第二章

彼女

〈エミ視点〉








「・・・んッ・・」





いつもの肌触りと違う感触に違和感を感じながら

ゆっくりと目を開けると青いサテン素材のカバーが

視界に入ってきてここがどこなのか思い出してきた…





( ・・・・ツッ!? )





ガバッと体を起こすと下腹部に鈍い痛みを感じて

その理由も分かりお腹に手を当てながら

身体中が熱くなっていくのが分かった




妙に脚にあたるシーツの感触が生々しいと

思い毛布の中を覗くと自分の生脚が見えて

パッと毛布を抱きしめて

顔をキョロキョロと動かしながら

カオル先輩から借りたズボンを探すけれど

見当たらない…





( ・・・・先輩は… )





カオル先輩のベッドはシュウ先輩の部屋に

置いてあるベッドと同じ位の大きさで

この広いベッドに一緒に寝ていたはずの

先輩の姿が見えずリビングかなと思い

毛布から脚を出すとヒヤッと肌寒さを感じた






カオル先輩の寝室はリビングので奥にあり

そっと扉を開けてリビングを覗くと

テレビの音が聞こえ

昨日一緒にアニメを見ながら座っていた

ソファーに目を向けたけれど…





「・・・・いない… 」





リビングに足を進めキッチンを見ても

カオル先輩の姿はなくたたずんでいると

廊下の方からカタッと聞こえた気がして

廊下側の扉を引きながら「先輩?」と

小さく問いかけて顔を出すと…





「・・・・ぁっ…」





玄関にカオル先輩の後ろ姿を見て

ホッとしながら顔だけでなく

脚も扉の向こうに一歩踏み出すと

カオル先輩の背中からコウ先輩がヒョコっと顔をだした





コウ「・・・・あぁ… 」





コウ先輩の声と顔の向きにカオル先輩も

コッチに振り向き、数時間前の事を思い出すと

恥ずかしくなってきて長い袖口を口元に当てると

先輩がコウ先輩の目元にバシっと手を当てて

「部屋に入って」と私に向かって言うから

「え?」と戸惑っていると「早く」と

更に強く言われ慌ててリビングに戻った





泊まった事を知られたくなかったのかなと思いながら

扉から数歩離れた場所に立っていると

下半身にも下腹部とは違った違和感がある事に気づき

「どうしよう…」と呟いた…





( ・・・・ナプキンなんてないよね… )





生理でない出血が下着を濡らしている事に気づき

ズボンも履いてないからソファーに座る事も出来ず

どうしようかと考えているとガチャっと扉が開き

沙優ちゃんの家に置いたままだった荷物と

紙袋を手にしたカオル先輩が入ってきた





カオル「笑実ちゃんの荷物と…

   コッチは沙優ちゃんからみたいだよ?」





「えっ…?ここにいるってどうして…」





カオル「ふふ…皆んな知ってるみたいだよ?笑」





「・・・・みっ…皆んな…」





なんだか恥ずかしくなってきて

受け取った荷物をチラッと見てみると

沙優ちゃんからの紙袋の中には

沙優ちゃんの洋服やタイツと一緒に…





( ・・・・下着と…ナプキンもある… )





「・・・・・・」




チラッとカオル先輩に目線を向けると

ニコニコと笑っていて「着替えてくる?」と 

問いかけてきたから中身を見たんだと分かった…





( ・・・皆んな知ってるって…つまり… )





そういう事なんだと分かり

また恥ずかしくなって顔を俯かせていると

カオル先輩が近づいて来て顎をクイッと上げられた





カオル「そう…皆んな知ってるから

   今後、笑実ちゃんに何かする奴はいないよ?」





「・・・・・・」





カオル「俺の彼女に

  何かしようなんて思わないだろうからね?笑」





昨日…あの部屋でカオル先輩がツカサ先輩を

殴っている音は私の耳にも届いていて…

一発や二発なんかじゃない事も…気づいていた…





カオル「守ってあげるよ…俺の可愛い彼女だからね」




「・・・・私も…守ります…」




カオル「笑実ちゃんが?笑」





カオル先輩は頬を撫でながら

「ふふ…」と私の大好きな

あの優しい笑顔で見つめていて…

この笑顔を守りたいと思った…





カオル「じゃー手始めに

  煩く質問してくるヒョウから守ってよ?笑」





「・・・・コウ先輩なら…まだ…」





ヒョウ先輩やヒカル先輩が

私の言うことを聞くわけがなく…

1番話が通じそうなコウ先輩の名前を出すと

声を上げて笑い出すカオル先輩の笑顔を見て

やっぱり大好きだなと思った…





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