変わらない

〈エミ視点〉








「バイト辞めたの?」




サユ「うん…笑実ちゃんが寝ちゃってた間に

  先輩達が…店長と色々話てね…」

  



「色々?」




サユ「・・・・色々…」





次の日一限から講義があった私たちは朝6時過ぎには

自分達のアパートへと帰りなんとか講義に出席していて

後ろの方の席で昨日の事を話していたけど…




沙優ちゃんの濁した色々が決して

綺麗な話し合いじゃなかった事は何となく想像がついた…





サユ「むしろ警察に突き出されないだけマシだよ…」





昨日の夜に警察沙汰にはしたくないと

カオル先輩に伝えたら「分かってる」と言って

頭を撫でながら「全部分かってるから大丈夫だよ」と言われた





学校の皆んなにも…

家族にも知られたくなかったから…

何だか知られてしまったら

自分が可哀想な子と言うような目で

見られる気がして嫌だった…





「二度と会いたくない…」





昨日の事を思い出すとまだ足が少し震えてきて怖く感じ

自分の手首を顔の前に持ってきて匂いを嗅いだ…





サユ「カオル先輩…笑実ちゃんの事ずっと

  抱っこしたままだったんだよ、多分タクシーの中も!笑」




「タクシー??」




サユ「うん、先に連れて帰るって言ってね」




「・・・・」



 


サユ「カオル先輩と上手くいきそう?笑」





ニヤニヤと笑いながら私に少し近づいて

ワザとらしく鼻をクンクンとさせ「あっいい匂い」と言う

沙優ちゃんに恥ずかしくて顔を俯かせた…




アパートに帰りつき見慣れたはずの

誰もいない自分の部屋が何だか寂しく感じ

カオル先輩からもらった香水を

2ヵ月ぶりに部屋の中に香らせてみると

安心している自分がいて…




( 初めて自分の身体につけたけど… )




歩いていても何をしてても…

カオル先輩が側にいるような気がして

落ち着く様な、落ち着かない様な…

不思議な感じがする…




つい昨日までは先輩の事を

「嫌い」だと思っていたはずなのに

あのトイレのドアが開いた瞬間

春に出会った時からの先輩の姿が思い出された…






「このままそこの寝室で俺に腕枕されながら寝るか

  外にでて真っ暗道を一人で歩いて帰って…

  誰かも分からない奴に襲われるの…どっちがいい?笑」





「泣いてるかと思ったけど…意外だね?笑」





「どんな店か分かってんの?」






あんなに酷い言葉を言われても…

私の心は…きっと先輩に恋をしたままなんだ…



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