ツカサ

〈コウ視点〉






1階のカフェテリアでパンを嚙りながら

3限目の試験に備えて先輩から貰った

過去問を眺めているとヒョウが

手元にある自分の焼きそばパンをジッと見たまま

変な顔をしている事に気付き

「どうした?」と声をかけた





ヒョウ「・・・・なんか…味変わった?」





コウ「売店のだしな?

  毎日同じ味ってわけにはいかないだろ?」





ヒョウ「・・・・そうかな…」





ヒョウはイマイチ納得していない顔で

もう一口パンを嚙りながらまた顔を傾げている…






ヒョウ「はぁ…チワワの納豆パンは美味しかったのに

   なんで焼きそばパンが不味いわけ?」






ヒョウの一言にシュウが吹き出して笑い出し

「あのパンな!」と見ていた過去問を

バシバシと叩いている…






シュウ「最初差し出された時は

  マジかよって思ったけど食ったら

  意外と美味いからビックリしたよな?笑」






昨日はあのままカオルの部屋に泊まり

朝ごはんを準備してくれた笑実ちゃんに

最初こそはよく出来た子だなと感動したが

出されたパンを見てカオル以外は皆んな固まり

その食パンを凝視した…






ヒカル「コレも…あの本?」





「いえ、コレは私が大好きで

  小さい時からよく食べていたんです」






食パンの上には納豆が乗っていて

どう見たって相性は悪そうに見えた…





出された食パンを手に取って普通に

食べているカオルに驚き

可愛がるにも程があるだろうと思っていると

ヒョウも恐る恐る手に取り口に運んだ…






ヒョウ「・・・ん!?美味しいよ?」





ヒカル「おっ…美味しい??」





シュウ「お世辞の言えないヒョウが言うなら

   間違いなく美味いんだろうな…」






シュウやヒカルの反応を見て

唇を尖らせている笑実ちゃんはムスッとして

「美味しいですもん」と

カオルの後ろに回って小さく文句を言っている






俺もゴクリと唾を飲み込みながら

出されたパンを食べてみると…





( ・・・意外と美味いじゃん… )





初めて食べる味だったが

思っていたよりも美味しく

あっという間に完食していた…





朝のパンを思い出し皆んなで笑っていると

奥からガヤガヤと声がして顔を向けると

アキラ達が歩いてきた





カオルに目を向けると目を細めて

アキラの斜め後ろにいる

ツカサを見ている事が分かり

「あと30分もしないで試験だからな」と

カオルの肩に手を置いて

騒ぎを起こすなよと一声かけておいた…





アキラ「試験はどうだ?」





シュウ「まぁまぁってとこか?笑」





シュウがさりげなくカオルの前に立って

アキラの問いに答えると

アキラはカオルの方に目を向け

「謝りたいんだとさ」と後ろにいる

ツカサをチラッと見てそう言った






カオル「・・・・俺に?」






アキラ「お前もだろうが…お前の彼女の方にだな」






カオル「・・・・会わせる気はない」






アキラ「会わせないつっても学校は隣り同士だし

   お前のチワワとツカサ達は

   住んでる方面も一緒だから

   どうせコンビニやその辺で鉢合わせるぞ?」





カオル「・・・・・・」





カオルが笑実ちゃんを自分の部屋に

泊める理由の一つはコレだろうなと思った…

沙優ちゃん達はシュウやカオル達と同じ学校を出て

南側の方面に住んでいるが

笑実ちゃんのアパートと間反対側の北側方面に

進んだ場所にあり…

ツカサやサトル達と同じ方面だった…





コウ「はぁ…次何かしたら

  病院送りにするらしいからな?」





黙っているカオルの代わりに

以前荷物を届けに行った日に玄関で

カオルが言っていたセリフを伝えてやると

ツカサを少し顔を歪ませながら

「しねーよ…」と呟いた…





ヒョウ「顔の腫れも引いて良かったね?」





サトル「完全に引いたのは数日まえだよ…」




 

ヒョウ「次またコンビニで虐めてたりしたら

   チワワの飼い主代理として殴るからね?笑」





ジン「飼い主代理ってなんだよ…」






カオルはジッとツカサだけを見続けていて

「スマホ貸して」と言ってツカサのスマホを手にすると

「変な写真や動画撮ってないよね」と言いながら

スマホを操作しだした






ツカサ「撮ってねーし…

   だいぶ酔ってて記憶もあんまねーよ…」






嘘だと皆んな気付いているが

コレはツカサなりの笑実ちゃんへの配慮なんだと

分かっているから皆んな何も言わないでいた…





( ・・・記憶にないの方がいいだろう… )





未遂だったにしろ…笑実ちゃんの服は

ボタンが取れる位に乱されていたから

ただ押し倒されただけではないだろうし

相手の記憶からは消してほしいだろうからな…






カオル「次の試験中お前の姿は見たくないから  

   試験終了時間まで席からは一歩も動くなよ?」






そう言ってスマホをツカサに渡すと

椅子に座り一言も話す事なく

過去問の用紙を眺めていて

アキラ達は小さくタメ息を吐きながら

「またな」と離れて行った





カオルの怒りは

まだまだ収まりそうにないなと思い

俺も過去問を眺めていたが…





この時カオルがツカサのスマホに

ある細工をしていたなんて

誰も気付いてなく…

ツカサは次の試験中に大恥をかいて

教授からは再試を言い渡される事になった…










   











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