〈コウ視点〉







カオルが部屋のドアを開けると

部屋の奥からパタパタと足音が聞こえ

「お帰りなさい」と顔を出す笑実ちゃんを見て

少し変わったなと思っていると…






ヒョウ「チワワ、サバ味噌何個ある?」





「えっ??サバ味噌ですか?」





ヒカル「普通にご飯の匂いすんじゃん!」






カオルよりも我先にと部屋に上がっていく

ヒョウとヒカルは笑実ちゃんの肩を押して

キッチンへと入って行き

「おかずは?」「味噌汁は?」と

騒いでいて呆れながらリビングに入って行くと

ヒカルの言う通り夕飯時の実家のように

少し懐かしさを感じる家庭的な匂いがしていた…





シュウ「へー…普通に美味そうじゃん!」





キッチンに行き鍋の中を覗きながら

シュウもヒカル達と混ざって

「腹減った」と言い出し

カオルは笑実ちゃんを呼んで

「ごめんね」と謝っているようだ






「でも…あの…食器が…」





カオル「棚の中に海で使った

   紙皿や割り箸の残りがあるから大丈夫だよ」






カオルが上の棚から割り箸や紙皿を取り出すと

ヒョウが「それいつの?」と文句を言っていたが

ヒカル達は「水洗いすれば大丈夫だろ」と

ケロっとしていて笑実ちゃんに

早く食べさせてと騒いでいる…






ヒカル「てか、ご飯何合?足りる??」





「あっ…焼きおにぎりでいいならありますけど…」





シュウ「焼きおにぎり?」





「試験勉強の…その…」





ヒカル「あぁー!カオルの夜食用に作ってたのか?」






何が恥ずかしいのかエプロンをギュッと掴んで

モジモジとしている笑実ちゃんに

相変わらずカオルに従順なチワワだなと思って見ていると

カオルが笑実ちゃんの頭を撫でて何かを言ったようで

一気に顔を赤くしている…





笑実ちゃんが作っていた夕食は

サバ味噌とお味噌汁とポテトサラダで

6人分に分けると流石に少なくなるからと

慌てて卵焼きを作っているが…





ヒカル「ダシ巻きね!絶対にダシ巻き!!」





ヒョウ「いや!卵焼きは砂糖たっぷりの半熟だよ!」





シュウ「俺は普通の卵焼きがいい…

   マヨネーズつけてくいてーし」






「そんなに卵ありませんよ!」





キッチンから聞こえてくる声に

呆れた笑いを溢しながら卵焼きを焼いている

笑実ちゃんに目を向けヤッパリ少し変わったなと思った





少しウェーブのかかった髪をバレッタで止めて

エプロンをつけている姿は…

なんて言うか…普通に可愛く見える…





まだまだ素朴感はあるが

初めて会った春や夏頃に比べると

何処となく垢抜けた様に見え

カオルにチラッと目線を移し

ちゃんと大事にされてるみたいだなと

自分でも気付かないうちに小さく笑っていた…





シュウ「梅干し?」





「はい、鯖の臭みをとる為に入れた方がいいって」





ヒョウ「あの料理本に書いてあった?」





「はい…」





ヒョウ「やっぱりね!!

  あの古風な料理本を見て作るサバ味噌なら

  絶対に美味しいと思ったんだよ!」





「えっ?古風??」






笑実ちゃんの作ったサバ味噌は

ヒョウの言う通り市販の物とも定食屋の物とも違い

まるでお婆さんの作ったサバ味噌の様に

味も染みてて美味しかった






ヒカル「ポテトサラダも俺の好きな感じだよ

   あんまり固まりあると嫌なんだよね?

   ちゃんとすり潰しててエライ、エライ!」





シュウ「卵焼きは今度は普通のやつにしてくれよ?」






カオル「今度とかはないからね?笑」






笑実ちゃんに向かってそう言いながら

だし巻き卵を口に頬張るカオルに

ヒカル達は「たまにはいいじゃん」と怒っていたが

成人男子5人分の飯なんか作るのも大変だろうと

また呆れた笑顔で見ていると

ヒカルが「あっ!」と言いながら

荷物と一緒に床に置いたままのコンビニ袋を手に取り






ヒカル「コレは今日の食事のお礼だよ!

   売り場にある分全部買ってきてやったかな?笑」






あのイチゴ味の豆乳ジュースが7〜8個入った

ビニール袋を差し出すと

笑実ちゃんは少し顔を赤くして

「あっ…ありがとうございます…」と

モジモジと言いながら受け取り…







ヒカル「体操だけじゃなくて

   豆乳も飲まなきゃダメだぞ!笑」






「・・・・ッ!?」






ヒカルの言葉にヒョウが本屋で見た事を

俺たちに話した事が分かった笑実ちゃんは

顔を真っ赤にして「ヒョウ先輩!」と怒っていた…








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