怖い先輩

〈エミ視点〉










「・・・・えっ??」





お金を降ろしにATMに行き

画面に表記されている払戻後残高を見て固まった…

降ろした一万円を財布に入れてから

通帳を機械から取り出して少し離れた場所で

印字された内容をみるとお店からと

店長の名前からと2回振り込まれていた





( バイト代も多いけど… )





店長の個人名で振り込まれている金額は30万円で

それが何を意味しているのかも分かり

沙優ちゃんの言っていた「色々」の意味も理解した…





「・・・・でもコレは…」





内容が内容なお金なだけに

喜べるわけもなく何となくグルグルと変な気分のまま

食材の買い物にスーパーへと寄った




寒いからシチューでも作ろうかと野菜を見ていると

奥の海産物コーナーに沙優ちゃんの後ろ姿を見つけ

駆け寄って行くと沙優ちゃんの隣りにはアキラ先輩がいて

「えっ?」と足を止めるとアキラ先輩がコッチに気づいた




アキラ「今度はカオルの方か」




「あっ…あの時はありがとうございました…」




アキラ「あー!そういやお前!」





アキラ先輩は体ごと私の方を向くと「付き合え」と言って

私と沙優ちゃんの買い物籠をバシッと取り上げて

スタスタと入り口に向かって歩いて行き

近くにいたスタッフのオバさんに

「すみません、財布忘れました」と言って勝手に

商品の入った籠を返してしまった




先輩は腕時計をチラッと見ると

「行くぞ」と言って歩きだし少し離れた場所にある

焼肉屋さんへと入って行き

沙優ちゃんと戸惑いながら後に続いて入って行った





アキラ「さてと…俺は飲むけどお前らは?」





先輩の言葉に顔を横にフリ

「烏龍茶で…」と言うとメニュー表を開いて

「何にすっかな」と言いながらお茶とタレのセットを

持ってきた店員さんに注文をしだした





何故連れて来られたかも分からないけど

アキラ先輩にはもう一つ疑問があった事を思い出し

「あの…」と質問をした





「店長の事…どうして分かったんですか?」






沙優ちゃんから聞いた話じゃ

たまたま会って運転を頼んだアキラ先輩が

店長に何かされそうになっているんじゃないかと

気づいてカオル先輩に電話をしたみたいで…

何故分かったのか不思議だった…






アキラ「前に店に行った時あのオッさん変だったしな…」





「・・・・・・」





アキラ「いくら客が俺らだけだったとしても

  店内で意味深に名前を呼び捨てにして呼んだり

  オーダー中もずっとコッチの様子を伺ってたし…

  フッ…付き纏われてるのか?なんて普通聞かねーだろ」




「・・・・聞こえていたんですか…」





アキラ「まるでヤキモチ妬く彼氏みてーな態度に

  気持ち悪りぃなって思ってたからな」





先輩の言葉に、本当に気持ち悪かったと改めて思い

自分の足の上にある手をギュッと握りしめた…





アキラ「まっ!つぅー訳で、ご馳走になるわ」





「・・・・へ?」





アキラ「給料と一緒に慰謝料入っただろ?

  アレ俺のおかげなんだから飯くらい奢れ」

 




「・・・・・・」





アキラ先輩は特上と名のつく物ばかり注文し

届いた伝票も目の飛び出る価格で

降ろした一万円では足りず「降ろしてきます」と言って

コンビニに走って行くとツカサ先輩達に会った





ツカサ「あっ!カオルの!」




サトル「ん?・・・あぁ…」




「・・・・・・」





また嫌な二人組だなと思い

頭を軽く下げてからお金を降ろして立ち去ろうとすると

「聞いたぞ」と言われビクッとした…





この先輩二人が襲われかけたなんて話を知ったら

あの変なバイトみたいに会う度に言われるんじゃないかと

思いヒヤッとした…







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