〈コウ視点〉








沙優ちゃんは寒いからと言って

俺を部屋の中で待つように言い

自分のクローゼットを開けて紙袋に色々とつめていた





( ・・・・やっぱり服か… )






サユ「・・・・あっ!」





急に沙優ちゃんが声をあげて

俺をチラッと見て「目を閉じててください」

と言い出したから下着でも入れるのかと思い

言われた通りに目を閉じると

沙優ちゃんは部屋から出て行き廊下側にある

トイレか脱衣室に歩いて行く音が聞こえ

(ん?)と思い目を開けると

沙優ちゃんが生理用品を片手に戻って来た姿が見え

お互気まずい雰囲気に固まった…





コウ「・・・・悪い…」





サユ「・・・・言わないでくださいね…」





一瞬、笑実ちゃんが生理中なのかと思ったが

ナプキンは一枚だけで

何となく違うと分かりアキラの言葉を思い出し

何のためのナプキンなのかを理解して

目線をテレビの方へと向けた…





( ・・・ツカサの事があったばっかりだし… )





流石に今日は手を出していないだろうと思ったが

万が一そうなっていたら…





時計にチラッと目をやり

荷物を届けに行って万が一中だった場合

俺も前のツカサの様に睨まれる気がして

スマホを取り出してカオルにLINEを一通送り

沙優ちゃんに「もう少しいてもいいか?」と

お願いした…




沙優ちゃんも「あー…ですね?笑」と

意味を理解したようで

笑いながら「新しいコーヒー煎れますね」と

キッチンへと行き温かいコーヒーと一緒に

菓子パンを持ってきてくれた






サユ「どっちが笑実ちゃんチョイスか分かりますか?笑」




コウ「どー見ても黒糖蒸しパンだろ?笑」




サユ「当たりです!笑」






テーブルの上にある黒糖蒸しパンとピザパンを見て

ばーちゃんと孫が買った様な組み合わせだなと

笑いながら笑実ちゃんチョイスの蒸しパンを開けて

食べてみると田舎を思い出す様な素朴な味で…





ヒョウ「もう19歳が選ぶ料理本じゃないんだから!」

  




ヒョウの言っていた料理本がどんな物なのかが

なんとなく分かる気がした…





沙優ちゃんの部屋で待たせてもらっていると

カオルから返事が返ってきたのは10時前で

あのまま押しかけなくて良かったと思い

カオルのマンションへと向かった





扉を開けて顔を出したカオルは風呂上がりの様で

濡れた髪にタオルがかかっていて

この男はと思いながら沙優ちゃんから預かった

紙袋を差し出すと紙袋を開けだし

「おいッ!」と声をかけると

カオルは中身を見て「あぁ…笑」と小さく呟き

「沙優ちゃんにお礼言わなきゃね」と

機嫌良く笑っている…






コウ「たく…それで……

  笑実ちゃんは…大丈夫そうか?」





カオル「今はゆっくり眠ってるけど…

   とりあえずしばらくは俺の部屋に泊めるよ」





コウ「ここにか?」





カオル「試験もあるしね」





部屋に人をあげるのをあまり好まないカオルが

笑実ちゃんをしばらく泊めると聞いて

だいぶ驚いていると奥から笑実ちゃんの姿が見え

顔を向けて「あぁ…」と呟いた…




カオルは笑実ちゃんを見ると

直ぐに俺の目を隠す様に手で覆ってきて

部屋に入る様に言っているが…





( ・・・・帰せないんじゃなくて帰したくないね… )





間違いなく

手を出したであろうカオルが

笑実ちゃんを帰したくないんだと分かり

呆れた様にフッと笑うと

俺の目元にある手をどけて

少し不機嫌顔のカオルが視界に入り

「赤飯でも炊くか?」とふざけて言うと

「そっちは?」と問いかけてきた






コウ「酷い顔で…

  ヒョウや俺の殴る場所が残ってねーよ?笑」





カオル「次なにかすれば病院送りにするよ?笑」





コウ「はぁ…手だすバカはいねーだろ…

   お前のペット……彼女なんだろ?」






そう言うとカオルは穏やかな顔をして笑っているから

肯定の意味なんだと分かり





コウ「ヒョウ達も心配してるし

   笑実ちゃんが落ち着いたら紹介しろよ?笑」





そう言ってドアノブに手を当てると

「そうだね」と小さく相槌をうつ声が聞こえ

「またな」と部屋から出て行った









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る