お赤飯

〈エミ視点〉








「沙優ちゃん着替えと…色々とありがとう」





沙優ちゃんから借りた洋服とかを返しに

沙優ちゃんのアパートへと来ていた






サユ「ううん…

  あたしがトイレに籠ったりなんかしていたから

  あんな事になっちゃったし…ごめんね…」






「違うよ!!

 沙優ちゃんが気付いてくれなかったら…」






あの時、沙優ちゃんが気付いてくれなかったらと

思うと今だに足が震えるけど

この数日、カオル先輩の腕の中で眠りにつき

あの日の記憶が少しずつ

薄れていっているのも事実だった…





サユ「・・・・一応ね…コレも買っておいた」





少し笑いながら沙優ちゃんが出してきたのは

コンビニで売っているお赤飯のおにぎりで

どういう意味で差し出しているのかも分かった…





そして…お赤飯を食べるのは…

今日で3日目だった…





コウ先輩はあの後直ぐに戻って来て

沙優ちゃんと同じ様に

コンビニのお赤飯のおにぎりを買って来て

「付き合い出した祝いだ!」と

私に差し出してきたけど

お赤飯のおにぎりは私にだけで

カオル先輩には普通のおにぎりだった…





( ・・・・お祝いなら二人共お赤飯なんじゃ… )





不思議に思いながらコウ先輩の買ってきた

おにぎりを食べていると

カオル先輩はずっと笑いながら

「美味しい?」と聞いてきていて

更に不思議に感じていた…




次の日までカオル先輩達は学校があるからと

朝には私をアパートに送り届けてくれて…





カオル「15時に迎えに来るから荷造りしててね」





「荷造りですか?」





カオル「試験終わるまで

   笑実ちゃんは俺の家に泊まるからね」





「・・・・えっ?」





カオル先輩の言葉には驚いたけれど

夜にこの部屋で一人で眠るのも少し不安に感じ

先輩の言う通りに洋服の着替えや化粧品をバックに

詰め込みながらこの前買った料理本も手に取って

「料理…するよね?」と呟いてから

バックの中へと一緒に入れておいた





カオル先輩は約束通りに15時過ぎには

迎えに来てくれてその右手には

スーパーの袋がさげられていた





カオル「コレはね…ヒョウ達からだよ?笑」





「ヒョン先輩達??」





また豆乳ジュースかなと思いビニール袋の中を

覗くと中にはお赤飯のパックが入っていた…





「・・・・お祝い…ですか?」





カオル先輩の彼女になれたお祝いかなと思って

先輩に顔を向けると口に手を当てて笑っていて

なんとなく違う気がした…




他に何のお祝いがあるのかなと

不思議に思っていると…





( ・・・・・・ )





あの日…扉の向こうでドアを叩きながら

アキラ先輩が叫んでいた事にツカサ先輩は驚いて

一瞬手を止めたけど「な訳ねーだろ」と言って

止めていた手を動かしだした事を思いだした…





( ・・・・沙優ちゃんのナプキンも… )





きっと…先輩達は皆んな…

私がまだ…カオル先輩に抱かれたりしてなくて…

処女のままだったと知ったんだろう…





( ・・そして…そうじゃなくなった事も… )





お赤飯のパックを眺めながら

どんな顔をしていいのか分からないでいると

「おめでとう…笑実ちゃん」と

揶揄う先輩の笑い声が聞こえ

「相変わらず意地悪で口の軽い先輩達です…」

と小さくボヤくと更に笑っていた…






「・・・・ありがとう…」





サユ「えっとね…

  聞きたい事沢山なんだけど?笑」





「・・・・・・」





その日は全く試験勉強はせずに

ひたすら沙優ちゃんの質問攻めにあていた…















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