それは…しょうがないので…」と答えると…





コウ「・・・・ん??」





「・・・ですから…あの…」





隣りに座っているカオル先輩の顔が見れずに

繋いでいる手に目線を落として

「セクシー…じゃないから…」と呟いた…









   

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